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「誰かのために料理する」ことが幸福感を高める、研究で判明

  • 2026.6.25
Credit: canva

誰かのために料理を作ったあと、なぜか自分の気分まで少し明るくなった経験はないでしょうか。

病気の家族にスープを作る、疲れて帰ってきたパートナーに夕食を用意する、困っている友人に料理を差し入れる。

これらは単なる家事や栄養補給ではなく、「思いやりを形にする行為」でもあります。

最新の心理学研究では、このような「誰かのための料理」が、作った本人の幸福感やポジティブな感情を高める可能性が示されました。

研究の詳細は、香港理工大学(PolyU)により、2026年1月20日付で学術誌『Applied Psychology: Health and Well-Being』に掲載されています。

目次

  • 誰かのために料理すると、作り手の気分も上がる
  • 内向的な人ほど、効果が大きくなる?

誰かのために料理すると、作り手の気分も上がる

研究チームが注目したのは、「向社会的料理」という考え方です。

向社会的とは、他者の役に立とうとする行動を指します。

つまり向社会的料理とは、自分の空腹を満たすためではなく、誰かのためになるよう意図して食事を準備する行為です。

私たちは向社会的な行動というと、寄付やボランティア、介護、災害時の支援のような大きな行動を思い浮かべがちです。

しかしチームは、キッチンで行われる日常的で静かな親切にも、大きな心理的意味があるのではないかと考えました。

4つの研究の結果、他者のために料理する時間が長い人ほど、その瞬間の幸福感が高まりやすいことが示されました。

特に、ポジティブな感情や主観的な幸福感が高くなる傾向が見られました。

また、ある研究では、向社会的料理が自尊心の高さ、活力の高さ、ネガティブ感情の低さとも関連していました。

重要なのは、この効果が「料理そのもの」だけで説明できない点です。

研究では、自分のために料理する場合と、他者のために料理する場合が比較されました。

その結果、気分を押し上げる決め手になっていたのは、料理という作業そのものよりも、「誰かのために意味のあることをしている」という感覚だったと考えられます。

つまり料理は、思いやりを目に見える形に変える行為なのです。

内向的な人ほど、効果が大きくなる?

では、なぜ誰かのために料理すると、作り手の気分までよくなるのでしょうか。

研究はその理由を直接証明したわけではありません。

しかし心理学の「自己決定理論」に照らすと、いくつかの説明が考えられるといいます。

まず、誰かのために料理することは、人とのつながりを感じさせます。

これは「自分は相手と関係している」「誰かに必要とされている」という感覚につながります。

次に、料理には計画し、材料を扱い、手を動かし、形あるものを完成させる過程があります。

そのため、「自分には何かを作れる」「役に立てる」という有能感を支える可能性があります。

さらに、その料理が強制ではなく自分で選んだ行為であれば、思いやりを自分らしい形で表現する自律性にもつながります。

興味深いことに、研究では内向的な人ほど、場合によっては向社会的料理から大きな恩恵を受ける可能性も示されました。

社交的な場で積極的に人と関わることが苦手な人にとって、料理は「静かなつながり」になります。

大勢の前で話したり、長時間交流したりしなくても、食事を通して相手を支えることができるからです。

これは、親切や思いやりが必ずしも目立つ行動である必要はないことを示しています。

ただし、この研究結果を「料理すればメンタルヘルスが根本的に改善する」と受け取るべきではありません。

研究で明確に見られたのは、あくまでその瞬間の気分や活力を高める「一時的な効果」です。

1回の食事が人生の悩みを解決するわけではありません。

それでも、日々の中で「自分は誰かの役に立てた」と感じる小さな瞬間が積み重なれば、心の回復力を支える土台になる可能性があります。

参考文献

The Prosocial Kitchen: Why Cooking for Others Lifts the Cook
https://www.psychologytoday.com/us/blog/the-science-of-everyday-prosociality/202606/the-prosocial-kitchen-why-cooking-for-others-lifts

元論文

Cooking for others is food for the soul: Consistent momentary, but mixed trait-level well-being benefits for home cooks
https://doi.org/10.1111/aphw.70121

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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