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50代女性「息子の分もまとめて」処方箋2枚を出した母親。その後“放った一言”に薬剤師が“青ざめた”ワケ

  • 2026.9.26
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

「私と息子の分、まとめてお願いします」と処方箋を2枚差し出した50代の女性。

別の医療機関にかかっているとのことで、それぞれ内容を確認したところ、母親と成人した息子さんの処方薬に、看過できない重複や取り違えのリスクが見つかりました。

ご本人たちには悪気のない、ごく普通の“家族の助け合い”の裏で起きていたことをお伝えします。

処方箋2枚を差し出した母親の何気ない一言

母親が、ご自身と成人した息子さんの分、それぞれ別の医療機関からの処方箋を2枚まとめて代理受け取りに来られた場面。

ごく日常的なやりとりのなかで、思わぬ一言が飛び出しました。

別々の医療機関から出された処方内容

9月中旬の平日午前、50代のAさんがカウンターにやってこられました。「私の分と、息子の分、まとめてお願いします」。差し出されたのは処方箋2枚。

1枚はAさんご自身のもので、内科クリニックからの処方。もう1枚は30代の息子さんのもので、心療内科からの処方でした。

「息子さんは今日はご一緒じゃないんですね」と伺うと、「あの子、仕事が忙しくてなかなか薬局まで来られなくて。私が病院にも代理で行って、処方箋もらってきてるんです」とのこと。

息子さんは成人されており、代理受け取りの手続きにも問題はありません。

処方箋を受け取り、それぞれの薬歴を確認しながら調剤を進めていたのですが、ここで手が止まりました。

Aさんに処方されている薬と、息子さんに処方されている薬——成分は異なるものの、同じ系統の薬剤でした。別々の患者であるため、それぞれの処方医がお互いの処方内容を把握していないのは当然のことです。

これだけなら、まだ「別々の患者さんへの、別々の処方」で完結する話です。ただ、Aさんの何気ない一言で、状況が一変しました。

「うちね、お薬の管理はまとめてやってるんですよ。私と息子の分、同じケースに入れて、朝晩それぞれ取り出してます」

2枚を並べて見えてきた重複と相互作用

「同じケースに入れて」——この一言に、強い違和感を覚えました。

もう少し詳しく伺うと、Aさんは自分の薬と息子さんの薬を、大きめの薬箱に一緒に保管しているとのこと。

それぞれの薬袋にはお名前が書かれていますが、飲むタイミングも似ているため、朝や晩に「お母さん用」「息子用」をそれぞれ取り出すような形になっているそうです。

「息子さん、ご自分で薬を管理されるのは難しいですか?」と伺うと、「あの子、疲れて帰ってくると寝ちゃうことが多くて。飲み忘れないように私が声をかけるようにしてるんです」。ご家族としての、ごく自然な助け合いです。

ただ、この管理方法にはいくつかリスクがありました。

まず、取り違えのリスク。似たような錠剤やシートが同じ箱に入っている場合、疲労時や寝起きに、うっかり相手の薬を飲んでしまう可能性があります。

特に息子さんの薬とAさんの薬は、間違えて重複して服用すると身体に影響が出るリスクがありました。

さらに気になったのは、Aさんご自身が「息子の薬、ちょっと効くのよね」と、以前一度だけ試しに服用したことがある、と話されたことでした。

たまたま手に取ってしまったとのこと。「一度だけだから大丈夫よね」とおっしゃっていましたが、これは看過できない発言でした。

家族単位でのお薬管理に潜む落とし穴

その日は、それぞれの調剤を進めながら、Aさんに以下の3点をお伝えしました。

第一に、家族であっても薬は一人ひとり別々に保管すること。100円ショップなどで手に入る小分けケースを、名前入りで用意するようお勧めしました。

第二に、絶対に家族の薬を「試す」ことはしないこと。同じような症状でも、体質や併用薬によって作用がまったく違うためです。

第三に、可能であれば、息子さんにも一度ご来局いただき、薬剤師と直接お話しする機会を持っていただくこと。

Aさんは最初、「そんな大げさな……」という表情でしたが、「万が一、取り違えて重複して飲まれたときのリスク」を具体的にお伝えすると、「そこまでとは思ってなかったわ」と真剣な表情になられました。

その後、息子さんの主治医にも、Aさんの了承を得たうえで一報を入れ、お母様も同系統の薬を服用中であること、ご家庭での管理状況を共有させていただきました。

数週間後、息子さんご本人が来局され、以降はご自分で薬を管理する方向で進めていくことになりました。

ご家族単位でのお薬管理は、決して悪いことではありません。特に高齢のご両親と同居されている場合、お子さんが服薬をサポートすることで、飲み忘れや残薬を防げるケースは多くあります。

ただ、成人したご家族同士の場合、薬の共有や取り違えのリスクが生まれやすいのも事実です。

読者の皆さんのご家庭でも、ご夫婦やご家族で服薬中のお薬がある場合、「保管場所は分かれていますか?」「取り違えたことはありませんか?」と、一度確認してみてください。

そして、それぞれのご家族が、それぞれのかかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師を持つこと。これも、安全な服薬を守るための大切な一歩です。Aさんとのやりとりは、家族の優しさが時に思わぬリスクを生むことを、静かに教えてくれた出来事でした。


ライター:下田篤男

京都大学薬学部総合薬学科を卒業後、調剤薬局やドラッグストアグループで薬剤師として勤務してきました。総合病院の門前店舗では管理薬剤師を務め、たくさんの患者さんと向き合う日々の中で、「薬を渡す」だけではない、人と人との関わりの大切さを実感しています。現在は薬剤師として現場に立ちながら、医療記事の執筆・編集や薬局経営コンサルタントとしても活動中。読者の皆さまに、薬局がもっと身近で頼れる場所になるような情報をお届けしていきたいと思っています。


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