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「父が亡くなって…」“腕時計”を売りにきた30代娘→数ヶ月後、大量の品物を抱えて再来店…買取のプロが見抜いた“異変”とは?

  • 2026.8.25
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。リユース業界で数多くの査定に携わってきた、たるみくまおです。

私は古物商として、ブランド品や時計の査定をしてきました。

身近な人を亡くしたあと、遺品整理に追われた経験はありませんか。「使う人もいないし」「置いておいても仕方ないから」と、つい手を動かしてしまうものです。

けれど、故人に借金があった場合、価値のある遺品を急いで手放すと、相続放棄が難しくなることがあります。

父の形見の時計を売ったAさん

ある日、30代くらいの女性Aさんが、一本の腕時計を持って来店されました。

「父が亡くなって……使う人もいないので」

Aさんはそう言って、お父様の形見だという腕時計をカウンターに置きました。落ち着いて見えましたが、気を張っている様子でした。

時計はそのまま売却。代金は実家の片付け費用に充てるつもりだと話していました。

ごく当たり前の遺品整理の一場面に見えました。

数か月後、督促状を持って再来店

それから数か月が経った頃、Aさんが再び来店されました。

前回とは様子がまるで違い、憔悴した表情で、カメラやアクセサリーなど、大量の品物を抱えていました。

事情をうかがうと、お父様宛てに督促状が届いたのだといいます。記載されていた請求額は、約500万円でした。

「少しでもお金を用意しないといけないと思って……」

Aさんは督促状を握ったまま、「今日中に売れますか」と何度も尋ねました。父の借金は自分が返さなければならない。そう思い込んでいるようでした。

時計の売却が「単純承認」にあたる可能性

話を聞くと、Aさんは弁護士にも相談していました。以前に時計を売ったことを伝えると、それが相続放棄の妨げになるかもしれない、と言われたそうです。

相続では、預貯金や不動産だけでなく、借金も一緒に引き継ぎます。借金のほうが多ければ、財産も借金も受け継がない「相続放棄」を選ぶこともできます。

ただ、遺品を売ったり、その代金を使ったりすると、「財産も借金も引き継ぐ意思がある」と見なされ、相続放棄が難しくなることがあるのです。これを法律上「単純承認」といいます(民法921条)。

Aさんは、借金を知らないまま時計を売ったことで、知らないうちに相続を「受け入れた」と見られかねない状況にいました。

ただし「売却=放棄できない」ではない

とはいえ、時計を一本売っただけで、必ず相続放棄ができなくなるわけではありません。品物の価値や代金の使いみちなどによって、判断は異なります。

すぐに判断できないときは、家庭裁判所に申し立てて期間を延ばすこともできます。自分だけで決めず、早めに弁護士などへ相談することが大切です。

「もう放棄できないなら、残ったものを売って返すしかないと思ったんです」

そう話すAさんに、私は思わず声をかけました。

「今日は売らずに、持ち帰りませんか。売るかどうかは、弁護士にもう一度確認してからでも遅くないと思います」

ここで遺品を手放せば、状況がさらに不利になりかねません。黙って査定するわけにはいきませんでした。Aさんは少し迷ったあと、「……そうですね」と小さくうなずき、遺品を持ち帰っていきました。

遺品を手放す前に、一度立ち止まる

Aさんが最初に時計を持って来られたとき、同じ言葉をかけられていたら、と私は悔しく思いました。

故人の借金が心配なときは、信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター〈KSC〉)に開示請求をすれば、ある程度は調べられます。

ただし、税金の滞納や個人間の借金、保証債務などは、ここではわからないこともあります。

借金を含めた相続財産の全体像がわかるまでは、価値のある遺品を売らずに保管することが大切です。判断に迷った場合は、弁護士や司法書士、家庭裁判所に相談してください。


ライター:たるみくまお

リユース業界での買取窓口業務を経て、現在は技術商社に勤務する現役ビジネスマン兼Webライター。古物商許可証を保有し、ブランド品・高級時計の査定現場で数多くのお客様と向き合ってきた経験を持つ。現職では技術商社の最前線に身を置き、ITをはじめとする幅広い分野の知見を日々積み重ねている。また、過去に借金を抱えた経験から、マネーリテラシーの重要性を痛感し、現在も金融知識の習得を続けている。現場経験と公表資料をもとに、二次流通市場の裏側からお金のリアルな話まで、等身大の言葉で発信中。

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