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「うちの子が見えないだろ」運動会で後ろの保護者を遮った父親。だが、園長先生の一言で場所を移した理由

  • 2026.9.23

かけっこ直前の最前列

去年の秋、姉に誘われて甥の幼稚園の運動会を見に行った。

園庭のまわりには保護者用の観覧スペースが設けられ、みんなレジャーシートを少しずつ詰めながら座っていた。

年中組のかけっこが近づき、私はビデオカメラの電源を入れた。

子どもたちがスタート地点へ向かい始め、その中に甥の赤い帽子も見えた。

「いた。あそこ」

姉がうれしそうに指をさす。

私もカメラを向けようとした、そのときだった。

一人の父親が観覧席の間を抜けて前へ出てきた。そのまま最前列のロープ際に立ち、カメラを目の高さまで持ち上げた。

「あ…見えなくなっちゃった」

姉が思わず声を漏らした。父親の背中で、子どもたちの姿がかなり隠れてしまっている。

ほどなくして、名札をつけた係の先生が父親のそばへやってきた。

「すみません、お父さん。こちらでは立たずに見ていただいているんです。撮影でしたら、あちらのスペースをお願いします」

先生が少し離れた場所を示した。しかし父親はカメラを下ろさない。

「うちの子が見えないだろ」

「撮影できる場所を用意していますので、そちらからお願いします」

先生がもう一度頼むと、父親はようやくカメラから顔を離した。

「もう始まるんだよ」

さっきより大きな声だった。近くに座っていた保護者たちが振り返る。

姉も私のほうを見て、小さな声で言った。

「これじゃ、後ろの人みんな見えないよね…」

園長先生が指したゴールの正面

係の先生が困った表情を見せていると、本部のテントから年配の女性の先生がこちらへ歩いてきた。園長先生だった。

「お父さん、お子さんを近くで撮りたいんですよね」

父親は少しむっとした顔で答えた。

「そうですよ。せっかくの運動会なんだから、ちゃんと撮りたいんです」

園長先生は父親を責めるのではなく、ゴールの正面を指した。

「でしたら、あちらからどうですか。走ってくるお子さんの顔が正面から撮れますよ」

父親はつられるようにそちらを見た。ゴールの正面には、カメラを持った保護者が入れる撮影スペースが設けられていた。

「…あそこからも撮れるんですか?」

「はい。まだ入れますよ」

父親はしばらく撮影スペースを見たあと、ようやくカメラを下ろした。

「じゃあ、そっち行きます」

係の先生が「こちらです」と案内すると、父親はそのまま撮影スペースへ向かっていった。

目の前が開き、後ろにいた保護者たちもほっとしたように座り直した。

「あ、見えた」

姉も肩の力を抜いて笑った。

その直後、子どもたちがスタート地点に並んだ。

「位置について」

笛が鳴ると、甥は一生懸命に前へ走っていった。私もカメラでその姿を追いかける。

ゴールを駆け抜けた甥は、うれしそうに笑っていた。

「撮れた?」

姉がすぐに聞いてきた。

「うん。最後の顔までちゃんと入ったよ」

ふとゴール正面の撮影スペースを見ると、先ほどの父親もカメラを構えていた。

その先では、走り終えた子どもが父親に気づいたのか、笑顔で大きく手を振っていた。

父親もカメラを下ろすことなく、その姿を追っていた。

子どもをきれいに撮りたいという気持ちは、きっとその場にいた多くの親が同じだったと思う。それでも、誰か一人が前に立てば、後ろにいる人たちの大切な瞬間が見えなくなってしまう。

強く言い返すのではなく、別の場所を示した園長先生の対応が、今でも印象に残っている。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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