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「スクショを撮ると記憶に残らない」全実験で一致、米大学の研究

  • 2026.8.24
「スクショを撮ると記憶に残らない」全実験で一致、米大学の研究
「スクショを撮ると記憶に残らない」全実験で一致、米大学の研究 / Credit:Canva

アメリカのビンガムトン大学(BU)で行われた研究によって、スマホでスクリーンショットを撮ると、その内容をかえって忘れやすくなることが、約900人を対象とした7つの実験すべてで一貫して示されました。

また研究では「スマホに保存した分、脳には余裕が生まれるのでは?」という見返りも探されましたが、ほとんど見つからなかったのです。

この結果はスクリーンショットをとるという行動そのものに、記憶を劣化させる罠が含まれている可能性を示しています。

研究チームも「ボタンを押すことで情報や経験に関する記憶が損なわれている可能性が高く、その影響は撮った情報の範囲を超えて広がっているかもしれない」と述べています。

私たちは「記録」と「記憶」のどちらかしか選べないのでしょうか?

研究内容の詳細は2026年8月3日に『Memory & Cognition』にて発表されました。

目次

  • スクリーンショットをとると記憶が劣化する
  • なぜスクショしたものは忘れやすくなるのか?
  • スクショを「記憶の味方」にする方法

スクリーンショットをとると記憶が劣化する

スクリーンショットをとると記憶が劣化する
スクリーンショットをとると記憶が劣化する / Credit:Canva

授業のスライド、気になるレシピ、乗換案内の画面、あとで読みたいSNSの投稿。

「今は時間がないから、とりあえずスクショ」——スマホを持つ人なら、ほぼ毎日やっている操作ではないでしょうか。

こうして撮りためた写真やスクショは、平均的なスマホに約2000枚も眠っているとされますが、その多くは開かれないまま沈んでいきます。

実は心理学の世界では以前から、「写真を撮ると、撮った対象の記憶がかえって悪くなる」という現象(写真撮影による記憶障害効果)が知られていました。

美術館で作品を撮影して回ると、撮った作品ほど思い出せなくなる、という研究が出発点です。

より身近な例は電話番号でしょう。

スマホに連絡先を登録するのが当たり前になってから、他人の電話番号を暗記する人はほとんどいなくなりました。

「調べればすぐわかる」情報を、脳はわざわざ抱え込もうとしないのです(グーグル効果)。

そして近年、この「撮ると忘れる」現象は、カメラ撮影だけでなくスクリーンショットでも起こることが報告されはじめていました。

ただ、ここで一つの反論が成り立ちます。

「忘れても、損とは限らないのではないか」というものです。

情報を端末に預ければ、脳はそれを覚えておく労力を節約できます。

この仕組み(認知的オフロード)が働いているなら、浮いた脳のリソースは別の記憶や作業に回せるはずで、「スクショした内容を忘れる代わりに、他の何かが捗る」というトレードオフが成立していてもおかしくありません。

もしそうなら、スクショは記憶の損失ではなく、賢い分業だということになります。

今回の研究チームが確かめようとしたのは、まさにこの「見返り」が本当にあるのかどうかでした。

チームは合計892人の大学生を対象に7つの実験を行い、参加者自身のスマホで主に美術作品の画像を「ただ見る」か「スクショを撮る」かしてもらったうえで、後から記憶テストを実施しました。

テストの基本は、そっくりな3枚の絵の中から、さっき見た1枚を選ぶ形式です。

結果は、はっきり出ました。

スクショを撮った画像は、ただ見ただけの画像より、明らかに思い出せなくなっていたのです。

この差は7つの実験すべてで確認されました。

ある実験では、ただ見た画像の正答率が約88%だったのに対し、スクショした画像では約61%まで落ち込みました。

一見すると「61%ならまだ覚えているほうでは」と映る数字ですが、このテストは3枚から1枚を選ぶ形式のため、でたらめに答えても33%は当たります。

まぐれ当たりの33%を差し引いてみと、記憶の実力で正解できた分は、ただ見た場合が55ポイントなのに対して、スクショした場合が28ポイントにまで押していました。

スクショをしただけで、覚える力はちょうど半分に削られていたのです。

では、肝心の「見返り」はどうだったのでしょうか。

もしスクショが省エネ戦略として機能しているなら、浮いた力はどこかの成績に現れるはずです。

チームは考えられるメリットを片っ端から検証しました。

まず、スクショの直後に画像とは無関係の計算問題を解かせてみました。

頭のリソースが浮いているなら、計算がはかどるはずです。

結果は、差なし。

次に、スクショのあとに「二枚目のセット」として新しい画像を見せ、そちらの記憶が良くなるかを調べました。

前の情報を手放した分、新しい情報が入りやすくなるかもしれないからです。

ところが、こちらもほぼ差なし。

利点らしきものが顔を出したのは、条件を何重にも組み替えた先の一回だけです。

題材を美術作品からモノクロの日用品や動物の絵に差し替え、思い出す順番を変え、正解の基準まで甘くして、ようやく小さな差が見えたという条件でした。

こうして収支をまとめると、スクショという取引は「記憶の劣化だけが残り、得はほぼゼロ」。

論文では「スクリーンショットは相当な記憶コストを課す一方、それを補う利益は提供しない」と結論づけられています。

ではスクリーンショットをした瞬間、私たちの頭の中で何が起きているのか。

なぜスクショしたものは忘れやすくなるのか?

なぜスクショしたものは忘れやすくなるのか?
なぜスクショしたものは忘れやすくなるのか? / Credit:Canva

もともと「撮ると忘れる」現象の原因としては、「脳が賢く節約している」という説明がなされてきました。

しかし今回の研究では、節約して浮いた分を探しても、どの成績にも現れませんでした。

この説の旗色は、かなり悪くなったことになります。

そうなると残る有力な候補が浮かび上がってきます。

それは、撮った瞬間に対象への注意そのものを手放してしまう、という単純な説明です(注意の離脱)。

「撮った」という行為が引き金になり、本人も気づかないうちに、目の前のものを深く味わうことをやめてしまうのです。

節約ではなく、撮った時点で対象から心が離れているというわけです。

なぜそんなスイッチが入ってしまうのか。

日常生活において、スクショは「今は覚えなくていい、後で見ればいい情報」を保存する行為と強く結びついています。

この結びつきが染みついた結果、実際に見返すつもりがあるかどうかによらず、ボタンを押した瞬間、自動的に注意が切れてしまう——研究チームはそうした無意識の連想が働いている可能性を指摘しています。

この見方を後押しする手がかりもありました。

参加者はスクショした画像について、内容だけでなく「自分がそれをスクショしたのか、ただ見たのか」という状況の記憶まで悪くなっていたのです。

影響が撮った情報の範囲を超えて、そのときの体験全体に広がっている——心がその場から離れてしまうという説明と、よく合う結果です。

スクショを「記憶の味方」にする方法

スクショを「記憶の味方」にする方法
スクショを「記憶の味方」にする方法 / Credit:Canva

ここまで読むと、スクショが諸悪の根源のように思えてきますが、話はそう単純ではありません。

過去に行われた研究では、写真や動画を手がかりに体験をたどり直すと、思い出せる量が増えることが確認されてきました(Selwood et al., 2020; Martin et al., 2022)。

たとえば高齢者を対象とした実験では、日常の出来事を短い動画で記録し、後から繰り返し見返すことで、思い出せる細部が増え、思い出すときの気分も前向きになりました。

さらに、記憶に深く関わる脳の部位(海馬)の活動にまで違いが現れています(Martin et al., 2022)。

このように撮った画像を後からきちんと見返して復習に使えば、記憶の助けになることもあるのです。

研究チームは、少数の意図的なスクショを撮って後で内容と向き合い直す人にとって、スクショは他の復習の手法と同じように働き、自分の記憶を補う有用な助けになると述べています。

一方、撮ったあとに見返さない場合はどうなるかは、今回の研究が示した通りです。

内容の記憶が曖昧になるだけでなく、それをスクショしたのか、ただ見ただけだったのかまで、あやふやになるのです。

そして反射的に撮っては開かず、2000枚の海に沈めていく——多くの人がやりがちな使い方において、スクショは撮るたびに、その内容の記憶を少しずつ削るボタンとして働いていることになります。

結婚式、旅行、わが子の発表会。

大切な瞬間ほど、私たちはスマホを構えたくなります。

けれど、その一押しと引き換えに、体験そのものの記憶を明け渡しているのだとしたら——話は変わってきます。

大切な情報を前にしたとき、選択肢は「撮る」か「撮らない」かではありません。

数枚だけを選んで撮り、あとで画面を開いて見返す——その一手間が、カメラロールに眠るだけの複製を、頭の中の取り出しやすい記憶へ変えていきます。

スクショが記憶の味方になるかを決めるのは、シャッターを切った瞬間ではなく、その画面との向き合い方だったのです。

参考文献

Taking screenshots makes you more likely to forget information
https://www.eurekalert.org/news-releases/1140328

元論文

Digital amnesia: The aftermath of a screenshot
https://doi.org/10.3758/s13421-026-01921-2

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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