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【人生の処方箋】60代からも心豊かに生きる極意とは?「人に喜ばれることが、私の喜び。熊本や社会のお役に立ちたい」西川通子さんインタビュー

  • 2026.8.10

60 代をどう生きるかで、これからの人生の輝きは変わります。

新連載「人生の処方箋」第1 回は、ドモホルンリンクルを多くのファンを持つ日本有数のブランドに育て上げた、西川グループの西川通子さんが登場。
数々の経験を重ねた彼女が語る、心豊かに生きる極意とは。編集長・神下敬子がお伺いしました。

無我夢中で仕事にまい進してきた人生

私たちにとって身近な存在であるドモホルンリンクルを製造・販売する再春館製薬所は、お客様をはじめ、社員や取引先に至るまで、いつも温かいまごころを届けてくれる会社です。折にふれ、編集部に送ってくださる季節のお便りや、スタッフ総出で作っているというお歳暮のひとつひとつにも、深いやさしさが宿っていると感じます。

その再春館製薬所の礎を築いたのが、西川通子さんです。創業期から60歳で社長職を退くまで、「感謝する」気持ちを会社のフィロソフィー(企業理念)として確立したという、これまでの歩みについて伺いました。

「私が結婚したのは20歳のとき。主人には先見の明があり、『これからは警備が必要になる時代だ』と、今年創業55周年を迎える警備会社を立ち上げることになったんです。

とはいえ、必要な資金もないし、融資の手当てもない。どうしたものかと途方に暮れていると、『あちらから10万、こちらから20万』と、お金を融通してくださる方が現れたのです。もちろん最初から上手くいくわけはなく、まさに自転車操業。一件一件地道に契約先を増やし、初の黒字化を達成したとき、改めて皆様への感謝を強く実感しました。

これからは等身大の私にできることで、お客様、社員とそのご家族、協力会社、そして地域に恩返しをしていきたい。『社会の役に立つ仕事をする』地球規模と言うと大げさですが、その思いが私の経営の原点です」

運命の会社との出会いと失敗

そして36歳のとき、新たにご主人が当時経営難に陥っていた再春館製薬所の事業継承を提案します。古くから生薬を使った医薬品の製造販売を行い、年齢肌への打ち手として「コラーゲン」を日本で初めて配合した「ドモホルンリンクル」を生み出した会社でした。

「その話を聞いたとき、ぜひやってみたいと直感しました。商品のよさはもちろんのこと、熊本から全国のお客様へ直接商品をお届けできる通信販売という形態に、大きな可能性を感じたからです。しかし、お恥ずかしいことに、当初私たちは大きな過ちを犯してしまいました。電話での強引な勧誘を行っていたことで、たくさんのお客様から猛烈なお叱りを受けたのです。『いい商品を作っているのに、なぜそんな売り方をするのか』と。

深く反省し、私たちは売上至上主義からお客様第一主義へと生まれ変わるべく、組織のあり方を根底から改めました。こちらから『ありがとうございます』と言うのは当然のこと。そうではなく、お客様のほうから『ありがとう』と言っていただける会社を目指さなければと、思いを新たにしたのです。それ以来、目に見えない通信販売だからこそ、お客様との一期一会のコミュニケーションをなによりも大切に、商品の製造・販売を続けています」

1974年に日本で初めてコラーゲンを配合した基礎化粧品「ドモホルンリンクル5」が誕生。発売当時のクラシカルなパッケージ。

乳白色のマットな質感が美しいローションのボトルには、美容成分だけでなく思いやりもたっぷり。握りやすく、ふたを開けやすい仕様が嬉しい。「お客様の立場に立つだけでは足りない。なりきらなければわからない」という、西川さんの理念が反映されています。

時代に先駆けて紡ぐ思いやりの循環の形

環境への配慮や社会貢献、そして充実した福利厚生。再春館製薬所が、地元・熊本で憧れられる企業となったのには理由があります。

「私についてきてくれた社員たちには、誇りを持って健やかに働いてもらいたい。私には、創業時から彼らとその家族の人生を守る責任があると考えています。環境保護についても、まだ『サステナブル』という言葉が一般的でなかった時代から、『もったいない精神』で、棄てられていた今治タオルの残糸を再び紡ぎ、商品の緩衝材(梱包材)として使用してきました(※)。この布なら、お届けした後もハンドタオルとして、次は台布巾として再利用し、最後には雑巾として長く使っていただけるでしょう?

また、「自然と共生する本社」として、工場で使う電力も含めて自分たちでまかなおうと、再春館ヒルトップの広大な敷地に太陽光パネルを設置しました。社員食堂では熊本産の野菜をふんだんに使った手作りの食事が楽しめ、敷地内の保育園には病児保育室も完備し、体調の優れないお子さんも預かれる体制を整えています。お子さんが生まれて社員のライフステージが変わっても、せっかく私どもの会社に入社してくださったのだから、引き続き活躍してもらいたいので。

さらに、私の長女には障がいがあるのですが、そうした方々も安心して働ける環境を整備しました。私たちは彼らを『仲間たち』と呼び、彼らの得意を生かしつつ、なくてはならない戦力として活躍してもらっています」

(※)今年5月より環境負荷の少ない外装変更に伴い、現在は廃止。

かのビアトリクス・ポターが保全活動に尽力したイギリスの自然豊かな湖水地方にある「ヒルトップ」を訪れたときに、こんな環境のなかに会社を作りたいと思ったという西川さん。美しい風景が広がる本社は、「再春館ヒルトップ」と名づけられています。

広大な敷地を誇る「再春館ヒルトップ」には、本社や工場が使用するすべての電力をまかなう太陽光パネルが美しく広がります。

敷地内にある、社員のために作られた「わんぱく保育園」

この日の社員食堂のメニューは大人気のミラノステーキ

お客様と熊本に恩返ししていきたい

西川さんは、熊本地震の復興支援や、建築家の安藤忠雄さんが熊本県に寄贈した「こども本の森 熊本」への寄付など、数多くの社会貢献事業にも尽力されています。

「私も若き日、多くの人に助けられてここまで来ました。恩返しができる立場になったいま、熊本や社会のお役に立ちたくて。私は『できる者がやればいい』と思っています。思いやりややさしさは、循環させなくては意味がありません。子どもたちにはすでに会社を譲りましたから、『これからは自分たちの力でしっかり歩んでね』と伝えてあります。私は私で残りの人生をかけて、できる限りの恩返しをしていきたい。人が喜ぶ姿を見るのが、私にとってなによりの喜びなのです」

社長を退任してからはご褒美みたいな毎日

60歳でお子様たちに経営をバトンタッチし、社長職を退かれてからはどのように日々を過ごされているのでしょう。

「現役時代は忙しくて、5人の子どもたちをきちんと育てられたとは言えません。特に、まだ末の息子が高校生のときに、心の支えであった主人を病で亡くし、私は必死に働く背中を見せることしかできませんでした。しかし、おかげさまで子どもたちも真っ直ぐに育ち、会社を引き継ぐことが叶いました。いまは大きな責任からも、毎日出社することからも解放されて(笑)、本当に楽しくて、まるで人生のご褒美のような毎日を送っています。」

人生の先輩として伝えたい「60代からの生き方」

「60代って、まだまだ元気でしょう?60歳を過ぎたら、すべてにおいてやり残したことがないよう、面白いと思ったことにはなんでもチャレンジするといいと思います。私は一線を退いてから、興味のあった世界遺産をこの目で見て歩こうと決め、エジプトや南米など世界中を旅しました。70代になってからは歌舞伎や落語などの古典芸能に夢中になり、毎月のように足を運んでいました。そしていま、いちばんの生きがいは『再春館製薬所バドミントン部』の応援。試合会場に駆けつけたりして、まさに〝推し活〟のように心から楽しんでいるんですよ」

インタビューを行ったのは本社や工場がある「再春館ヒルトップ」。爽やかな緑が広がり、春の桜、初夏のツツジと、四季折々の植物が美しく咲き誇ります。

穏やかな環境のなかで、満面の笑みを浮かべながら、人生で大切なのは「常に感謝の気持ちを持つこと」「人に喜ばれる存在であること」と語る西川さん。それらは一見、ありふれた言葉のようでいて、実は人生を豊かにする究極の「処方箋」なのかもしれません。

困難に直面しても視点を変えること、そして自分が得た恵みを社会へと循環させていくこと。それは、自分ひとりの幸せを遥かに凌駕する、至高の幸福感を味わわせてくれるものなのだと、西川さんの生き生きとした表情が教えてくれました。

西川さんが孫のように可愛いと言う「くまもと再春館製薬所バドミントンチーム」のエース、山口 茜選手のパネルが本社のエントランスでお出迎え。

お話を伺った人

西川通子さん
西川グループ会長
(前・再春館製薬所 代表取締役)
にしかわみちこ/1943年熊本県生まれ。28歳で九州警備保障を創業し、1982年に再建を任された再春館製薬所の社長に就任。「ドモホルンリンクル」を通信販売で全国展開し、7年で売上100億円を達成。現在は再春館製薬所、九州警備保障、キューネット、桜十字病院などを傘下に持つ西川グループ会長を務める。

撮影/下村一喜

※素敵なあの人2026年9月号「人生の処方箋 【第1回】西川通子さん」より
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この記事を書いた人 素敵なあの人編集部

「年を重ねて似合うもの 60代からの大人の装い」をテーマに、ファッション情報のほか、美容、健康、旅行、グルメなど60代女性に役立つ情報をお届けします!

この記事を書いた人  素敵なあの人  編集長・神下敬子

仕事70%、推し活10%、グルメ10%、猫5%、サウナ5%で毎日を送る『素敵なあの人』編集長。自分もいつか、読者の皆さまのように素敵な60代になれるよう(なれるかな?)修行中。自宅のある湘南と会社のある半蔵門を1時間半かけて通勤。

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