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卵の殻が「マグネシウム合金」の材料になると判明

  • 2026.10.5
卵の殻が「マグネシウム合金」の材料になると判明
卵の殻が「マグネシウム合金」の材料になると判明 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

朝ごはんに卵を割ったら、殻は流しの隅の三角コーナーへぽいっと捨てる、それがいつもの流れです。

ところが、この卵の殻を車や飛行機に使われる「金属」の材料にしようと考えた研究者たちがいます。

米ノースカロライナ州立大学(NC State)の研究チームは、粉にした卵の殻をマグネシウムに混ぜ込むという、少し変わった方法を試しました。

台所ごみの卵の殻から、本当に使える金属は生まれたのでしょうか。

研究内容の詳細は2026年9月30日に『Journal of Magnesium and Alloys』にて発表されました。

目次

  • 合金づくりで重要な「カルシウム材料」の悩み
  • すり鉢のように回して押し出すと、卵の殻はどうなるのか?
  • 台所ごみが金属の「原料」になる意味

合金づくりで重要な「カルシウム材料」の悩み

合金づくりで重要な「カルシウム材料」の悩み
合金づくりで重要な「カルシウム材料」の悩み / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

今回の主役となる「マグネシウム合金」は、自動車や航空宇宙、生体医療など、さまざまな分野で使い道がある金属です。

強さと重さのバランスがよいため、電子機器や航空宇宙の機器にも向いています。

そして、このマグネシウムの機械的な性質(強さや硬さなど)を高めるために加えられるのが「カルシウム」です。

金属にカルシウムを入れると聞くと意外に思えますが、炭酸カルシウムや酸化カルシウムは合金づくりにとって重要な材料なのです。

ただし、こうしたカルシウム材料は、掘り出した鉱石から複雑な工程を経て作られています。

しかも、その工程にはたくさんのエネルギーが必要です。

つまり金属を作る前に、まず鉱石を加工してカルシウム材料を用意するという、ひと手間がかかっているわけです。

そこで研究チームが目をつけたのが、私たちが毎日のように捨てている卵の殻でした。

卵の殻は、その95%が炭酸カルシウムでできています。

論文の責任著者で、NC State材料科学・工学科の助教であるバラト・グワラニ氏は「生物由来のごみである卵の殻を使って、製造の途中で必要なカルシウム材料を作れるかを確かめたかった」と話しています。

鉱石の代わりに卵の殻を入れて、そのまま金属づくりまで一気に進めてしまおうというわけです。

すり鉢のように回して押し出すと、卵の殻はどうなるのか?

すり鉢のように回して押し出すと、卵の殻はどうなるのか?
すり鉢のように回して押し出すと、卵の殻はどうなるのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

研究チームが使ったのは「摩擦攪拌押出(まさつかくはんおしだし)」と呼ばれる方法です。

まず、円柱形のマグネシウムの塊に、等間隔にいくつもの穴をあけます。

その穴に、細かくすりつぶした卵の殻の粉を詰めていきます。

この塊を鋼鉄製の筒に入れ、中心に穴のあいた鋼鉄の棒(マンドレル)を上から下ろします。

マンドレルは、すり鉢でいえばすりこぎのような役目で、マグネシウムの塊を押さえつけながら毎分300回転で回ります。

押さえつけて回しているあいだに、ほぼ同時にいくつものことが起こります。

卵の殻の粉はまわりのマグネシウムに混ぜ込まれ、殻の粒と金属とのあいだに摩擦が生まれます。

この摩擦によって、殻の炭酸カルシウムは酸化カルシウムとカルシウムに変わります。

さらに同じ過程で、「Mg2Ca」と呼ばれる高強度の合金も生まれます。

最後に、上からの圧力でできあがった合金がマンドレルの穴から押し出され、棒の形をした製品として出てきます。

こうして、卵の殻を使えば、より強く、より硬いマグネシウム合金を作れることが示されました。

今回の研究は、この方法が実際に成り立つかを確かめる「概念実証」として行われたものです。

グワラニ氏は「安価で持続可能な生物由来のごみを使って、高品質で価値の高いマグネシウム合金を作れることを示した」と述べています。

台所ごみが金属の「原料」になる意味

台所ごみが金属の「原料」になる意味
台所ごみが金属の「原料」になる意味 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

この方法の強みは、鉱石からカルシウム材料を作るという工程をまるごと飛ばせる点にあります。

グワラニ氏は、工程が少なくて済むこと、安定して持続可能な供給網を持てること、卵の殻が安いこと、そして使うエネルギーがはるかに少ないことを利点に挙げています。

同氏はこの方法を「規模を広げられ、エネルギー効率がよく、環境にも責任ある形で、生物由来のごみからマグネシウム系の複合材料を作る方法」と表現しています。

しかも摩擦攪拌押出は、マグネシウムと卵の殻の組み合わせだけに使える技術ではないようです。

研究チームは今年に入ってから、同じ方法で磁性をもつサマリウム・コバルト(SmCo5)の粉をスクラップのアルミニウムにすり込み、磁性をもつ複合材料を作れることも示しています。

捨てられていたものを、そのまま価値の高い材料に変えていく道が見えてきたと言えるでしょう。

毎朝なにげなく捨てている卵の殻も、見方を変えれば、立派な金属の材料になりうるものだったのです。

これからは卵を割るたびに、殻を捨てる手が一瞬だけ止まってしまいそうです。

でも私が一番気になったのは魔物を封印でも出来ちゃいそうな摩擦攪拌押出という名前です。

参考文献

Eggshells turn out to be the secret ingredient for stronger metal alloys (Phys.org)
https://techxplore.com/news/2026-10-eggshells-secret-ingredient-stronger-metal.html

元論文

Circular manufacturing of Mg–eggshell composites: Transforming biogenic waste into functional reinforcements
https://doi.org/10.1016/j.jma.2026.102290

ライター

天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

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