1. トップ
  2. 食物繊維がロンジェビティの鍵を握る理由を専門家が解説

食物繊維がロンジェビティの鍵を握る理由を専門家が解説

  • 2026.7.27
Getty Images

意識をしてもしなくても、“ロンジェビティ(健康長寿)”というキーワードは今、私たちの生活の至るところにあふれている。愛用するスキンケアのボトルから通い詰めているジム、さらには愛犬のドッグフードのパッケージにまで。ここからは、現代におけるロンジェビティの真義とより豊かに生きるためのメソッドを紐解いていく。

地味とされていた食物繊維がトレンドの主役に

正直なところ、食物繊維は華やかさとは縁遠い存在だ。思い浮かぶのは母親が愛飲していた食物繊維サプリや、父親が食べていたシリアルのレーズンブランあたりだろう(確かに効果はあるがどこか退屈。まるで典型的な結婚生活のように)。

Getty Images

ところが今、この地味な栄養素の世界に意外なスターが現れた。“ファイバー ダディ”の名でSNSを賑わすインフルエンサーだ。セレクトショップ「キス」の最新ポップアップの行列に並んでいそうな今どきのルックスながら、その正体は、ベビーフードのようなパウチで8グラムの食物繊維をとれるブランド「リキッド サラダ」の創設者。かつて「あなたは大腸がんなんかに負けるには魅力的すぎる」と宣言する動画を投稿し、話題を呼んだ人物だ。

ティックトッカーたちの間では“ファイバーマキシング”が流行中。これは外見を極限まで磨き上げる自分磨き“ルックスマキシング”のもじりだが、こちらが磨くのは見た目ではなく腸内環境。医師の推奨量である1日25〜35グラム以上の食物繊維摂取を目指すムーブメントだ。

Getty Images

セレブリティも例外ではない。2025年のエミー賞レッドカーペットでジャスティン・ルーペは、ドラマ『こんなのみんなイヤ!』で共演したクリステン・ベルが、「誰も見たことがないレベルでバイオハックに没頭している」と告白。ベルの美しさの秘訣のひとつが、炭水化物の多い食事の前に食物繊維をとることだと明かした。

なぜ私たちは食物繊維を忘れていたのか

食物繊維とは、炭水化物のうち消化されずに残る成分のこと。通常、炭水化物はブドウ糖に分解されてエネルギー源となるが、食物繊維だけはそのままの形で消化器官を通り抜けていく。この性質が腸内環境を整え、便通を規則正しく保ってくれるのだ。(ヨーグルトブランドの「アクティビア」以上に健康的と言ったら、広告塔のジェイミー・リー・カーティスに叱られそうだが)。

食物繊維には水溶性と不溶性の2種類がある。オーツブランや大麦、ナッツ、種子類、豆類、レンズ豆、エンドウ豆、一部のフルーツや野菜、そしてサイリウム(オオバコ)などに含まれる水溶性食物繊維は、水に溶けてゲル状になり消化を緩やかにする。一方、小麦のふすまや一部の野菜、全粒穀物に含まれる不溶性食物繊維は、便のかさを増す働きを持つ。多くの食品は両方の繊維を含んでおり、どちらが豊富かで分類される。健やかな消化のためにはこの両方が必要なのだ。

数字が語る食物繊維の底力

食物繊維の実力は腸だけにとどまらない。ロンジェビティの最も頼れる味方になるかもしれないのだ。「毎日の食物繊維の摂取量を10グラム増やすごとに、あらゆる原因による死亡リスクが10%低下します」と語るのは、バイオテック企業「One.Bio」の共同創設者、マット・アミクッチ博士。スナック菓子や菓子パンに代表される超加工食品の製造過程で失われてしまう食物繊維を、現代の食生活に取り戻す研究に取り組む人物だ。

アミクッチ博士の主張は壮大に聞こえるし、食物繊維を多くとったからといって車にひかれる確率が下がるわけではない。だが2025年に『American Journal of Epidemiology』誌に掲載された解析では、この発言が真実であることを裏付けている。さらに2019年の『The Lancet』誌の研究では、1日25〜29グラムの食物繊維を定期的にとる人は体重が軽く、血圧も血糖値もコレステロール値も低いことが判明した。

「食物繊維は、コレステロールを洗い流すスクラブ剤のような働きをします」と語るのは「NYUランゴーン ヘルス」の消化器内科医、リサ・ガンジュ医師。「消化管内の余分なコレステロールと結びつき、その値を下げることで心血管疾患のリスクを減らしてくれるのです」。これは心臓病や脳卒中などの予防につながる。さらに食物繊維には血糖値を下げ、急上昇を抑える効果もある。

ガンジュ医師が引き合いに出すのは、オレンジジュースを飲むことと、丸ごとのオレンジを食べることの違いだ。丸ごとのオレンジに含まれる食物繊維が、血糖値の跳ね上がりを緩やかにしてくれる。「食物繊維のおかげで果糖からブドウ糖への変換が少しゆっくりになり、結果として糖尿病のリスクを下げるのです」

Getty Images

現代の多くの人が、推奨量を大きく下回る1日わずか10〜15グラムの食物繊維しかとれていないのは、決して偶然ではない。原因は超加工食品だ。アメリカ疾病予防管理センターの2021年から2023年の調査によれば、大人の多くが1日の総摂取カロリーの50%以上を超加工食品からとっている。超加工食品は栄養価が低く、高カロリーで塩分が多く、食物繊維が著しく少ないことで知られる。

全身に及ぶ食物繊維の恩恵

食物繊維はがん予防、とりわけ若い世代のアメリカ人の間で増加している大腸がんの予防にも重要な役割を果たす。実際、新たな研究では、大腸がんと診断される人の5人に1人が55歳未満であり、大腸がんは今や若年層におけるがん関連死の主な原因となっている(今年初め、ジェームズ・ヴァン・ダー・ビークがわずか48歳でこの病により亡くなったことは記憶に新しい)。

だが食物繊維を増やすことで、この状況は変えられるかもしれない。「食物繊維は大腸で発酵し、短鎖脂肪酸と呼ばれる化合物を作り出します」と説明するのは「Allara Health」の管理栄養士、イーファ・オフラハティ氏。「短鎖脂肪酸は大腸の細胞の燃料として働き、大腸がんに対して非常に高い保護効果を発揮するのです」。

乳がん予防への貢献も期待されている。ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院の研究では、食物繊維を多くとる女性は、そうでない女性に比べて乳がんの発症率が約10%低いことが確認された。研究者たちは、食物繊維がエストロゲン値を下げ、血糖値を安定させるからではないかと推測している。この2つはどちらも、乳がんとの関連が指摘されている要因だ。

Getty Images

ここからは、美容の話をしよう。食物繊維は、肌を健やかに保つうえでも大いに役立つのだ。2024年の『European Journal of Nutrition』誌の研究では、食物繊維を多くとることでアトピー性皮膚炎の発症リスクが下がる可能性が示された。2023年の『Journal of Investigative Dermatology』誌の研究では、傷の治癒や傷跡の形成を改善することも分かっている。「肌と消化器官は、とても密接に連携して働いています。炎症が起きたときに体内で増える信号物質の多くを、腸と肌は共有しているからです。だから腸内に炎症があれば、それは肌にも現れます。食物繊維を多くとればマイクロバイオーム(細菌叢)のバランスが整い、理論上は肌の炎症の一部が和らぐ可能性があるのです」

今日から始めるファイバーマキシング

幸い、毎日の食物繊維摂取はかつてないほど簡単になっている。もちろん最良の供給源はフルーツ、野菜、全粒穀物だが、2025年のプロテインブームさながらに、食生活へ食物繊維を取り入れる新しい方法も続々と登場している。「One.Bio」は食物繊維たっぷりのチョコレートシェイクを開発。梅の実を発酵させた「Share Original」のスナックは、腸を整える効果があるとSNSで一気に人気に火がついた。コートニー・カーダシアンのブランド「Lemme」からは食物繊維サプリメントが登場し、「ジェニズアイスクリーム」で知られるジェニ・ブリトンは新ブランド「Floura」で、スイーツの代わりに食物繊維バーを作り始めた。

Getty Images

これらの一部は厳密には加工食品であり、自然な食材からとる食物繊維と同じメリットがあるわけではない。それでも目標量に届かず悩む人にとっては、頼れるつなぎ役になってくれる。インフルエンサーたちも、チアシードを何にでも加えたり、ラズベリーのような食物繊維豊富なフルーツを山ほど食べたり、焼き菓子に食物繊維パウダーを混ぜ込んだりと、クリエイティブな方法を編み出している。

慢性的な消化器系の不調を抱える筆者自身、ファイバーマキシングというネーミングが生まれる前から食物繊維をとることを実践してきた。毎朝、バナナを潰して混ぜたチアプディングを食べたあと、大さじ2杯のサイリウムハスクをグラス1杯の水に溶かし、できるだけ早く飲み干す(なぜならひどくまずいから)。そして間違いなく、この習慣は筆者の人生をより良いものに変えてくれた。

何ごともとりすぎには要注意

とはいえ、食物繊維にも“とりすぎ”は存在する。ファイバーマキシングを実践するにしても、慎重さを忘れてはいけない。「食物繊維のとりすぎは膨満感やガス、腹部の痙攣といった不調を引き起こすこともあります」とガンジュ医師は指摘する。「かさを増すという性質上、排便の回数が増えすぎたり、下痢になったりすることもあるのです」

だからこそ摂取量を増やす際は、ゆっくり始めることをオフラハティ氏とガンジュ医師は口を揃えてすすめる。ゼロからいきなり35グラムを目指すのではなく、野菜や全粒穀物といった食物繊維豊富な食品を数皿分加えることから始め、そこから少しずつ量を増やしていくのが正解だ。

ロンジェビティは、ペプチド注射や幹細胞治療、高気圧酸素カプセルといった最先端の施術と同義になりつつある。だが本当は、もっとシンプルなものかもしれない。それはビーンズサラダとチアシードプディングから、始まるのかもしれないのだ。

Realization : Katie Berohn Translation & Text : Nathalie Lima KONISHI

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ