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「これ焼きたてと変えて」1時間前に買ったパンを交換しに来た客。だが、社員が非を認めた上で告げた一言とは

  • 2026.7.28
「これ焼きたてと変えて」1時間前に買ったパンを交換しに来た客。だが、社員が非を認めた上で告げた一言とは

最後の一つが売れたあとで

私が働くパン屋では、裏の作業台に成形まで済ませた生地を置いてあります。

棚が減った分をその都度焼いて足す仕組みです。

その日の昼過ぎ、人気の惣菜パンが最後の一つになりました。

買っていかれたのは、四十代くらいの女性のお客様です。

レジでは、とくに何もおっしゃいませんでした。

棚が空いたので、裏で生地を焼き、焼けた順に並べていきます。

自動ドアが開いて、さきほどの女性が戻ってこられました。

手にはうちの店の袋。中には、先ほどお売りした惣菜パンです。

そのままレジへ来て、袋をカウンターに置きました。

「1時間前に買ったの、これ焼きたてと変えて」

言われた意味が、すぐには飲み込めませんでした。

「あの時はこれしか残ってなかったから、仕方なく買ったのよ。今見たら新しいのが並んでるじゃない」

お気持ちは分かります。ただ、一度お会計を済ませた品となると、私の一存では決められません。

「恐れ入ります。レシートを拝見してもよろしいでしょうか」

女性の眉が動きました。

「ほら、パンはここにあるのよ。レシートは無くてもいいでしょう」

「決まりですので、確認をさせていただいております」

財布から出された紙には、およそ1時間前の時刻がありました。

「ついさっきよ。数十分前だわ」

非を認めてから、境界をひく

やり取りに気づいた社員が、事務所から出てきました。レシートを一度見て、女性のほうへ向き直ります。

決まりを並べて断るのだと思っていました。

「次に焼き上がる時間をお伝えしていなかったのは、私どもの落ち度です。申し訳ありません」

頭を下げたのです。女性の口が、開きかけたまま止まりました。

「ただ、お会計から1時間が経ったお品の交換は、今回限りとさせてください。次からは焼き上がりの時刻を必ずお伝えします」

穏やかな声でした。それでいて、引く気配はありません。

女性はレシートに目を落とし、それから棚のほうを見ました。

「……そう。じゃあ、今回だけね」

「はい。ありがとうございます」

社員は焼きたてを袋に入れ、両手で渡しました。

「ごめんなさいね、無理を言って」

受け取り際に、女性はそう言って出ていかれます。声は、来た時よりずっと小さくなっていました。

数日後、棚の値札の隣に小さな木の札が置かれるようになりました。

次の焼き上がりの時刻を、その都度書き込む札です。

「これがあれば、待ってもらえますよね」

社員はそう言って、ペンで時刻を書き入れます。

あの日と同じやり取りは、それきり起きていません。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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