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【ルームツアー】1950年代の平屋をキャンバスに。テラコッタとブルーが響き合う感性の邸宅

  • 2026.5.14
ALI HARPER

あらゆるアーティストにとって、光と色は何よりも欠かせない要素。2020年に画家エリザベス・スターンが、ナッシュビルのフォレスト・ヒルズ地区にある歴史ある平屋を購入した際、その家にはまさにその“不可欠な要素”が欠けていた。その一方で、そこには他にはない独特の魅力が眠っていた。まず、1950年の築造以来、ほとんど手が加えられていなかったこと。それはリノベーションに携わる者にとって、まさに理想的な“キャンバス”といえた。さらに、敷地の広さも格別だった。市街地にありながら約32000㎡を超える広大な土地には、プールハウスや納屋も備わっていた。現在の用途地域規制を考えれば、これらを新たに建てるのは極めて困難であり、非常に稀有な物件だったのである。

スターンはこの家に可能性を見出し、優れたデザインチームの力を借りれば、望み通りに変貌させられると確信していた。彼女は地元の建築事務所フェファー・トロドに依頼。プロジェクト主任を務める建築家のエリン・サイプレスは、この大仕事に取り組むべく、インテリアデザイナーのリズ・ボネジオをチームに引き入れた。それから2年、3人は協力して、この平屋を彩りと個性で満たし、光の届かない部屋の隅々にまで日の光を呼び込むためのプランを練り上げていった。

何よりもまず取り組むべきは“光”の扱いだった。サイプレスは、枠で縁取られた建具のない開口部を連続して設けることで、空間をつなぎ合わせた。家の一端にある寝室などのプライベートエリアと、もう一端にあるパブリックエリアを橋渡ししたのである。後者は、スターンがパーティーを開いたり、ビリヤードや麻雀を楽しんだりするための、回遊性のある開放的な空間を望んだ場所だ。さらにサイプレスは、キッチン、リビング、ダイニングの先にサンルームを増築し、室内を庭やパティオと結びつけるプランを提案した。「今では、自然と屋外へ引き込まれるような空間になっています。実際に外へ出ていなくても、これだけ窓がたくさんあり、天井もゆったりと高いため、まるで屋外にいるかのような気分を味わえるのです」とサイプレスは語る。

またスターンからは、ダウンライトを極力使いたくないという要望もあった。ボネジオはこれを見事に叶え、キッチンにほんの数個設けた以外は、さまざまなデザインのシーリングライトを取り寄せて、光が空間全体に行き渡るようにした。次に取り組んだのが「色」である。「最初から、スターンと一緒に楽しみながら決めていきました」とボネジオは振り返る。アートサロンを兼ねたダイニングルームの漆喰壁から、サンルームに敷かれたフランスの古材「パルフイユ」(テラコッタタイル)の床に至るまで、土の香りが漂うピンクがかったテラコッタ色が、家全体を貫くテーマとして浮かび上がった。そこに組み合わせたのがブルーだ。主に使われた「ファロー&ボール」の“スカイライト”という淡いブルーグレーが、テラコッタの温かみを美しく引き立てている。

プロジェクトが完成する頃には、家の隅々に至るまでスターンならではの個性が息づいていた。驚くことに、それは納屋にある鶏小屋にさえ及んでおり、なんとそこには専用のシャンデリアまで飾られているほどだ。「住まいがその人自身をこれほどまでに映し出している、そんなクライアントと一緒に仕事ができるのは本当に素晴らしい経験です。彼女の研ぎ澄まされた感性が、この家をここまで美しいものにしてくれたのです」とサイプレスは語る。US版「ハウスビューティフル」より。

Ali Harper

リビングルーム

元からある大理石の暖炉の飾り枠の両脇には、造作棚が配されている。棚の内側は「ドミング・アーキテクチュラル・フィニッシュ」のミネラルペイント“プリムローズ”で、枠組みは「ファイン・ペインツ・オブ・ヨーロッパ」の“GC822”でそれぞれ塗り分けられている。

シーリングライト/「リメインズ・ライティング・カンパニー」
シャンデリア/「マテリア」の“Forchette 24 Chandelier(黒染め真鍮仕上げ)”
カーテン/「リー・ジョファ」の生地を使用し特注品
ラグ/「エルデン」の特注品

Ali Harper

キッチン

スターンは、水栓などの配管を一切設けないオールウッドのアイランドキッチンを希望した。これを受けて、サイプレスはオーク材を用いたアイランドを特注で製作した。

Ali Harper

キッチン

キャビネットのペイント/「ドミング・アーキテクチュラル・フィニッシュ」の“チャペル”
カウンタートップ/クリスタロ・アズール・クォーツァイト
水栓/「バーバー・ウィルソンズ」
ペンダントライト/「バルサモ」

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パントリー

「コーラー」の深いシンクを備えたことで、単なる収納スペースだったこの場所は、花を生けるのにも重宝する機能的な空間へと生まれ変わった。

ペンダントライト/「リメインズ・ライティング・カンパニー」
カウンタートップ/「トライトン・ストーン・グループ」の“ロンドンシルク クォーツァイト”

Ali Harper

キッチンキャビネット

シンクの向かい側には、スターンが所有する陶磁器を収めるためのキャビネットが配されている。フレームは「ベンジャミン・ムーア」の“サンドブラスト”、棚板は「シャーウィン・ウィリアムズ」の“ブラスタリー・スカイ”背板には「ザック+フォックス」の壁紙があしらわれている。

Ali Harper

サンルーム

建築家のサイプレスが“特等席”と呼んでいるのは、キッチンの傍らに設けられた、日々の食事を楽しむためののどかな一角。青く彩られた天井が、この陽気な空間を屋外の景色といっそう密接に結びつけている。

Ali Harper

サンルーム

ペンダントライト/「ソーン」
シェード/「ザック+フォックス」の生地に「ブルーダ」のトリム
ベンチソファ/「カザル」の生地を使用した特注品。クッションには「ペレニアルズ」の生地を使用
テーブル/クリストフ・デルクールがデザイン
チェア/「シュワン」

Ali Harper

ダイニングルーム

スターンが求めていたのは、単なるディナーの場にとどまらず、パーティーを華やかに催せる空間だった。「ファロー&ボール」の“スカイライト”で彩られた壁のパネル板は、彼女がアートを“サロンスタイル(壁一面に多数の作品を並べる手法)”で飾るための格好の背景となっている。そのすぐそばには、ビリヤード台を兼ねたダイニングテーブルとピアノが並んでいる。

壁(漆喰)/「ドミング・アーキテクチュラル・フィニッシュ」の“ブリック”
チェア/「ローズ・ターロウ」

Ali Harper

土間

「とにかく重かった」というそのシンクは、Facebookマーケットプレイスで見つけ出した掘り出し物。「シカゴ・フォーセット」の水栓は、あえて表面のメッキを剥がすことで、無垢の真鍮が持つ本来の質感を露わにしている。

ペイント/すべて「ベンジャミン・ムーア」。壁は“シーパール”、枠組みは“ピルグリム ヘイズ”、ドアは“ブルー・ノート”
ペンダントライト/「カリー&カンパニー」

Ali Harper

ベッドルーム

「ローズ・ターロウ」の生地を張った「デニス・ミラー」のベッドが、多彩なプリント柄を心地よくミックスさせた空間の主役となっている。

ナイトスタンド/「ブレット・デザイン」
壁掛け照明/「ソーン」
寝具/「リベコ・ホーム」

Ali Harper

ゲストルーム

「ピーター・ファサノ」の壁紙から着想を得て、空間全体をナチュラルな色彩でまとめている。

ベッド/特注品。「ファイン・ペインツ・オブ・ヨーロッパ」の“GC603(ラッカー仕上げ)”
ナイトスタンド/「メイド・グッズ」
ベッドカバー/「オズボーン&リトル」の生地を使用した特注品

Ali Harper

バスルーム

主寝室のバスルームを彩るのは、「フィッシャー・ワイズマン」の金箔仕上げのパピエ・マシェ(紙工芸)のシャンデリア。バスタブは「ビクトリア+アルバート」、水栓には「バーバー・ウィルソンズ」を採用している。

カフェカーテン/「エタミン」の生地を使用した特注品
ラグ/「エリコ・ラグ」

Ali Harper

ゲスト用バスルーム

一方、ゲスト用バスルームは、隣接する2つの客室の間に位置し、どちらからも直接出入りできる共有スタイルとなっている。「ラカバ」のワイドな長方形シンクを選んだことで、スターンの娘たちが2人並んでもスムーズに身支度を整えられるよう配慮した。

ペイント(枠組み)/「ファロー&ボール」の“デ ニーム”
壁タイル/「タバルカ・スタジオ」
シーリングライト/「リメインズ・ライティング・カンパニー」
ブラケットライト/「サーカ・ライティング」

Ali Harper

グリーンハウス

「ハートレイ・ボタニック」のヴィクトリア調グラスハウスは、庭で採れたハーブの調製や、植物の植え替え作業を行う園芸小屋として活用されている。

original text : Elyse Moody

>>US版『House Beautiful』のオリジナル記事はこちら

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