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【60代の趣味活】まるで朗読の駅伝!それぞれが次の人に手渡すようにみんなで言葉や文脈をつないでいく『分かち読み』の魅力―松浦このみさんインタビュー〈後編〉

  • 2026.1.14

朗読は「声に出して読む」ことで、文学作品の世界が深く広くなり、いままで知らなかったような自分の声と出合うきっかけにもなると『朗読のレッスン』の著者、松浦このみさんは言います。

元アナウンサーである松浦さん自身が、どのようにして朗読に興味を抱き、惹かれていったのか。その軌跡を辿りながら、物語を読み解き、さらに自分の声で表現する魅力をご案内します。 

ひとつの作品を一緒に声に出して読むことで起きる奇跡

発表会では、単独で朗読する作品のほか、グループレッスンのメンバーでひとつの作品を読むことがあります。

「これは『分かち読み』といって、文章の叙述部分と登場人物の台詞に分けたりします。叙述部分でも情景を描いている文章と内面のつぶやきで読む人を変えたり、情景の描写部分とその内容にリンクする登場人物の台詞をひとりの人が担当するという構成にしたり。作品によって、その分担は変わるので決まったルールはありません。ただ、この分担を決める段階でとても細やかな読解ができるんです」

情景を挟むことで描かれている物語の局面や、人間関係を表現する会話などを読み解いていくと、作品の構造を理解することにつながるそうです。

「朗読者ひとりひとりがこのプロセスを踏まえて、それぞれが次の人に手渡すようにみんなで言葉や文脈をつないでいく。それが何度も繰り返されることで、ひとりで読んでいるだけでは生まれない表現が生まれるんです。描写が多層になっていくような……合唱のハーモニーに
も似ているかもしれません」

発表会の前に、2〜3か月をかけてじっくり練習できるのもいい時間です。

「どんな作品にも『何度読んでもどう読んでいいかわからない』というところがあるものなんです。その部分をいろんな角度から見ようと、さらに読むうちにパッと摑める瞬間がある。すると、その箇所以外の解釈も変わってくるんです。それは、声に出して表現しようと思って初めて見つけられる朗読の魅力だろうなと思います」

最後に、「長年取り組み続けてきた朗読から、松浦さんはどんなギフトを受け取りましたか?」とたずねてみました。

「作品の中の登場人物、レッスンで出会う方々、公演をともにするアーティストの皆さん、そうした人との巡り合わせでしょうか。多くの人の生き方に触れられることが自分を豊かにしてくれました。そして、自分と違う考え方をする人を理解しようとする粘りみたいなものは出てきたかな、という気がしています。すべてを理解することはできませんが、可能なところまで粘って努力してみたいですね」

音楽の豊かさが朗読を彩るコラボレーション・ライブ

FM局にいたころ、番組のなかで語るとき、BGMがあるととても喋りやすかったという松浦さん。

「言葉と音楽が融合できていると、話に集中して聴いてもらえると感じました。この体験から、朗読会でも『楽しかった』『また来たい』とお客様に思っていただけるよう、朗読会を言葉だけの世界から少し解放してみたくなったんです」。

現在は、ピアノ、箏それぞれの演奏家とのコラボレーションを、ふたつのシリーズとして開催しています。

「朗読するとわかるのですが、言葉はイメージを描き出す役割が大切で、大事なことは意外と行間に託されていることが多いんです。その部分が音楽のメロディになったら、聴く人のイメージがより膨らむ助けになるのでは、とも思っています」

名曲アルバムとともに過ごす朗読の時間

松浦さんの次回の朗読会は12 月。松浦さんと同じ放送局出身の久保田克敏さんとともに「朗読と音楽が出会う時」と題し、作家・辻邦生さんの短編集『楽興のとき 十二章』からベートーヴェンの『ヴァイオリン・ソナタ第5 番ヘ長調 Op.24《春》』が登場する『水仙』を。また、筆マメだったと言われるモーツァルトの現存する600 余通からセレクトした手紙を朗読。音楽はそれぞれの朗読作品に連なる楽曲をアナログレコードで。会場は、東京・神保町の隠れ家的な喫茶店「かふぇあたらくしあ」。

お話を聞いた方

松浦このみさん

静岡FM放送アナウンサーを経てフリー。TokyoFM、JFN、ラジオ日本などで、数多くの番組パーソナリティを務める。ナレーターとして、テレビ番組、テレビCM、ラジオCM 出演多数。学生時代より朗読を山内雅人氏、鎌田弥恵氏に師事。NHK-FMでは「音楽物語」シリーズの朗読を手がける。声優・ナレーター養成所シャイン講師を経て2009 年一般向けの朗読教室を開講。20 代から70 代、プロ・アマ問わず個性を生かす朗読を大切に取り組んでいる。2024 年、初の著書『聞き手も読み手も楽しめる 朗読のレッスン』(彩流社)を刊行、好評を得る。

イラスト/山﨑美帆 構成・文/杉村道子

※素敵なあの人2026年1月号「自分の声が物語の案内役   物語をより深く楽しむ朗読の世界」より
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この記事を書いた人 素敵なあの人編集部

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