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「ビデオ撮るんだからどいてくれよ」運動会の撮影列に割り込んだ父親。だが、係の先生が静かに伝えたこと

  • 2026.9.20
「ビデオ撮るんだからどいてくれよ」運動会の撮影列に割り込んだ父親。だが、係の先生が静かに伝えたこと

徒競走を待つ保護者の列

息子の小学校の運動会は、よく晴れた秋の朝に始まった。

徒競走が近づくと、撮影エリアの前には保護者の列ができていた。自分の子どもの出番が終わったら場所を空け、次の人が前へ出る形で、皆が順番を待っていた。

私もビデオカメラを手に並んでいると、前にいた母親が振り返った。

「次、うちの子なんです。ちゃんと撮れるかなって、さっきから落ち着かなくて」

母親は少し緊張したように笑った。

「分かります。うちはその次なんですけど、私も何回も録画ボタン確認してます」

「こういう日に限って、押したつもりで押せてなかったりするんですよね」

「それが一番怖いですね」

そんな話をしていたときだった。

後ろから大股で歩いてきた男性が、並んでいる保護者の横を抜け、そのまま撮影エリアの最前列へ入っていった。

前の母親が驚いて声をかけた。

「あの、すみません。ここ、みんな並んでるんですけど…」

男性は振り返ると、肩にかけていたバッグからビデオカメラを取り出した。

「うちの子、もうすぐ走るんだよ。ビデオ撮るんだから、ちょっとどいてくれよ」

「でも、私も次の組で…」

母親が戸惑いながら答えると、男性の声が少し大きくなった。

「だから、ちょっとでいいんだって。ビデオ撮るんだからどいてくれよ」

二度目の強い言葉に、母親は口を閉じてしまった。

後ろに並んでいた人たちも、何事かとこちらを見ている。

私も思わず声をかけた。

「皆さん、順番を待ってますよ」

男性は苛立ったようにこちらを見た。

「こっちはもう時間ないんだよ」

係の先生が静かに伝えたこと

男性の声が大きくなったことで、少し離れたところにいた係の先生がこちらへやって来た。

「どうしました?」

先生に聞かれ、前の母親が困った顔のまま答えた。

「この方が前に入ってきて…。『ビデオ撮るんだからどいてくれ』って、二回言われてしまって」

先生は状況を確認するように列を見てから、男性に声をかけた。

「すみません。こちら、皆さん並んで待っていただいているので、後ろからお願いできますか」

男性はカメラを持ったまま首を振った。

「いや、うちの子もうすぐなんだよ。今から後ろに行ったら撮れないだろ」

焦っているのは声からも伝わってきた。

先生は少し間を置いてから答えた。

「そうですよね。でも、前の方もみんな同じようにお子さんの出番を待ってるんです」

「でもさ…」

「申し訳ないんですが、順番でお願いします」

先生は穏やかな口調のまま、列の後ろを示した。

男性はしばらくその場に立っていたが、周囲を見回すと、小さく息を吐いた。

「……分かったよ」

そう言ってカメラを抱え直し、列の後ろへ歩いていった。

前の母親も、ようやく肩の力が抜けたようだった。

「すみません。ありがとうございます」

先生は軽くうなずいた。

「もうすぐですよね。撮影の準備しておいてください」

間もなく、前の母親の子どもが走る組がスタートした。

母親は夢中でカメラを向け、競技が終わるとすぐに場所を空けてくれた。

「次ですよね。どうぞ」

「ありがとうございます」

前へ出ると、ちょうど息子たちがスタートラインに並ぶところだった。

私は慌てて録画ボタンを押した。

合図と同時に息子が走り出す。画面の中で腕を大きく振り、最後まで懸命にゴールへ向かっていた。

無事に撮り終え、ほっとしながら列を離れた。

振り返ると、先ほどの男性はまだ後ろのほうにいた。

今度は何も言わず、前の人たちが撮影を終えるのを待ちながら、自分のカメラを手に立っていた。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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