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ニセコから足を延ばして余市へ。ワインと食を堪能できる4軒

  • 2026.9.12
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ニセコに滞在するなら、余市まで足を延ばしたい。日本を代表するワイン産地のひとつとなったこの町ですが、訪問できるワイナリーやショップは限られています。だからこそ頼りになるのが、生産者と繋がりの深い町の店。余市のワインを土地の食とともに味わえる、いま訪ねたい4軒「Lift Up 余市」「鮨 三尺」「かくと徳島屋」「キヘン」をご紹介します。

1. 【Lift Up 余市】海、山、畑から組み立てる余市のガストロノミー

CEDRIC DIRADOURIAN

「Lift Up 余市」は、フレンチをベースに、余市の海、山、畑の恵みを自在に取り込むガストロノミック・オーベルジュ。ディナーだけでも利用できます。料理人の白鳥翔大さんが、余市ワインを料理とともに伝え、産地の発展にも寄与してきた「余市SAGRA」の場所を引き継ぎ、2026年5月にスタート。「余市SAGRA」から受け継いだバックヴィンテージを含む余市・仁木のワインと、土地の食材から組み立てる9品のコースとのペアリングを楽しめます。

左から「ニシンの押し寿司」、「桃と真フグの冷製スープ」 CEDRIC DIRADOURIAN

「ニシンの押し寿司」は余市の食文化を意識した一品。余市の米をバラの花を漬け込んだ酢で酢飯にし、自家畑のブルーベリーや刻んだハーブを合わせます。ニシンには曽我貴彦さんの庭の梅で仕込んだ醤油を塗り、クマザサで包んで箱形に。季節ごとに違うおいしさがある、コースの定番です。ガスパチョをベースにしたスープには、魚介や庭のコリアンダーの花など余市の素材がたっぷり。

左から じき「環 meguru 2023」、ドメーヌ・モン「Dom Gris 2022」、ランセッカ「KOYACHI 2024 Passetoutgrain」、YOKA WINERY「Chardonnay 2024」、ドメーヌ・タカヒコ「Yoichi-Nobori Nakai Blanc 2020」、同「Yoichi-Nobori O-Lie 2021」、ロウブロウクラフト「Roadrunner TABIJI 2025」 CEDRIC DIRADOURIAN

9皿に対し、ワインペアリングは7アイテム。冷製スープには、ロウブロウクラフトが食用ブドウから造る低アルコールのスパークリングを。軽やかな果実味と八角や紅茶を思わせるスパイス感が、夏野菜の青さと調和します。押し寿司には、ニシンの脂や磯の風味を受け止める、ドメーヌ・タカヒコのケルナーをペアリング。

CEDRIC DIRADOURIAN

白鳥さんは「L'Effervescence」で約7年を過ごし、サステナビリティへの関心から、コペンハーゲンの「relae」、フェロー諸島の「KOKS」へ。帰国して東京から札幌へ移ります。余市に惹かれたのは「食材に旅をさせなくてすむから」。漁港があり、畑や果樹園、山や森も近い。地元のジビエは使いますが、肉料理を無理にコースへ組み込むことはしません。「余市を美食の町に」。海、山、畑と、そこに携わる人たちとの関係から生まれる料理を、余市のワインとともに味わう。それが白鳥さんの描く、この土地の食卓です。

問い合わせ先
「Lift Up 余市」
予算/ディナーコース¥14,000、ワインペアリング¥14,000
所在地/北海道余市郡余市町登町987-2
TEL/0135-22-2800
URL/www.liftup-yoichi.com

2. 【鮨 三尺】水揚げの地で握る、余市の鮨

CEDRIC DIRADOURIAN

2026年2月、谷口祥吾さんが余市にオープンした「鮨 三尺」。店名は、カウンターを挟んだ客と職人との距離、三尺(約90cm)に由来します。近すぎず遠すぎない、その距離感を大切にした7席ほどの小さな店で、余市の魚介に江戸前の仕事を施す鮨を、余市・仁木のワインや蘭越「森ノ醸造所」のSparkling Sakeとともに楽しめます。

おまかせコースのなかの一例<strong></strong> CEDRIC DIRADOURIAN

谷口さんが余市に惚れ込んだ大きな理由が、魚介の質。東京で鮨職人をしていた頃から、余市のウニ、天上ブリ、あん肝、甘エビやボタンエビを扱い、漁港のある町で店を開くなら余市へ、と考えるようになりました。この日用意されたのは、そんな思い入れの深い3品。身がしっかりとし、甘みと旨みの濃いウニは、軍艦にはせず、シャリにのせて握りに。ほどよく脂ののったブリは柵のまま漬けることで、上品な甘みを引き出します。自家製のあん肝は酒や塩で丁寧に下処理をして、ふっくらと蒸し上げます。きゅうりの奈良漬けを添えるのが三尺流。「奈良漬けってあん肝に合うんですよ」と谷口さん。

左から 蘭越町・森ノ醸造所のSparkling Sake「UPAS(ウパシ) 2025」「APE(アペ)2025」、ドメーヌ・タカヒコ「Nana-Tsu-Mori 2024 Rosé de Noir」、ドメーヌ・ユイ「A4 2024 Chardonnay」「A 2024 Blanc de Noirs」 CEDRIC DIRADOURIAN

ワインはボトルが基本で、中には希少な余市ワインも揃います。人気のドメーヌ・ユイは、凝縮感と酸を湛えたシャルドネやピノ・ノワールのほか、ピノ・ノワールを白ワインに仕立てた希少なブラン・ド・ノワールも。ドメーヌ・タカヒコのロゼ・ド・ノワールは、自社畑「ナナツモリ」から生まれるピノ・ノワールのロゼで、2024年が初リリースとなる、話題のキュヴェ。さらに蘭越町・森ノ醸造所のSparkling Sakeも。「これまでの甘いスパークリング日本酒とは違って、キレがあって爽やか。さまざまなネタの鮨に合います」と谷口さん。鮨には日本酒、と決めず、料理を通して楽しめる酒を選んでいます。

CEDRIC DIRADOURIAN

谷口さんは札幌出身。東京の鮨店で研鑽を積み、独立の地に余市を選びました。「一人で握りからサービスまで担い、お客さん一人ひとりに目を配れる店にしたい」。そのため、席数は7席のみ。近いグレーの木造の建物は、暖簾の先に長いアプローチを設け、その奥に白木のカウンター。冬の冷気を遮りながら、店内へと気持ちを切り替える設計です。水揚げの地で握られる鮨を、その町のワインとともに。三尺という親密な距離に込められた谷口さんのもてなしまで、じっくり味わいたい1軒です。

問い合わせ先
「鮨 三尺(すし さんじゃく)」
予算/昼のおまかせ¥8,800、夜のおまかせ¥15,400
所在地/北海道余市郡余市町黒川町2-150-1
TEL/0135-48-7463
URL/www.tablecheck.com/ja/sushi-sanjaku

3. 【かくと徳島屋】造り手が後押しした、100年の老舗の「Vin de 時候膳」

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1924年、余市駅前の料理旅館として創業し、2024年に100周年を迎えた「かくと徳島屋」。現在切り盛りするのは、4代目の當宮弘晃さんと妻の益美さん。ワイン好きなら目当てにしたいのが、季節の和食を余市ワインと楽しむ「Vin de 時候膳(ヴァン・ド・じこうぜん)」です。

季節代わりの「Vin de 時候膳」 CEDRIC DIRADOURIAN

弘晃さんは京都の「本家たん熊」で修業し、京料理の技を身につけました。「Vin de 時候膳」でも、料理の軸にあるのは、季節の魚介や野菜を使い、出汁をきかせた日本料理です。前菜からお造り、蒸し物に焼き物、おつゆ代わりの土瓶蒸しに炊き込みごはん、デザートまで9品が基本。この日は、塩水ウニと自家製胡麻豆腐、ブリ、カワハギ、タコのお造り、とろろ昆布をのせた焼き牡蠣、ブリの山わさび焼き、イカの揚げ出し、ふぐの土瓶蒸しなどが並びました。炊き込みご飯のごぼうはささがきではなく賽の目に切り、歯応えと香りを残します。デザートは余市産サクランボのコンポートです。

コース内に含まれるペアリングのラインナップ。左から ドメーヌ・モン「Dom Gris 2019」、ドメーヌ・アツシ スズキ「Acchi Blanc 2022」、ドメーヌ・タカヒコ「Nana-Tsu-Mori Pinot Noir 2022」 CEDRIC DIRADOURIAN

「Vin de 時候膳」では、その時季の料理に合わせて選ばれた余市ワイン3種を各45mlずつ楽しめます。一例として、ドメーヌ・モン、ドメーヌ・アツシ スズキ、ドメーヌ・タカヒコのそれぞれフラッグシップの3本など。いずれも日本ワインファンなら垂涎のアイテムです。料理もワインも季節や仕入れによって替わるため、訪れる時々の組み合わせに出合えるのも楽しみ。さらに余市を中心としたワインをグラスでも豊富に揃え、飲み足りない人は追加でオーダーを。

この「Vin de 時候膳」が生まれた背景には、余市の造り手たちとの関係があります。コロナ禍、地元で余市ワインを飲める場所がまだ少なかった頃、曽我貴彦さんをはじめとした生産者たちの後押しを受けてスタートしました。余市のウニには「Dom Gris」、野菜や魚の料理には凝縮感にあふれる「Acchi Blanc」ごぼうを大きめに切って炊き込んだご飯や出汁の効いた土瓶蒸しにはドメーヌ・タカヒコの「Nana-Tsu-Mori」がよく合います。

益美さんがワインを「仕入れる」のではなく「預かっている」と話すのは、生産者から託された大切な一本を、できるだけよい状態でゲストへ届けたいから。遠方から訪れる人にとって、そのワインに再び出合えるとは限りません。だからこそ、預かった一本を、その時いちばんおいしい状態で味わって欲しい。その思いが、造り手との信頼関係と、この店のもてなしに繋がっています。

問い合わせ先
「かくと徳島屋」
予算/「Vin de 時候膳」ほか。完全予約制、内容・料金は予約時に要確認
所在地/北海道余市郡余市町黒川町8-12
TEL/0135-22-6369
URL/kakutoryokan.wixsite.com

4. 【キヘン】余市めぐりの最後に。グラスで楽しむワインバー

CEDRIC DIRADOURIAN

JR余市駅のすぐそばにある「キヘン」は、ワイナリー「MARUMEGANE」を営む大野崇さんが2025年に開いたワインバー&ショップ。グラスワインは通常20種類ほどで、余市の造り手を中心に、北海道や日本各地、海外のワインまで幅広く揃えます。ワイナリーを一軒ずつ巡ることが難しい余市で、複数の生産者の個性をグラスで味わいながら、余市ワインの多様さに触れられる一軒です。

左から ドメーヌ・アツシスズキ「KUMA Kids 2024」、豊丘西尾ヴィンヤード「LA TRADITION Rosé 2024」、ドメーヌ・イチ「ICHI-P 2023」、セニュロン「Pinot Noir 2024」、ドメーヌ・タカヒコ「Yoichi-Nobori O-Lie 2023」 CEDRIC DIRADOURIAN

ワインセラーには、余市を代表する造り手から新進の生産者までがずらり。ドメーヌ・アツシ スズキのオレンジワインや、澱を利用して仕立てたドメーヌ・タカヒコの「Yoichi-Nobori O-Lie 2023」といった希少なワインもグラスで。豊丘西尾ヴィンヤードやドメーヌ ICHIなど、異なる畑、異なる造り手のワインを横断して飲めるからこそ、一口に「余市ワイン」と括れないスタイルの広がりが見えてきます。さらに北海道、日本各地、海外へと飲み進められるのも「キヘン」ならでは。

CEDRIC DIRADOURIAN

キヘンはワインバーであると同時に、ショップでもあります。カウンターの脇にはボトルの棚が並び、店で飲んで気に入ったワインを、そのまま購入できるのもうれしいところ。

CEDRIC DIRADOURIAN

大野さんは東京の酒販店、ナチュラルワインの輸入商社を経てフランスへ渡り、栽培と醸造を経験。2019年に北海道へ移住し、現在は余市町美園町でワイナリー「MARUMEGANE」を営んでいます。酒販、輸入、生産と異なる立場からワインに関わってきた大野さんが、扱うワインを選ぶうえで大切にしているのは、造り手との関係。誠実に向き合える相手か、自分が付き合いたいと思える人か。生産量が少なく、仕入れが安定しない年があっても、信頼できる造り手とは長く付き合っていきたいといいます。

余市のワインが本当の意味で地域の特産品になるには、地元の人に親しんでもらうことが不可欠」。そんな思いから、キヘンを町民が余市ワインに親しめる場にし、町内にはワインも楽しめるスナックを開くなど、地域にワイン文化を根付かせるための取り組みを続けています。今後はワイナリーでの受け入れをはじめ、新たな構想も進行中。ブドウを育ててワインを造り、駅前や町なかで飲み手との接点をつくる大野さん。キヘンの角打ちで一杯を楽しむことが、この土地とワインを知る入口になりそうです。

問い合わせ先
「キヘン」
予算/グラスワイン¥800〜、余市のワインは¥1,000くらいから
所在地/北海道余市郡余市町黒川町8-37
TEL/090-8170-3430
URL/www.instagram.com/kihen_wine

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