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生涯独身でも「人生の最期」は不利じゃない、4万人研究で判明

  • 2026.3.12
生涯独身の最期は既婚者と比べて不利じゃない / Credit:Canva

「独身だと将来が不安、孤独な最期を迎える」といったイメージが語られることは少なくありません。

ですが、本当に結婚していない人は終末期に不利なのでしょうか。

米ボストン大学(Boston University)の研究チームは、高齢者の終末期ケアの質と人間関係のあり方の関係を大規模データで分析し、結婚していないこと自体が一律に不利とはいえないことを示しました。

この研究は2025年7月25日に『The Journals of Gerontology: Series B』に掲載されました。

目次

  • 生涯独身でも「人生の最期」は不利ではない
  • 最期を支えるのは「配偶者の有無」より人間関係の形

生涯独身でも「人生の最期」は不利ではない

人生の最期は、本人の体調だけでなく、周囲にどんな人がいて、どのように支えてくれるかにも大きく左右されます。

特に終末期には、痛みや息苦しさへの対応、身の回りの世話、医療方針の説明や意思決定への参加など、多くの場面で家族や近しい人の関わりが重要になります。

そこで研究チームは、結婚している人、再婚している人、離婚している人、配偶者と死別した人、一度も結婚したことがない人で、人生最後の1カ月のケアの質に違いがあるかを調べました。

加えて、子どもの有無だけでなく、きょうだいや家族以外も含む人間関係の広がりが、終末期の質とどう関わるかも分析しています。

使われたのは、米国の高齢者を対象にした大規模調査「National Health and Aging Trends Study」の2011年から2022年までのデータです。

対象となったのは、65歳以上で亡くなった人(3万9012人)たちで、終末期の様子は、配偶者や子ども、親族、介護職員など、本人の最期をよく知る代理回答者が報告しました。

研究では、終末期ケアの質を10項目で評価しています。

具体的には、ケア全体の質、呼吸困難や痛み、不安や悲しみへの対応、医療の連携、本人の意思を反映した決定、本人の希望に沿ったケア、説明の十分さ、身の回りのケア、尊重ある扱いなどです。

その結果、目立って不利だったのは離婚者でした。

離婚者は、既婚者や死別者に比べて「とても良いケア」を受けたと評価されにくく、身の回りのケアも十分に満たされにくい傾向が見られました。

一方で、一度も結婚していない人については、少なくともこの研究では、既婚者に比べて一律に不利だとは示されませんでした。

また、子どもがいることも、それだけで終末期ケアを良くする決定打にはなりませんでした。

つまり、この研究が示したのは、「結婚していないと終末期ケアが悪くなる」とは単純にはいえないということです。

では、どのような要素が“安らかな最期”に影響するのでしょうか。

最期を支えるのは「配偶者の有無」より人間関係の形

より詳しく見ると、この研究は「誰か一人の存在」が万能だとは示していません。

むしろ、どんな人間関係があり、実際にそれがどう機能するかが重要だと示しています。

まず離婚者では、ケア全体の評価や個人ケアに加えて、敬意をもった対応の面でも不利な傾向が見られました。

終末期では、入浴や着替え、寝具の交換といった細かな世話が生活の質を大きく左右します。

そのため、身の回りのケアが十分でないことは、本人の苦痛や不安に直結しやすいのです。

一方で、一度も結婚していない人は、少なくとも「結婚していないから不利」という結果にはなりませんでした。

実際、終末期の感情や痛みの面でも比較的良好な傾向が報告されています。

例えば、人生最後の1カ月に悲しみや不安の問題がまったく見られなかった割合は、生涯独身の人では約62%に達し、他の婚姻状態では41〜44%ほどでした。

また痛みに関しても、終末期に痛みがなかったと報告された割合は、生涯独身の人では47%で、離婚者の37%より高い結果になっていました。

さらに研究では、兄弟や家族以外も含む人間関係のネットワークが広い人ほど、痛みの管理が良好な傾向も見られました。

これは、終末期を支えるのが配偶者だけではなく、周囲のつながりの広がりでもあることを示しています。

逆にいえば、結婚していることや子どもがいることだけで、良い終末期が自動的に保証されるわけではないのです。

例えば、子どもが遠くに住んでいて介護や医療の判断に関わりにくい場合や、家族の間で治療方針をめぐる意見が食い違う場合など、家族がいることが必ずしもケアの質の向上につながるとは限らないと考えられます。

研究者たちは、医療者が患者にとって本当に重要な人を見極め、その人が終末期の準備やケアに関われるよう支援する必要があると述べています。

近い親族が少ない人には、病院の患者支援担当者のような存在も役立つ可能性があります。

実際、生涯独身の人は、自立した生活を送り、老後に備えて医療や介護について事前に綿密な計画を立てたり、専門知識の豊富な代理人を雇ったりする場合が多いと指摘されています。

こうした計画は、たとえ近い親族がいないとしても、安らかな最期へと導いてくれるはずです。

もっとも、この研究にも限界はあります。

終末期の状態は本人ではなく代理回答者が報告しているため、評価にはどうしても主観が入りえます。

また、米国の医療制度の中で得られた結果なので、そのまま他国に当てはまるとは限りません。

それでもこの研究は、人生の最期を左右するのは、結婚しているかどうかだけではなく、どんなつながりを持ち、誰が実際に寄り添ってくれるのかということを示しました。

たとえ生涯独身であっても不利になることはありません。

大切なのは、良い人間関係を構築し、自分の最期に向けて良い計画を立てることなのです。

参考文献

The Good Deaths of People Who Never Marry
https://www.psychologytoday.com/us/blog/living-single/202603/the-good-deaths-of-people-who-never-marry

元論文

Social relationships and end-of-life quality among older adults in the United States: the impacts of marital, kinship, and network ties
https://doi.org/10.1093/geronb/gbaf135

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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