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〈菓子屋ここのつ茶寮〉主宰・溝口実穂さんの1か月連載コラム。最終回は、築約150年の古民家での暮らしについて。

  • 2026.8.31

築約150年の古民家と、田畑、山林、竹林。「全てがここにある」という感覚。私にとって宝の詰まった場所を手に入れる事ができました。

まず一番に、車の運転の練習から始まりました。

18歳の時、祖父母の勧めで免許を取ったものの、立派なゴールドの身分証明書と化していたので、運転上手な父に教えてもらい、運転の練習をたくさんしました。

夫も無事に免許を取得し、そこからはふたりで慎重に安全運転で、その時住んでいた東京のマンションと里山を往復する日々が始まりました。

真夏に軽トラを借りて、畳や残留物の処分に。夫と二人三脚ならなんでも楽しめる。
畳の処分や残留物の整理がとても大変でした。夫が率先してやってくれて本当に助かりました。

田畑や山林、竹林では、とにかく伸び切った草刈りから始まりました。

刈払機で長く伸びた草を刈ることは、断捨離した時のスッキリする気持ちに少し似ていて、草刈り後は心まですっきりします。

草刈りでしか得られない達成感があり、今では趣味のひとつです。

草刈り姿、最初から板についていた(笑)。
草刈りに全力で協力してくれている優しい父。

広くても、刈り続けたら終わりは来るのですね。父と夫と私とで、交代で刈った後に温泉に入った記憶は、最高の達成感として思い出の引き出しにしまってあります。

庭は、植物を育てるのが上手な緑の手を持つ母の力を借りています。母の庭から大切な植物達を御福分けしてもらったりして、着々と庭を育てています。

母の庭から御福分けしてもらったミモザと紫陽花。

古民家は、長いこと空き家ではあったものの、家主のご家族が管理をしてくださり、風を通していたので、空気がこもった嫌な感じは一切ありませんでした。ただし、自分たちが生活をするにはいろいろと変えなくてはならないところがあったので、このまま使える所は使わせていただき、長い目で見た時、変えた方がいい部分は思い切って変えました。古民家再生の始まりです。

古民家再生に特化した地元の工務店に協力していただき、半年くらいでベースが整い、生活できる状態になりました。

建具と柱、土壁はそのまま生かせそう。
少しシロアリ被害があったので、土台から。
床下の仕組みを見て、感動。
風通しが良い母屋。

仕事の貴重なお休みを里山仕事に使ってくれている、母の妹のじゅんじゅん。障子や網戸の張り替え方を教えてもらったり、快適に生活していくために細かいところを整える協力をしてもらいました。生活が始まった今、現在も里山をよりよくするためにも尽力してくれています。

本当に家族の協力のおかげで、心地よい生活ができています。

障子と網戸の張り替えを教えてくれた器用なじゅんじゅん。
仲間と一緒に植えた茶の木263本。茶畑に夫が草マルチ(畑の表面に刈り取った草を敷き詰める作業)をしてくれている。

田舎暮らしは、のんびりスローライフなんてものではなくて、毎日が祭りのよう。肉体労働のオンパレードです。

未来に向けて、今やるべきことが山ほどあります。でもそれがたのしいのです。なぜなら、全て未来の自分たちへの投資だからです。

完成ってあるようでなくて、死ぬその日までやりたいことがあるんだろうなと思います。一生をかけて行いたいプロジェクトがあるって幸せだなとも感じています。

〈菓子屋ここのつ茶寮〉を始めてから今までは、仕事が生活でした。
しかし、里山に越してきて、生活の中に仕事がある。そう思えるようになりました。

私にとって、それはとても大きな変化で、大切なのは、頑張る量ではなくて、心と暮らしを整えながら続けていく力! だと捉えるようになり、頑張りを諦めることも一つの勇気だと里山の自然から学びました。

近頃は温暖化などの影響で感じにくくなったとされる季節の変わり目。その変化を五感で感じ取ることができるこの生活は、心が豊かです。
そして、この生活で得た全ての学びを〈菓子屋ここのつ茶寮〉の活動に還元できることもまた悦びとなっています。

夏野菜畑とさつまいも畑に水やり。すくすく育ってくれて嬉しい。

〈菓子屋ここのつ茶寮〉主宰 溝口 実穂

出典 andpremium.jp

東京・浅草鳥越で、完全予約制〈菓子屋ここのつ茶寮(糧菓のコース) 〉を主宰して13年。2026年4月より、念願であった田畑、山林、竹林付きの築150年の古民家に住まいを移した。現在は、浅草鳥越での下町茶寮を続けながら、里山生活で畑を始め、自然の洗礼を受け、四季のうつろいを味わっている。

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