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「毎日のマルチビタミン・ミネラル」で老化が遅くなる可能性

  • 2026.3.11
2年間のマルチビタミン・ミネラルのサプリを摂取すると、4カ月の老化の遅延が見られた / Credit:Canva

日々の栄養補助としてマルチビタミンやマルチミネラルのサプリを活用しているかもしれません。

健康維持のために飲んでいる人は多いですが、それが老化そのものにどう関わるのかは、これまではっきりしていませんでした。

しかし米国のマス・ジェネラル・ブリガム(MGB)の研究チームは、高齢者を対象にした臨床試験で、毎日のマルチビタミン・ミネラル補充が、細胞レベルの老化指標の進み方をいくらか遅らせる可能性を示しました。

研究では、血液中のDNAメチル化を手がかりに、生物学的年齢に関連する指標がどう変化するかを調べています。

この研究成果は2026年3月9日、『Nature Medicine』に掲載されました。

目次

  • マルチビタミン・ミネラルのサプリを2年間摂取すると、老化が4カ月遅れた
  • 「すでに老化が進んでいた人」にはマルチビタミン・ミネラルが効果的

マルチビタミン・ミネラルのサプリを2年間摂取すると、老化が4カ月遅れた

人の年齢は通常、誕生日から数える「暦年齢」で測られます。

ですが実際の体の老化は、人によってかなり異なります。

70歳でも若々しい人がいる一方で、同じ年齢でも体の機能が大きく衰えている人もいます。

こうした違いを表すのが「生物学的年齢」です。

この生物学的年齢を測るために使われるのが、DNAに付く化学的な印の変化を利用した「エピジェネティック時計」です。

今回の研究は、見た目の若さではなく、老化に関係するDNAの指標がサプリ摂取で変わるかを調べたものでした。

研究チームが用いたのは、大規模臨床試験「COSMOS試験」に組み込まれた付随研究のデータです。

対象となったのは平均年齢約70歳の958人で、女性482人、男性476人でした。

研究では、毎日のマルチビタミン・ミネラルと、ココア抽出物を2年間摂取したとき、生物学的老化の指標がどう変わるかを調べています。

ここでマルチビタミン・ミネラルが選ばれたのは、高齢者では食事量の低下や吸収の変化によって、ビタミンやミネラルが不足しやすいからです。

もし微量栄養素の不足が老化の進み方に関わっているなら、それを補うことで老化指標に変化が出るかもしれない、という発想です。

一方、ココア抽出物が入っているのは、ココアに含まれるフラバノール類が心血管系に良い影響を与える可能性が以前から注目されていたためです。

参加者は、マルチビタミン・ミネラルとココア抽出物の両方を摂る群、マルチビタミン・ミネラルのみを摂る群、ココア抽出物のみを摂る群、そして両方ともプラセボの群にランダムに分けられました。

そして研究開始時、1年後、2年後に血液を採取し、PCHannum、PCHorvath、PCPhenoAge、PCGrimAge、DunedinPACEという5つの老化指標を調べました。

その結果、マルチビタミン・ミネラルを摂取したグループでは、5つの指標の多くで老化の進行が遅い傾向が見られ、特にPCGrimAgeとPCPhenoAgeでは統計的に有意な低下が確認されました。

研究チームは、「2年間で生物学的老化がおよそ4か月分遅れた」と分かりやすく報告しています。

ただし、これは劇的な若返りを意味するものではなく、老化速度が少し緩やかになった可能性を示す結果です。

一方で、ココア抽出物は、今回調べた5つのエピジェネティック時計では効果が確認されませんでした。

では、マルチビタミン・みねrはミネラルどのような人に、より強く効いたのでしょうか。

より詳しい結果を次項で見ていきます。

「すでに老化が進んでいた人」にはマルチビタミン・ミネラルが効果的

今回の研究で特に重要なのは、単に「効いたかどうか」だけではなく、「誰により効いたのか」が見えた点です。

研究者は参加者のDNAデータから、研究開始時点での生物学的老化の進み具合を評価。

その中には、実年齢よりも細胞の老化が進んでいる人たちがいました。

そしてマルチビタミンの効果はこの人たちでより強く現れました。

特にPCGrimAgeでは、研究開始時点で老化が速かった人のほうが、そうでない人よりも大きな改善を示しました。

ここで重要なのが、PCPhenoAgeやPCGrimAgeが単なる年齢予測の指標ではないことです。

PCPhenoAgeは炎症や代謝、臓器機能に関連する健康情報をもとに組み立てられた時計で、PCGrimAgeは将来の病気や死亡リスクとも関係するとされるDNAの変化をもとに計算される時計です。

つまり、この2つが遅くなったことは、健康や死亡リスクと関係する分子指標に変化が生じた可能性を示しています。

では、なぜこうした結果になったのでしょうか。

研究そのものが直接証明したわけではありませんが、研究者たちは、もともとの栄養状態が関わっていた可能性を考えています。

高齢者では十分に食べているつもりでも、微量栄養素が不足していることがあります。

ビタミンやミネラルは、DNAの修復、炎症の調節、エネルギー代謝など、体を維持する基本的な仕組みに関わっています。

そのため、足りない状態が続いていた人ほど、補充の影響が出やすかったのかもしれません。

一方、ココア抽出物が今回の老化時計では効かなかったからといって、まったく意味がないとは限りません。

今回の論文は、5つのDNAメチル化時計では効果が見えなかったと述べているだけで、ココアの作用が別の経路で表れる可能性は残っています。

この研究には限界もあります。

まず、確認された効果は統計的には有意でも小さいもので、実際に寿命が延びるのか、病気が減るのかまではまだ分かっていません。

また、対象は高齢者に限られているため、若い世代や中年層でも同じことが起きるとは言えません。

そして注意したいのは、今回使われたのは一般的な1日量のマルチビタミン・ミネラルであり、「たくさん飲めばもっと効く」ことを示した研究ではないということです。

今後は、今回見つかったDNAレベルの変化が、認知機能、がん、白内障、心血管疾患といった実際の健康結果とどう結びつくのかを調べる必要があります。

研究チームも、試験終了後もこうした変化が続くのか、新しい老化指標でも同じ傾向が出るのかを追跡する方針です。

老化を止める特効薬はまだ見つかっていません。

ですが、毎日の栄養を整えるという地味な習慣が、細胞の時計の進み方にほんの少しブレーキをかけるかもしれません。

参考文献

Daily Multivitamin Could Shave Four Months Off Your Biological Age
https://www.zmescience.com/science/news-science/daily-multivitamin-could-shave-four-months-off-your-biological-age/

COSMOS Trial Results Show Daily Multivitamin Use May Slow Biological Aging
https://www.massgeneralbrigham.org/en/about/newsroom/press-releases/daily-multivitamin-use-may-slow-aging

元論文

Effects of daily multivitamin–multimineral and cocoa extract supplementation on epigenetic aging clocks in the COSMOS randomized clinical trial
https://doi.org/10.1038/s41591-026-04239-3

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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