1. トップ
  2. 顔面麻痺の症状に苦しみ「もう表に出られないかも」と悩んだ日々。病を経て思った「大事にすべきこと」【寺島しのぶさんのターニングポイント#2】

顔面麻痺の症状に苦しみ「もう表に出られないかも」と悩んだ日々。病を経て思った「大事にすべきこと」【寺島しのぶさんのターニングポイント#2】

  • 2026.2.6

顔面麻痺の症状に苦しみ「もう表に出られないかも」と悩んだ日々。病を経て思った「大事にすべきこと」【寺島しのぶさんのターニングポイント#2】

俳優として結果を出す一方、私生活では妻となり母にもなった寺島しのぶさん。子どもをもったことで、それまで知らなかった世界にもいろいろ触れることができたという寺島さんに、お子さんへの思い、これから目指すことなどを聞きました。

母となったことで出会えた未知の世界

仕事の上ではいくつかの大きなターニングポイントを迎え、そのたびに大きな飛躍を遂げた寺島しのぶさん。私生活では、07年にフランス人のアートディレクター、ローラン・グナシアさんと結婚し、12年に長男の眞秀(まほろ)くんを出産したことがとても大きなターニングポイントになったという。

「だって、眞秀がいなければ、知らないで死んでしまうこともいっぱいありますからね。彼のせいで(笑)謝らなきゃいけないこともあるし、すごくお金もかかるし(笑)、でも、彼のおかげで身につくこともあるし、得るものは大きいと思います」

眞秀くんは現在中学1年生。17年「團菊祭五月大歌舞伎」の『魚屋宗五郎』にて、酒屋丁稚の与吉役を本名・寺嶋眞秀で初お目見得。23年「團菊祭五月大歌舞伎」の『音菊眞秀若武者(おとにきくまことのわかむしゃ)』にて、新設された歌舞伎の名跡・尾上眞秀を名乗って初舞台を踏み、歌舞伎役者としてのキャリアをスタートさせた。

寺島さんも、母として、眞秀くんの舞台やお稽古につき添わなくてはいけない場面も増えた。自身の仕事も大変なところへ、母としての役目も大きくなってきている。

「いやもう本当に、体が二つほしいなと思っています」

眞秀くん自身の生活も、成長とともに忙しくなってきているから大変だ。

「お芝居が好きでいいねと言っていただけるのはありがたいんですけど、やっぱり中学生になると、勉強も大変になってきて、中間テスト、期末テストと追われる合間に宿題もあって、もうずっと勉強させられている感じなんですよ。これぞ義務教育なんだなとは思いますけど、かといって勉強だけっていうのもなんだか違う気がして」

眞秀くんの活躍は歌舞伎だけに留まらない。23年のNHK大河ドラマ『どうする家康』で徳川家康の幼少期を演じたり、昨年11月公開の映画『港のひかり』では、盲目の少年を演じて高い評価を得たりと、映像の世界でも活躍中だ。また昨年12月から今年1月にかけて行われたKバレエ・オプトの最新作『踊る。遠野物語』にも出演。Kバレエのトップダンサーたちや麿赤兒(まろあかじ)さんとの共演を果たした。

「勉強も頑張れ。表現することもやりたいんだったら、両方頑張れ。で、部活もやりたいって言ってるから、じゃあ部活も頑張れ。とにかく体は一個しかないから、やりたいんだったら頑張るしかないよねって話をしていますね」

しかし、そう言うお母さん自身が、ギリギリ頑張っている姿を見ているだけに、その言葉には説得力がありそうだ。眞秀くんも、そんなお母さんを誇らしく思っているのではないだろうか。

「どうでしょうねぇ。でもこの間、歌舞伎に出演したときは観に来てくれて、その後、優しかったし(笑)。わかってくれているのかもしれないですね。そういうのを見ていると、私が仕事を辞めて、彼のサポートだけをするというのはあり得ないんだろうなとは思います。彼は、私が表で立っていることが好き。見るのが好きだし、そういう私だから助言を聞いてくれるというのもある気がしますね。彼の台詞を覚えたり、振りつけを覚えたりして、同じ立場で動いてみて、『ああ、なるほどね。これは確かに大変だね』などと言いつつ、一緒に考えたりもするので、それは私にとっても豊かな学びの時間になります。頭ごなしに言っても聞かないところを、『やっぱりこれ難しいわ。眞秀、よくやってるね』と言ったりすると、嬉しそうにするので、それは大事なことだなと思います」

眞秀くん、将来は歌舞伎俳優になりたいそうだが、他にもまだいろいろ夢があるようだ。

「今はダンスも楽しくやっているし、映画も楽しんで取り組んでいるし、だから決めなくていいんだろうと思うんです。以前、(坂東)玉三郎さんのお部屋に眞秀と行ったときに、『眞秀はアーティストだろう?』と言ってくださったんです。それをずっと眞秀はお守りのような言葉として持っていて、以来、アーティストという自覚を持っているみたいですね。今、眞秀のまわりには、玉三郎のお兄さんにしても、うちの父にしても、そういう言葉をかけてくださる方がいるので、それを今のうちに心に留めておいてほしいと思います」

「技術が備わったときに、思い切り言え」

母である寺島さん自身も、今も新たな挑戦を続けている。最近では、23年の『文七元結物語』と昨年の『芝浜革財布』の2度、歌舞伎に出演したのである。女性が歌舞伎座の舞台を踏むということで大いに話題になった。

「もちろんいろんな意見をいただきました。SNSとかを見ると、『もう出てくるな!』みたいなことを言っている人もたくさんいる。でも、それは知ったこっちゃない。こういう話があってどうですかと持ってきてくださる方がいる限り、私はやろうと思っていますし、もし必要ないとなれば、お声もかからないでしょうから、そこは流れに任せて、私は絶対に出続けるとも出ないとも決めていないです」

2月の新橋演舞場公演『お光とお紺〜伊勢音頭 恋の絵双紙〜』で幼なじみ役として共演する藤山直美さんは、寺島さんのことを「ブレない人」と評したが、そのとおりだ。まっすぐ自身の信念があって、気負うことなくしなやかにそれに従う生き方は清々しくさえある。

「そういえば、蜷川(幸雄)さんに昔、言われました。『お前は本当に馬鹿正直過ぎる。今、何の技術もないくせに、そんな生意気なことをバンバンバンバン言ったら人に嫌われるだけだ。とりあえず今は黙っておいて、一生懸命腕を磨け。腕を磨いて磨いて、みんながあなたを理解してくれたときにそれを言ったら、それは有効だから。今は口に出さずに思っているだけで、いつか技術が備わってきたら思い切り言えばいい』と。何を見抜いてくださっていたのかわからないですけどね(笑)」

蜷川さん、厳しい言葉やものを投げるだけではなかったのだ。ちゃんと若い寺島さんの言葉の端々に真実を見て、それが真実であるがゆえに、世間には叩かれてしまうこともわかっていたのだ。

そんなブレない生き方を貫く寺島さんの今後がますます楽しみだが、昨年1月にラムゼイ・ハント症候群という病気に罹患し、顔面が麻痺するという症状にも見舞われた。

「1月に入院して、これってもう表に出ちゃいけない顔になるのかなとか、ずっといろんなことを考えていましたね。じゃあ裏方だとしたら、何がいいか。物書きになるか、監督もいいななど、真剣に考えていました」

幸い、症状は快癒し、4月の舞台には間に合った。

「でも、今までは気力で乗り切ってきたけれど、もういい加減そういうことはやめようと思って。体を大事にすること、無理と思ったときは一旦、絶対に休むこと。それをこの1年間徹底してやってきたら、少し違ってきましたね。もうちょっと楽に生きられたらいいなと思いますけど、そうはいかないでしょうね、きっと。そうじゃないほうをどうしても選びそう(笑)。ただ、書いたり撮ったりするのはやってみたいと思います。それにも、健康第一でいかないといけないですからね。まずは、そこを大事にしていきます」

プロフィール
寺島しのぶさん 俳優

てらじま・しのぶ⚫1972年京都府生まれ、東京都出身。
父は七代目尾上菊五郎さん、母は俳優の富司純子さん。
92年に文学座に入団。早くから頭角を現し、96年に退団後も舞台、映画、テレビドラマで演技派として活躍。
2003年に映画『赤目四中八瀧(あかめしじゅうやたき)心中未遂』『ヴァイブレータ』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、ブルーリボン主演女優賞をはじめ、日本国内外で10以上の賞を受賞。
10年に映画『キャタピラー』でベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)受賞。
22年『文七元結物語』、25年『芝浜革財布』で歌舞伎座の舞台に立ち話題を呼ぶ。
私生活では07年にフランス人アートディレクターのローラン・グナシアさんと結婚、12年に長男・尾上眞秀くんを出産。

【Information】『お光とお紺〜伊勢音頭 恋の絵双紙〜』

紀州熊野の寺谷村は年貢のため、娘たちが遊女に売られていく貧しい村である。とびきりの美人である16歳のウメ(寺島しのぶ)を人買いが古市へ連れて行こうとすると、ウメとは姉妹のように育った庄屋の娘・トシ(藤山直美)が「ウメが行くなら私も行くで」と言って聞かない。根負けした人買いは、二人を連れて行くことに。伊勢の古市の油屋へ売られたウメは遊女・お光となり、売れっ妓となる。下働きとして働き始めたトシだが、お光の旦那になるはずだったお大尽がトシを目に留め、遊女・お紺となる。しかし、ともに遊女となった二人の間には溝ができ始めてしまう。やがて二人の前に討幕運動に身を投じる青年・福岡貢(葛山信吾)が現れ、お光は貢のためお紺にある頼みごとをする。それぞれの思惑を乗せた伊勢音頭が流れる中、大立ち廻りが始まるが……。

作/小幡欣治 脚色・演出/浅香哲哉
出演/藤山直美、葛山信吾、大津嶺子、澤村宗之助、瀬川菊之丞、いま寛大、田山涼成、寺島しのぶ

【日程】2026年2月5日(木)~24日(火)新橋演舞場
【料金】1等席 13,500円/2等席 8,500円/3階A席 5,000円/3階B席 3,500円
桟敷席/14,500円

チケットホン松竹☎︎0570-000-489、もしくは03-6745-0888(10:00〜17:00)
チケットWeb松竹(24時間受付)https:www1.ticket-web-shochiku.com/t/

撮影/佐山裕子(主婦の友社)

元記事で読む
の記事をもっとみる