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27年前、別れの言葉を掲げた歌が本当の別れを連れてきた 前を向くために書かれた“予言の一曲”

  • 2026.6.14

明るい言葉と、切ない響き。この2つが正面からぶつかったとき、曲は思いがけない深さを持つ。前を向いて歩き出すための歌なのに、聴いていると胸の奥がきゅっと締めつけられる。その矛盾こそが、この曲の核にある。

BLACK BISCUITS『Bye-Bye』(作詞:森浩美&BLACK BISCUITS/作曲:川上明彦)ーー1999年5月26日発売

タイトルは別れの言葉だ。けれど歌が描くのは、別れの先にある新しい一歩。サヨナラを「また新しいスタート」と言い換えて、自分を変えていく力に変える。歌詞だけ取り出せば、これ以上ないほど前向きな曲である。問題は、その前向きな言葉が、切ないメロディの上に乗っていることだ。

切ないイントロが、明るい言葉を裏切る

イントロは、しんみりとしたキーボードの旋律から始まる。そこから一転、アップテンポのファンク調へなだれ込む構成だ。

ブラビの楽曲はもともとファンクを基調にしてきたが、この曲のコード進行には、ほかの3曲にはなかった切なさがある。跳ねるベースとカッティングで体は前に出ていくのに、和音の奥には引き止めるような寂しさが残る。明るく歌っているのに、どこか泣きそうに聴こえる。

長めのイントロが明けると、いきなりサビから飛び込む構成も効いている。前置きを省いて、いちばん言いたいことから始める。その性急さが、別れ際の「行かなきゃ」という焦りと重なって、楽曲全体に小走りの体温を与えている。

この食い違いが、聴き手の感情を不安定に揺らす。歌詞は「前へ」と言い、サウンドは「行かないで」と言っている。その引き裂かれた感触が、ただの応援ソングでは届かない深いところに刺さるのだ。サヨナラに泣きながら、それでも足は前に出る。誰もが一度は通る、あの引き裂かれた瞬間が、ここには音で写し取られている。

タレントが集まって作ったユニットだから、と侮ってはいけない。明るい言葉をあえて切ない音に乗せる。この設計は、楽曲として確かな手つきで組まれている。

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ブラックビスケッツ-1998年2月撮影(C)SANKEI

始まりから終わりまで

作詞を担ったのは森浩美とブラックビスケッツ。森浩美は、SMAP『SHAKE』やKinKi Kids『愛されるより 愛したい』を手がけた書き手で、ブラビのデビュー曲『STAMINA』から一貫して彼が作詞を担当している。彼の詞は、難しい比喩で飾るより、メロディに素直に乗ることを大切にする。だからこの曲の言葉も、口にしたときに気持ちよく転がる。「サヨナラ」を重い別れにせず、軽やかに次へ送り出す。その筆致が、切ない音とぶつかってちょうどいい温度を生む。

始まりの言葉を書いた人が、結果として終わりの言葉も書くことになった。本人がそれを意図したわけではない。けれど、グループの最初から最後までを一本の言葉でつないだ人がいたという事実は、この曲を聴き返すときに静かな重みを足してくる。

4人で歌った、最初で最後のハーモニー

この曲には、それまでのブラビになかった挑戦がある。新メンバーのケディを迎え、3人から4人になった編成で、サビのハーモニーを厚くしようとしたのだ。

台湾のビビアンと、上海から来たケディ。日本のお笑い芸人2人と、アジアの2人の声が、ひとつのサビのなかで溶け合う。声を重ねて広がりを出す。それはバラエティ発のユニットが、純粋に音楽として高みを目指した証だ。テレビの企画から生まれた4人組が、笑いの道具としてではなく、ハーモニーという音楽の本筋で勝負しようとした。その姿勢自体が、色物という見方をひっくり返す。

結果としてこの4人編成は、この1曲だけで終わった。声の重なりは、狙ったほど前には出てこない。それでも、出自も国籍もばらばらな4人が同じサビを分け合った響きには、整いすぎたコーラスにはない手作りの温もりがある。あとにも先にもこの曲でしか聴けない、一度きりの配合なのである。

予言になったタイトル

この曲には、過酷な条件がついていた。発売から2カ月で前作を超えなければ、メンバーが脱退する。番組企画が課したその約束を背負って、『Bye-Bye』は世に出た。

そして、目標には届かなかった。累計40万枚を超えるヒットでありながら、前作の高い壁の前では足りなかった。約束どおり南々見狂也とケディは抜け、グループは活動を止めた。前を向くために書かれた歌が、別れの言葉そのものをタイトルに掲げたまま、本当の別れを連れてきてしまった。

皮肉な符合だ。けれど、この曲が今も聴き返されるのは、その顛末の珍しさのためではない。明るい言葉を切ない音に託すという矛盾を、最後まで貫いたからだ。「また会おう」と笑って手を振りながら、声のどこかが震えている。その震えこそが、別れというものの本当の手触りに、いちばん近い。

また新しいスタートへ

サヨナラは終わりではなく始まりだ、と歌は言う。その言葉は、グループには届かなかったかもしれない。けれど曲そのものは、約束にも数字にも縛られず、聴く人のなかで何度でも新しく鳴り直す。前を向く力が欲しいとき、この切ないファンクに背中を押される。そんな聴かれ方を、この曲は今も静かに続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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