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「近くに川なんてないのに…」築15年の中古戸建を買った30代夫婦が、ゲリラ豪雨で直面した“予想外の事態”【一級建築士は見た】

  • 2026.8.30
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「夕方、急に空が真っ黒になって、たたきつけるような雨が30分ほど続いたんです。気づいたら、家の前の道路が川みたいになっていて、水が玄関の手前まで来ていました。近くに川なんてないのに、どうして…。幸い家は無事でしたが、次の夕立でまた同じことが起きるのかと思うと、不安で」

そう話すのは、郊外の住宅地に中古の一戸建て(築15年・4LDK・延床約98㎡/土地約125㎡、約3,000万円)を2019年に買ったFさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。夏のゲリラ豪雨で経験した、はじめての「家の前の冠水」。川から離れたこの場所で、なぜ水があふれたのでしょうか。

川がなくても、まちは水につかる

川があふれていないのに起こる浸水を「内水氾濫」といいます。

降った雨はふだん、側溝から下水道や排水路に集まり、川へ流れていきます。ところが、短い時間に強い雨が降ると、下水道や側溝が水をさばききれなくなります。行き場を失った雨水は、道路や低い土地にあふれ出す。これが内水氾濫です。川の氾濫(外水氾濫)とちがって、川から離れた市街地でも起こります。

そして近年、1時間に50mm以上の非常に激しい雨が増えています。とくに夏のゲリラ豪雨は、短時間に排水の限界を超える雨を降らせるため、内水氾濫の典型的な引き金になります。Fさんの家の前の冠水も、まさにこれでした。

水は「わずかに低い場所」へ集まる

見落とされがちなのが、あふれた水の行き先です。水は、周囲よりわずかに低い道路やくぼ地、坂の下に集まります。歩いていても気づかないほどの高低差でも、水は正直に低いほうへ流れるのです。

自分の家がそういう場所かどうかは、市町村が公表するハザードマップで確かめられます。よく知られた川の「洪水」のマップだけでなく、内水を対象にした「雨水出水」のマップを公表している自治体もあり、国土交通省のハザードマップポータルサイトからも見られます。

じつは、2020年8月施行の宅地建物取引業法施行規則の改正により、不動産取引の重要事項説明で、水害ハザードマップにおける物件の所在地の説明が義務づけられました。裏を返せば、それより前に買った人は、説明を受けないまま住んでいることもあるのです。2019年に買ったFさんも、その一人でした。

Fさん夫婦はどう対応したのか

そこでFさん夫婦は、まず「知る」ことから始めました。市のハザードマップを確かめると、家の前の道路は、周囲より低く水がたまりやすい場所であることが分かりました。「怖い事実のようですが、分かって逆に落ち着きました。備えようがありますから」とFさんは話します。

備えは、お金のかからない順に進めました。市が土のうを無料で提供していて、自由に持ち出せる置き場(土のうステーション)もあると知り、場所を確認。大きなポリ袋を2重にして水を入れ、段ボール箱に入れシートで包んで玄関前に並べる「簡易水のう」のやり方も、自治体の案内で覚えました。ふだんは、家の前の側溝や雨水マスのふたにたまる落ち葉やゴミをこまめに掃除します。詰まっていると、水のはけ道がそれだけ失われるからです。

そして、激しい雨のあいだは外に出ない、車を出さない、冠水した道路を歩かない。水の下では、外れたマンホールのふたや側溝が見えなくなるためです。

「川が遠いから安心」とは限らない

水害というと川の氾濫を思い浮かべますが、夏のゲリラ豪雨の時代、内水氾濫はどこの市街地でも起こりえます。住んでいる人も、これから買う人も、以下を確かめておくと安心です。

・ハザードマップは「洪水」だけでなく「内水(雨水出水)」も見る
・土のうの提供場所や、簡易水のうの作り方を確かめておく
・家の前の側溝や雨水マスを、落ち葉やゴミでふさがない
・冠水した道路には、車でも徒歩でも近づかない

雨は選べなくても、備えは選べます。自分の土地の「水のくせ」をつかんでおくことが、夏の豪雨への何よりの備えになります。

参考:
不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化(国土交通省)
内水害(内水氾濫)に注意しましょう(川口市)
身近なもので簡単にできる「水のう入り防水壁」の作りかた(取手市)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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