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運動会のかけっこで転んでしまった子供。「立てる?」真っ先に駆け寄った人物に思わず目が離せなかった

  • 2026.9.7

白い線の前で、私は自分の子だけを探していた

秋の運動会でした。前の日に雨が降ったせいか、校庭の土は少しだけ湿っていました。

午前の最後の種目は、三年生のかけっこです。

三人ずつ走る形で、走り終えた組と入れ替わるように、次の三人が白い線の前に並んでいました。その列の三人目には、うちの子と同じクラスの子がいました。

正直、そのときの私は自分の子ばかり探していました。

何組目なのか、どこに並んでいるのか。カメラを構えながら、帽子を目印に何度も列へ視線を送っていました。

入場門の近くでは、先生が名簿を見ながら順番を確認しています。

「続いて、三年生のかけっこです」

放送が流れ、笛が鳴りました。走り出したのは、うちの子の組ではありませんでした。

「がんばれー!」

周囲から声援が飛びます。私はいったんカメラを下ろし、次の列を見ようとしました。

先生より先に走り出した子がいた

そのとき、走っていた一人の子が足をとられ、膝から地面に倒れました。

すぐには立ち上がりません。膝を見たまま、顔をしかめています。

テントのほうから先生が駆け出しました。ところが、それより先に動いた子がいました。

次の組の三人目として白い線の前に並んでいた、あの子でした。

自分の順番を待つ列から離れ、転んだ子のところへ走っていったのです。

「大丈夫?」

転んだ子はまだ膝を見ていました。

「立てる?」

そう聞くと、その子は腕を差し出しました。転んだ子は小さく「うん」と答え、その腕をつかみました。

「行こう」

肩を貸すようにして、二人でゆっくり立ち上がります。そのころには先生もすぐそばまで来ていました。

私はまだカメラを構えたままでした。

ファインダーの中に、うちの子はいませんでした。写っていたのは、自分がこれから走る番なのに、白い線の前から離れて戻ってきた子の背中でした。

私は、その子の名前を知りません。

覚えているのは、あの日、次の組の三人目に並んでいたこと。そして転んだ子を見た瞬間、先生が来るのを待たずに走り出したことです。

自分の子だけを探していたはずの運動会で、今も一番よく覚えているのは、あの小さな背中です。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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