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【東野圭吾・遺作】「ガリレオシリーズ」の新刊『永遠の記憶』。天才物理学者・湯川学がずっと黙っていた記憶とは何か? ガリレオ、最後の謎が明かされる【書評】

  • 2026.8.5
永遠の記憶 東野圭吾/文藝春秋
永遠の記憶 東野圭吾/文藝春秋

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突然の訃報に、衝撃が走った。早すぎる。あまりにも悲しい。まだずっと、彼の物語を読んでいたかったのに――。2026年7月27日、東野圭吾さんが同月23日未明に亡くなったことが発表され、多くの読者が深い悲しみに包まれた。

そして、その事実上の遺作となったのが、『永遠の記憶』(東野圭吾/文藝春秋)。

天才物理学者・湯川学が、大学時代の友人である刑事・草薙俊平や女刑事・内海薫とともに、不可解な事件を科学的、論理的に解き明かしていく「ガリレオシリーズ」。累計発行部数は1600万部を突破し、直木賞受賞作の『容疑者Xの献身』(東野圭吾/文藝春秋)をはじめ、福山雅治さん、北村一輝さん、柴咲コウさんらによって映像化されたことでもおなじみの人気シリーズだ。刊行が発表された当初から、本作では「ガリレオ、最後の謎」が提示されると言われてきたが、まさかの本当に「最後」になってしまうだなんて。東野さんの訃報を知った今、その言葉はあまりにも重く響く。解き明かされるその謎とは何なのか。……読み進めるうちに、思わず「えっ」と声が漏れた。小説であれ、映像であれ、一度でも「ガリレオシリーズ」に触れたことがあるならば、この作品を見逃すことなどできない。あなたは、「あの事件」に隠された真相を、まだ完全には知らないのだ。

内海薫が刺された――犯人逮捕では終わらない「本当の復讐」

物語は冒頭からして衝撃的だ。いきなり内海薫が刺されるのだ。湯川とともに数々の事件を追ってきたあの女刑事が、である。犯人は70歳ほどの老人。飛び降り自殺を図るも失敗したその男は、取り調べでは黙秘を貫く。

現役の刑事、それもあの内海が刺されるという幕開けでありながら、犯人はあっけなく捕まってしまう。「これで事件は解決してしまうのか」といえば、そんなはずはない。犯人はまっすぐに内海に襲いかかってきたが、内海とのつながりは不明。なぜ彼女を狙ったのか、その動機は見えてこない。内海が私生活で恨みを買った可能性もあるが、やはり刑事として携わった過去の事件に手がかりがあるに違いない。捜査を続けるうちに、草薙のもとに湯川から電話がかかってくる。犯人がすでに逮捕されているにもかかわらず、真相が見えてこないこの事件を、湯川はどう解き明かしていくのか。その鮮やかな推理には、いつものことながらハッとさせられてしまう。

そして、やはり事件はそれだけにとどまらない。犯人が仕掛けた内海への本当の復讐は、真相に近づいたとき、その全貌を現す。提示された「究極の選択」に手に汗握らずにはいられない。その選択を突きつけられ、危機的な状況の中でも自らの使命を全うしようとする内海。その刑事としての矜持はあまりにもまぶしく、私たちの心を大きく揺さぶる。

あの悲しい事件へとつながる「忘れてはいけない謎」

緩急のバランスが何とも絶妙だ。油断しかけたところで次なる波乱が待ち受けているから、ページをめくる手が止まらない。極めつきは、クライマックスで解き明かされる「忘れてはいけない謎」。湯川に「人の心も科学だ」と教えた、あの悲しい事件の真実である。老人の持ち物が、こんな形であの事件へと結びつくだなんて。ああ、これは、間違いなくシリーズ最高峰の謎と言っていいだろう。

真実を追うことの功罪と、ガリレオ・湯川学の変化

引用----

「なあ湯川、俺はこれまでどれぐらいおまえの世話になっただろうな。事件解決に手助けしてもらった回数のことだ」

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読後も、切ない余韻が全身を満たし続ける。考えさせられたのは、隠された真実を追求することの功罪。たとえば、刑事の仕事は犯人を捕まえること、そして、人の生死に関わる秘密を明らかにすることだろう。だが、隠されていた事実が明るみに出たことで、傷つく人もいる。知らないほうがよかったと思う人や、警察を恨む人もいる。

今年、2026年は、「ガリレオ」こと湯川学が登場してちょうど30年の節目にあたる。30年にわたって描かれてきた湯川が、本作でたどり着いたひとつの境地。東野さんの訃報を経て読む今、その変化はいっそう胸に迫る。物語の末尾、なぜ湯川の表情はやわらいだのか。そこに浮かび上がる大きな変化を、どうか見届けてほしい。特に、シリーズを追い続けてきた読者にとって、その姿は深く、切ない余韻を残すだろう。

文=アサトーミナミ

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