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食物繊維を多くとると夢を見る眠り時間が増える――大規模研究で見えた傾向

  • 2026.3.3
食物繊維を多くとると夢を見る眠り時間が増える――大規模研究で見えた傾向
食物繊維を多くとると夢を見る眠り時間が増える――大規模研究で見えた傾向 / Credit:Canva

イスラエルにあるワイツマン科学研究所(WIS)などで行われた研究により、食物繊維をたくさん食べた日には、深い眠りと夢を見る眠りの時間が増え、浅い眠りの時間が減り、さらに夜の心拍数が低くなる傾向があることが報告されました。

研究ではさらに、夕食をたくさん食べた日は睡眠時間が少し長くなる代わりに夜の心拍数が上がり、夕食を早めに済ませた日は睡眠時間が少し短くなる代わりに夜の心拍数が下がりやすい、といった、夕食の取り方と睡眠との関係もみつかりました。

食物繊維が体に良かったり、寝る直前に食べるのが体に悪いのはなんとなくわかりますが、なぜ睡眠の質や夢、さらには心拍数にまで影響を及ぼすのでしょうか?

研究内容の詳細は2026年2月18日にプレプリントサーバーである『medRxiv』にて発表されました。

目次

  • 食物繊維と眠りの質はとこまでつながっているのか?
  • 食物繊維を多くとると深い眠りが増える
  • なぜ食物繊維や夕飯のタイミングや量が睡眠と関係するのか?

食物繊維と眠りの質はとこまでつながっているのか?

食物繊維と眠りの質はとこまでつながっているのか?
食物繊維と眠りの質はとこまでつながっているのか? / Credit:Canva

朝起きたときに、同じ時間だけ寝たつもりでも、「よく寝た日」と「なんとなく体が重い日」があります。

そんなとき私たちはなんとなく、「ストレスのせいかな」「きのうコーヒーを飲みすぎたかな」などと思います。

しかしよく考えてみると、前日の寝る前に「ドカ食い」していたケースなどはないでしょうか?

一方で、お腹が空っぽのまま寝てしまった日は「翌日妙に目覚めがいい」ということはなかったでしょうか?

こうした経験から、「食べ物と睡眠の質は関係していそうだ」という感覚は、昔から多くの人が持っていました。

実際、これまでの研究でも、食物繊維が多い食事や乳製品が多い食事は、睡眠時間が長い、途中で起きにくい、といった良い指標と結びつくことが多いと報告されています。

一方で、砂糖や飽和脂肪、超加工食品が多い食事は、眠りが細切れになりやすいことも指摘されてきました。

しかし、従来の研究は調査方法がバラバラで、「何をどれくらい食べるのが一番いいのか」「いつ食べるのがいいのか」といった点は、はっきりしないままでした。

夕食の時間についても、早い方が良いという結果もあれば、早すぎると逆に睡眠が乱れるという結果もあり、ビタミンやミネラルについても、良さそうだと言われるものは多い一方で、全体像はモヤモヤしたままでした。

ビタミンやミネラルについても、マグネシウムやビタミンDなどに「良さそうだ」という報告がある一方で、はっきりしないものも多く、全体像はまだモヤモヤしていました。

そこで今回の研究では、「今日なにを、いつ食べたか」と「今夜どんな眠り方をしたか」を、できるだけ現実に近い生活の中で細かく記録して結びつけることに挑戦しました。

単に「よく食べる人とあまり食べない人を比べる」のではなく、同じ人の中で「きのう」と「きょう」の違いを追いかけ、その日の食事の条件だけが変わったとしたら、という考えに近づける工夫も行われています。

そのうえで、食物繊維が多い日かどうか、植物性の食べ物を何種類食べたか、夕食の時間や量の違いなどが、その夜の深い眠り・浅い眠り・夢を見る眠り、そして寝ているあいだの心拍数と、どのように結びついているのかを、何千泊分ものデータで比べようとしました。

食物繊維を多くとると深い眠りが増える

食物繊維を多くとると深い眠りが増える
食物繊維を多くとると深い眠りが増える / Credit:Canva

食べたもので睡眠の質が変わるのかどうかを調べるために、研究者たちはイスラエルの大規模な健康研究に参加している大人3,598人を対象に、合計4,793泊ぶんのデータを集めました。

参加者は、スマホのアプリに「食べたもの」と「食べた時間」をそのつど入力し、夜は自宅で身につけるタイプの睡眠計をつけて眠りました。

この装置は、体の信号から深い眠り、浅い眠り、夢を見るレム睡眠の割合と、寝ているあいだの心拍数(1分あたりの脈の回数)を自動で推定してくれます。

まず、集まったデータからは、この集団の平均睡眠時間が1日約6.3時間で、そのうち約18%が深い眠り、24%がレム睡眠(夢を見るタイプの眠り)、残りが浅い眠りであることが分かりました。

全体として、睡眠時間はやや短めと言っていいでしょう。

(※研究では眠りを、深い眠り、レム睡眠(夢を見るタイプの眠り)、浅い眠り、の3タイプにわけて話を進めています。起こしにくさで順番付けすれば「浅い眠り(N1,N2) < 夢を見る眠り(レム) ≦ 深い眠り(N3)」となります)

次に研究者たちは、食事との関係をていねいに分析しました。

いちばん分かりやすい動きを見せたのが、「食物繊維が多い日かどうか」です。

食物繊維を多くとっていた日は、そうでない日と比べて、深い眠りと夢を見る眠りの時間が少し長くなっていました。

一晩に6時間ちょっと眠る人を例にすると、深い眠りが平均で2分前後、夢を見る眠りが3分前後長くなり、逆に浅い眠りが合計で5分ほど短くなる、という目安になります。

夜の心臓のドキドキも、「食物繊維が多い日」には、平均すると1分あたり1回分ほどゆっくりになっていました。

つまり食物繊維が多い日には、「深く眠る時間が少し増える」「心臓のがんばりも少し減る」という二つの変化が、同じ方向に出ていたということになります。

また、「何をどれくらいの種類」食べたかも、大事な手がかりになりました。

豆、野菜、果物、穀物、ナッツなどの種類が多い日には、寝つくまでの時間が数十秒ほど短くなり、夜の心臓のドキドキも少しおだやかになっていました。

「たくさんの種類の植物を少しずつ食べる日=寝つきがわずかに良く、心拍も少し落ち着く日」というイメージです。

一方で、「タンパク質・脂質・炭水化物を何パーセントずつにするか」といった部分でははっきりとした短期的な効果は見えませんでした。

ここから、「少なくとも日替わりのレベルでは、タンパク質・脂質・炭水化物などのバランスよりも、食物繊維の多さや植物の種類の多さのほうが、眠りの細かなようすに効きやすいのかもしれない」と考えられます。

「いつ、どれくらい食べたか」という時間と量の要素も、おもしろい結果を見せました。

夕食のカロリーが多い日には、夕食を軽めにした日と比べて、眠っている時間が平均で8分ほど長くなっていました。

その代わりに、夜の心臓のドキドキは1分あたり1回ぶんくらい速くなっていました。

一方、夕食を早めに済ませた日には、夕食が遅めの日と比べて、眠っている時間が平均で12分ほど短くなっていましたが、夜の心臓のドキドキは1分あたり1回ぶんくらいゆっくりになっていました。

このことから、夕食のカロリーが多く、時間が遅めの日では、睡眠時間がやや長くなる一方で心拍数は高めになり、夕食を早めに軽く済ませた日では、睡眠時間はやや短くても心拍数は低めになる、という「眠れる時間」と「心臓の休まり方」の綱引きのような関係がうかがえます。

問題は、なぜこのようなことが起こるのか、という点です。

なぜ食物繊維や夕飯のタイミングや量が睡眠と関係するのか?

なぜ食物繊維や夕飯のタイミングや量が睡眠と関係するのか?
なぜ食物繊維や夕飯のタイミングや量が睡眠と関係するのか? / Credit:Canva

なぜ食物繊維や食べる量、食べる時間が、睡眠や心臓の鼓動にまで関係してきそうなのでしょうか?

まず注目したいのが、腸の中にいる細菌たちの存在です。

食物繊維は、人間の消化酵素ではほとんど分解できませんが、腸内細菌にとっては大事なエサになります。

食物繊維が多い食事をすると、腸内細菌はそれを発酵させて「短鎖脂肪酸」と呼ばれる小さな物質を作ると考えられています。

短鎖脂肪酸そのものは聞き慣れない言葉ですが、イメージとしては「体の中の小さな炎症をおさえたり、自律神経のバランスを『休む側』に少し傾けたりするメッセージ」のようなものだと考えられています。

自律神経には「アクセル」と「ブレーキ」のような二つのはたらきがあります。

アクセル側は心臓を速く打たせたり、筋肉を動かす準備をしたりするはたらきで、ブレーキ側は心臓をゆっくりにしたり、消化や修復を進めたりするはたらきです。

食物繊維が多い日には、短鎖脂肪酸などを通じて、このブレーキ側のはたらきがほんの少し強まり、その結果として夜の心拍がわずかにゆっくりになり、深い眠りや夢を見る眠りに回せる時間が数分ほど増えている可能性も考えられます。

もちろん、「短鎖脂肪酸がこれだけ増えたから必ずこうなった」というところまで、この研究だけで証明できているわけではありません。

しかし、腸内細菌や短鎖脂肪酸が睡眠や心臓のはたらきに関わる可能性を示した他の研究と合わせると、一つの筋の通った説明候補にはなります。

「どれくらいの種類の植物を食べたか」という指標についても、似たような考え方ができます。

豆、野菜、果物、穀物、ナッツなど、いろいろな植物性食品を少しずつ食べた日には、寝つきが数十秒ほど早くなり、夜の心臓のドキドキもわずかにおだやかになる傾向がありました。

植物の種類が多い日ほど、ビタミンやミネラル、ポリフェノールといった、体を支える成分が少しずつバランスよく入っている可能性があります。

こうした成分は、体の中での化学反応をスムーズにし、体の「さびつき」や炎症をおさえる、いわば“応援グッズ”のような役割を持っています。

その応援グッズがうまく配られることで、ストレスへの耐性や自律神経のブレーキ側のはたらきが、わずかに良い方向へ整えられ、その結果として「寝つきが少し早くなり、夜の心拍も少し落ち着く」という形で表れているのかもしれません。

では、「いつ、どれくらい食べたか」という時間と量の違いはどう考えればよいでしょうか。

夕食をたっぷり、しかも遅い時間に食べると、胃や腸、肝臓などは寝ているあいだも「消化」という大仕事を続けなければなりません。

体にとっては「まだやることが残っている」状態なので、「もう少し長く寝て回復したい」という信号が出やすくなる一方、その仕事を支えるために心臓はやや速めに動き続ける必要があります。

これが「睡眠時間は少し長くなるが、心臓のドキドキはやや速くなる」という結果につながっている可能性があります。

逆に、夕食を早めに軽く済ませた場合、夜中まで続くような消化の仕事は少なくなります。

体は「消化の仕事は早めに片づいたから、心臓はゆっくりしていてよい」と判断しやすくなり、心拍は落ち着きやすくなる一方で、エネルギーの余裕が少ないぶん、睡眠時間は少し短くなることがあってもおかしくありません。

ただ今回の研究は食物繊維や夕食を食べる時間について、脳回路レベルで調べられたものではなく、相関関係を丁寧に調べ上げた末の結果となっています。

それでも、食物繊維や夕飯を食べる時間を睡眠の質や心拍数などと結び付けたのは大きな成果と言えるでしょう。

食物繊維や植物性食品を増やすことは、もともと腸や心臓の健康のためにも良いとされることが多い習慣であり、多くの人にとってリスクの小さい工夫です。

今回の結果は、そうした習慣に「もしかしたら睡眠にも少し良いかもしれない」という意味を付け足してくれるものだと言えます。

もしかしたら未来の世界では、今日の食事記録と睡眠のデータがアプリで繋がれ、「今夜はもう少し繊維と植物を増やしてみませんか」「今夜は夕食を少し早めにしてみませんか」といった提案してくれるかもしれません。

元論文

Day-to-day dietary variation shapes overnight sleep physiology: a target-trial emulation in 4.8 thousand person-nights
https://doi.org/10.64898/2026.02.17.26346471

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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