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犬と人の絆の証し、「像」になったレジェンド犬たち

  • 2026.10.3
犬と人の絆の証し、像になった犬たち

話を聞いた人:青柳健二(写真家)

あおやぎ・けんじ/1958年山形県生まれ。アジアや日本各地で棚田などの文化的景観や犬をはじめとする動物像を撮影。著書に『全国の犬像をめぐる 忠犬物語45話』『犬像をたずね歩く あんな犬、こんな犬32話』など。

事の始まりは愛犬との旅。ビーグル犬のヴィーノとともに北海道から沖縄まで47都道府県を巡る中で偶然出会った犬像に心惹かれ、以来200体以上を写真に収めてきた。

「忠犬ハチ公のような誰もが知る犬だけでなく、村のために怪物を退治したり、雪崩から主人を救ったり、飼い主に代わって神仏にお参りをしたり、史実・フィクションとり混ぜてさまざまな犬が、日本各地にその姿をとどめています。像を作るには資金も労力もかかる。けれども、それを押してでも作ろうという人々の強い思いを、こうした像に出会うたび感じます」

中でも心をとらえてやまないのが、ひたすら待ち続ける犬と、人と一緒に歩く犬の像だ。そもそも犬は狩猟犬や番犬など役に立つ存在として人の隣にいたが、長い歴史の中で、互いに必要とし補い合いながら暮らす仲間・家族になっていった。けなげに主人を待つ姿や、誰かのそばを足取り軽く歩く姿は、その象徴だ。

「そんな犬の像に出会うと、ルソン島の山奥で出会った仔犬を思い出します。集落までの峠道を、時折振り返りながら連れ立って歩いてくれました。地域や家族に愛されている犬だったのでしょう。楽しげで誇らしげな様子が、今も目に浮かびます」

人命救助で名を上げた犬も、盲導犬や介助犬として働く犬も、偉人の活躍を支えた犬も、みな誰かの愛犬であり、人とともに生きることが犬にとって何ものにも代え難い喜びなのだと青柳さん。

「オーストラリアの先住民には“犬のおかげで人間になれる”という言葉が伝わっています。犬がいなかったら今の私たちはないし、犬も人と暮らさなかったら今の犬ではなかったかもしれない。人が思いを込めた犬の像は、そんなことを教えてくれます」

最近では人気犬わさおも銅像に。今も日本のどこかで、愛すべき犬像が生まれている。

待ち続けた犬

忠犬ハチ公像
① / 東京・渋谷駅前
タロ・ジロの像
② / 愛知・名古屋港ガーデン埠頭
みんなのタロー
③ / 茨城・石岡駅西口広場

強い絆で結ばれた人間を一途に待ち続ける愛情深さは犬ならでは。その典型が①だ。飼い主の死を知らぬまま約10年にわたり駅で帰りを待つ姿が人々の胸を打ち、存命中に像が建てられた。

②も“待つ犬”界のレジェンド。南極観測隊の撤退時に取り残されながらも生き残り、再び南極を訪れた隊員と再会した。

野良犬から小学校の犬になりなぜか毎朝夕駅に通い改札口を見つめ続けた③も、実は元の飼い主を待っていたことが、その死後に判明した。

人を助けた犬

忠犬タマ公像
④ / 新潟・白山公園
忠犬ポチ
⑤ / 北海道・幌西ほうおん園
盲導犬サーブの像
⑥ / 愛知・久屋大通公園

犬にとって飼い主は信頼できる仲間であり愛する家族。有事の際には身を賭して守るべき相手だ。④は猟で入った山で雪崩に遭遇。2度にわたり雪に埋もれた飼い主を救い出した猟犬。

⑤は大正時代の“郵便犬”。飼い主の郵便局長と配達に出かけた帰り、吹雪の中で倒れた主人に覆い被さり、一晩中温め続けた。

⑥は自動車事故から主人をかばって重傷を負い左前脚を失ったが、その存在が社会の盲導犬への認識を変えた。いずれの犬像もキリリと頼もしい。

人を案内した犬

ガイド犬・平治号
⑦ / 大分・長者原
高野山案内犬ゴンの碑
⑧ / 和歌山・慈尊院

今の世の中、ひとり歩きする犬を見ることはないが、ひと昔前の犬は自由に行きたい場所へ行き、人が歩いていれば自然に寄り添って歩いた。犬も嬉しいし人も楽しい大らかな時代、中には案内犬として親しまれた賢い犬も。

⑦は九重連山を望む高原を自由に歩き、山中で道に迷った人やケガ人がいると一緒に歩き、登山口や山小屋へ誘導した。

⑧は高野山玄関口の駅から慈尊院、さらに約20km離れた高野山まで、誰に教えられることなく参拝者を案内した。

代わりに参拝した犬

柄杓童子(ひしゃくどうじ)
⑨/ 三重・伊勢神宮外宮参道
代参犬シロ
⑩ / 福島・十念寺
こんぴら狗(いぬ)
⑪/ 香川・金刀比羅宮参道

かつて人間に代わって遠路はるばる寺社を目指して旅をし、参拝を成功させて帰還する犬がいた。代参を示帳面と路銀や初穂料を入れた頭陀袋(ずだぶくろ)を首に掛け、旅人や街道筋の人に助けられ往復。帰りには御札や奉納金の受領書を持ち帰った。

⑨はお伊勢参りの代参犬“おかげ犬”がモチーフのブロンズ像。⑩は実在したおかげ犬、福島のシロを称えた古い石像だ。

⑪は香川・金刀比羅(ことひら)宮詣の代参犬“こんぴら狗”の像。長い階段を上り下りする人を見守っている。

歴史上の人物の犬

秀吉の羽犬(はいぬ)
⑫/ 福岡・筑後市
弘法大師の犬
⑬ / 京都・即成院(そくじょういん)
聖徳太子の雪丸
⑭ / 奈良・達磨寺

偉業を成し遂げた英雄や賢者の傍らにも犬の姿があった。孤高の人生にあって心の支えにも励ましにもなったのだろう。

翼を持った異形の⑫は豊臣秀吉にまつわる伝説の犬。秀吉の九州遠征の折に行く手を阻み、その強さと賢さに秀吉が感服したとも、戦に帯同するほどかわいがった愛犬とも伝わる。

⑬は弘法大師が高野山を開くにあたり神に遣わされて山中を先導したとされる2匹。

⑭は聖徳太子の愛犬、雪丸の石像。人の言葉を理解して経を読んだと伝わる。

 

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