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マスキュリニスト(男性至上主義者)が拡大する今、フェミニズムはどうあるべき?

  • 2026.3.6
bashta / Getty Images

中絶やLGBTQI権利への攻撃が強まる、「反動の時代」にある今。男性や、エコフェミニズム、インターセクショナリティなど多様なフェミニズムの潮流を含め、今一度私たちが連帯することの必要性がますます高まっている。現状の課題とともに専門家に聞いた。

教えてくれたのは.…
カミーユ・フロイドヴォー=メトリー(Camille Froidevaux-Metterie)
フェミニズム哲学者。これまでの著作(『女性革命』2015年、『胸─解放を求めて』2020年、『自分自身の身体』2021年)を通じて、女性の体をテーマに研究。新著は、現在と過去のフェミニズム思想を網羅する『フェミニスト理論』(スイユ社)。

反動の時代において、連帯し直すことの重要性

女性の権利、とりわけ中絶をめぐる保障の後退や、LGBTQIの権利への攻撃の数々─フェミニズム哲学者のカミーユ・フロイドヴォー=メトリーは、昨今の欧米各国の内部で拡大する、人権や平等に関する反動的プロジェクトを目の当たりにしてこう語る。「私たちは今、フェミニズムを問い直し、さらには時間を巻き戻す局面にいます」

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フェミニズムのなかにも多様な潮流がある。当初の市民的・政治的権利を求める運動から、1970年代には中絶を含む生殖の自己決定権へ、さらにジェンダーやセクシュアリティ、人種、障害、年齢を理由に受けるあらゆる差別へと論点を広げてきた。たとえば、女性の搾取と自然の搾取を結びつけるエコフェミニズムや、より複層的な問題と捉えるインターセクショナリティ、脱植民地フェミニズムなどだ。「大切なのは、今のような後退期において、いったん意見の違いは置いて、力を合わせることです。フェミニズムは、千の惑星や星からなる星座です。互いにとても遠いものもありますが遠くから全体を眺めれば、同じ大きな光を形作っているのです!」

男性の参加の是非をめぐっても、フェミニズムは長く割れてきた。「70年代のアメリカで、アフリカ系女性たちが、男性が隣に立つことを主張したのが最初でした。それは、同時に人種差別との闘いでもあったからです。社会を変えるためには、男性を同盟者として巻き込む道もあるのです」

“フェミニズムは、千の惑星や星からなる星座です”

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そこで懸念されるのが、性暴力やDVといった当事者が安全に話せることが重要なテーマにおいては、女性だけの安全な場が必要だということだ。「それは男性アライを含むアプローチと両立しえます」と、カミーユ。

では、男性はどうあるべきなのだろうか。「まず、学ぶ努力をしてもらうこと。家父長制、ジェンダーに基づく暴力、支配、コントロールなど、私たちが何を語っているのかを理解するために自らを教育する。次に、その理解したフェミニズムを自分の日常生活に適用すること。たとえば、友人が性差別的ジョークを言ったら反応する、パートナーに『手伝えることある?』と聞くのをやめて頼まれなくてもやる、とか。基本中の基本ですが、もし大多数の男性が始めたら、それだけで多くが変わるはず。第3段階はコミットメントです。デモに参加したり(その際先頭には出ないこと)、次世代のための教育ツール作りに貢献したりというように」

早期から教育すべき、男性が直面する問題

しかしながら、現実には若い男性の間でマスキュリニスト(男性至上主義者)的思考が高まっている問題がある。「これは、反動的な空気の指標のひとつです。マスキュリニストは、フェミニズムを『男を悪者にして、男性らしさを奪う運動だ』と捉え、過剰な男らしさを称揚する。それを、SNSという巨大な拡声器を利用して拡散しているのです」

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フェミニズムの声が高まることへの反動として、若い男性が抱きうる恐れは、社会が注意深く扱うべき感情だ。「少年が思春期に達し、仲間との関係のなかで自己定義を始める年齢になると、彼らは過剰な男らしさのステレオタイプと一人で向き合うことになります。『男であること』とは何かについての誤解と不安があると、マスキュリニストの扇動に吸い込まれやすいでしょう」。これは教育プログラムの欠落であり、早期教育によって埋める必要があると指摘する。「北欧諸国のように、幼稚園の段階からジェンダー・ステレオタイプの問題に取り組まなければならないと考えています」

こうしてみると、男性もまた、「男らしく」というステレオタイプの犠牲者であるにもかかわらず、フェミニスト男性のロールモデルは少なく、なかなか進展しない。「権力や意思決定の地位にいる大多数は男性なのだから、男性抜きでは制度は動きません。さらに言えば、男性はフェミニストであるほうが幸せなのです!」

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