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「ハサミくらいで細かいなあ」僕の机のハサミを使って戻さない先輩。だが、朝礼で知らされたルールとは

  • 2026.9.26
「ハサミくらいで細かいなあ」僕の机のハサミを使って戻さない先輩。だが、朝礼で知らされたルールとは

気づくと先輩の机にある僕のハサミ

三十代の僕の机には、自分で買った黒い持ち手のハサミがある。書類の封を開けたり、届いた資料のひもを切ったりと、一日に何度も使う、手になじんだ一本だった。

ところが、そのハサミがときどき机から消えるようになった。

探してみると、たいてい隣の島にいる先輩の机に置かれている。どうやら断りなく持っていき、使ったあともそのままにしているらしかった。

最初の何回かは何も言わずに取りに行った。しかしある日、急ぎの封筒を開けようとして手を伸ばすと、またハサミがない。

先輩の席へ行くと、やはり書類の横に置かれていた。

「すみません。そのハサミ、僕のなんです」

「ああ、これ?近くにあったから借りただけ」

先輩はそう言ってハサミを差し出した。

僕は受け取りながら、今度ははっきり伝えた。

「使うとき、一声かけてもらえると助かります」

すると先輩は少し面倒そうな顔をした。

「ハサミくらいで細かいなあ」

近くの席から小さな笑い声がした。僕はそれ以上言い返せず、ハサミを持って自分の席へ戻った。

朝礼で配られた「備品のお願い」

その夜も、「近くにあったから借りただけ」という言葉が頭に残っていた。

ハサミ一本のこととはいえ、必要なときに自分の机からなくなっているのは困る。このまま何度も続くのかと思うと、気が重かった。

その週の朝礼で、課長が一人ずつに紙を配った。

見出しには「備品のお願い」と書かれている。

課長はいつもの落ち着いた声で説明した。

「共用の文房具は棚の備品箱にあります。個人の机にある物を使うときは、持ち主に一声かけてください」

そして続けた。

「借りた物は、使い終わったら元の場所へ戻すようにお願いします」

誰かの名前が出ることはなかった。僕も、この紙が先日の出来事と関係しているのかどうかは分からなかった。

朝礼のあと、課長は棚の端に置かれていた備品箱を、取りやすい真ん中の段へ移した。

先輩が手を伸ばしたのは備品箱だった

その日の午後、先輩が棚の前に立ち、備品箱からハサミを一本取り出した。

それを見た隣の席の同僚が、何気なく声をかけた。

「あ、今日はそっち使うんですね」

「うん。これでいいや」

先輩は短く答え、そのまま自分の席へ戻っていった。

直接謝られたわけでも、あの日のことを話し合ったわけでもない。

それでも翌週も、その翌週も、僕のハサミはペン立ての横から動かなかった。先輩が使った共用のハサミも、仕事が終わるころには備品箱へ戻されていた。

大げさな注意がなくても、職場全体のルールとして共有されるだけで変わることもあるのだと感じた出来事だった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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