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いつもの食材でワインに寄り添う、気取らない中華。広島〈むしやしない〉

  • 2026.9.16

世界遺産を擁し、国内外から多くの人が訪れる広島。旅人と、強い郷土愛で結ばれた地元民とが交ざり合い、街も酒場も活気に満ちている。年季の入った大衆酒場や無数のお好み焼きの合間で、ゆるやかに増えてきたのがナチュラルワインの酒場。今回は、〈むしやしない〉を訪ねた。

photo: Yoshiko Watanabe / text: Emi Fukushima

広島〈むしやしない〉おまかせ前菜盛り合わせ、外観
BRUTUS

最近ではすっかりお馴染みの組み合わせになった、中華とナチュラルワイン。広島の酒場においては、2026年で17年目を迎えた〈むしやしない〉が、その先駆けだ。

店があるのは、お好み焼き店や居酒屋、商業施設が軒を連ねる歓楽街・新天地のビルの3階。10席ほどのこぢんまりとした店内からは、2枚の大きな窓越しに、街の賑わいがよく見える。

広島〈むしやしない〉外観
〈むしやしない〉はこのビル3階、小さな階段を上がった先でひっそり営業中。1階のお好み焼きとのコントラストがユニークだ。

フードは、ザーサイに始まり、水餃子、麻婆豆腐、締めの中華そばに至るまで、定番を押さえた安心感のあるラインナップ。

席に着くとすぐ、店主の藤原丈士さんが「まずは一番うちらしさが出るメニューを」と、前菜の盛り合わせを、クリスチャン・ビネールが手がけた微発泡の白、「ボンビッシュ・ブル・リズリン」とともに差し出す。

東京を含む複数の中華料理店で修業を積んできた藤原さん。地元の広島にも「酒場として楽しめる中華の店があれば」との思いから、お酒とともにカジュアルに楽しむ創作中華の店とのコンセプトを得た。今でこそラインナップの中心はナチュラルワインだが、当初から豊富に扱っていたわけではなく、店を続ける中で少しずつ増えていったのだそう。

広島〈むしやしない〉激辛麻婆豆腐
激辛麻婆豆腐950円もここの看板メニュー。辛さは希望に応じて調整してもらえる。

「日本のブドウからワインを造るココ・ファーム・ワイナリーの話を耳にして、一度飲んでみたいと〈ハナワイン〉に行ったのが最初です。それ以前はほぼクラシックワインしか飲んだことがなかったんですが、店主の久保田さんと話しながら少しずつ学んでいきました」

頻繁に〈ハナワイン〉を訪れ、久保田さんの誘いで試飲会にも足を運ぶようになる中、クリスチャン・ビネールの白ワインとの出会いが、藤原さんとナチュラルワインとの距離を一層縮めることとなる。

「ゲヴュルツトラミネールが入ったキュヴェだったと思うんですが、個性はあるのに嫌みな感じがない。直感的に、これは料理と合わせるのにいいなと感じました」

中華料理は元来、油分が多くスパイスをふんだんに使うジャンル。「よく考えれば、柔らかく酸味のあるワインが合うのは当然。そのうえで、料理はすべて自分が作るのだから、僕がおいしいと感じる一杯を出せば自然と合うはずだなと。ナチュラルワインを店の軸に据えようと、心が決まりました」

広島〈むしやしない〉店主・藤原
店主の藤原さん。鍋一つ、お玉一つで料理ができる点に惹かれて中華のシェフに。

翻って、話を手元の一皿へ。この店を訪れるほとんどの客が注文するこの盛り合わせに並ぶのは、蒸し鶏の前菜や、スジガツオの黒酢ソースがけ、カボチャの豆豉(トウチ)炒め、モロッコインゲンのクミン炒めなど、中国の家庭料理にインスピレーションを得た惣菜9種。どれも優しい味わいだ。

趣向に富んでいるが、主な食材はどこでも手に入るような野菜が多い。「中華料理というと、フカヒレやアワビなど高級な食材に注目が集まりがちですが、現地の人たちが日常的に食べるのは野菜を中心とした料理。いつもの素材で作る気取らない中華を楽しんでほしいです」

“酒屋が良い街は、酒場も良い”。それを体現する広島の酒場文化は、ますます奥行きを増していきそうだ。

広島〈むしやしない〉おまかせ前菜盛り合わせ
藤原さんが「僕がしたいことを詰め込んでいる」というおまかせ前菜盛り合わせは、1人前1,300円から。陶芸家・藤川稔が手がけたマーブル模様の器に盛られ、目にも鮮やか。

Information

むしやしない

住所:広島県広島市中区新天地2-8 3F
TEL:082-236-7064
営:17時〜22時30分
休:不定休

グラスワイン800円〜、ボトル4,900円〜。日本酒も豊富。カウンターには「料理を待つ間に」と漫画(シリーズ1巻多め)や本が並んでいる。

※20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています。

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