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「今日は見るだけです、5分だけ見たら帰ります」アパレルの店内で、私が一歩下がって立っていた理由

  • 2026.9.3

扉のところで、先に言われた

アパレルの店で働き始めて二年目のころのことです。平日の夕方で、店内にはお客様が数人いるだけでした。

そこへ一人のお客様が入ってきました。私が「いらっしゃいませ」と声をかけると、その方はすぐにこちらを見て言いました。

「今日は見るだけです。5分だけ見たら帰ります」

少し強めの言い方だったので、あまり話しかけてほしくないのだろうと思いました。

「かしこまりました。ごゆっくりご覧ください」

そう答えて、私は少し離れた場所へ戻りました。

ところが、その方は5分を過ぎても帰りませんでした。同じラックの前を何度か行き来して、ある一着の前で立ち止まっては、少し離れて全体を眺めています。

手に取るわけでもなく、その場を離れるわけでもありません。

声をかけるべきか迷いました。最初に「見るだけ」と言われています。そこで近づけば、しつこいと思われるかもしれません。

私はすぐには声をかけず、一歩下がったところから様子を見ることにしました。

声をかけたのは、その一着についてだけ

しばらくしても同じ服を見ていたので、私は近づきすぎない位置から声をかけました。

「そちら、少しゆったりした形なんです。色違いもありますよ」

すると、その方は服から目を離して、少し困ったように笑いました。

「実は、こういう服を着てみたいんです。でも、自分に似合うのか分からなくて」

そこで初めて、普段はどんな色を着るのか、どんな場面で着たいのかを少しだけ聞きました。

話を聞いてみると、最初に見ていた服とは違う形のほうが合わせやすそうでした。私は雰囲気の違うものを三着だけ選び、「よければ比べてみますか」と渡しました。

その方は少し迷ったあと、「じゃあ、着てみます」と試着室へ入りました。

三着を順番に試したあと、鏡の前で一着の裾を整えながら言いました。

「これ、自分だったら絶対に選ばなかったです。でも、思ったより変じゃないですね」

「すごく自然だと思います」

私がそう答えると、その方はもう一度鏡を見て、少し笑いました。

帰り際の「また5分だけ」

最終的に購入されたのは、私が持っていった三着のうちの一着でした。

会計を終えて商品を渡すと、その方は入口まで歩き、そこで振り返りました。

「今日は5分のつもりだったんですけどね」

「だいぶ過ぎましたね」

そう返すと、その方は笑って言いました。

「また5分だけ来ます」

私も思わず笑いました。

そのあと、近くで様子を見ていた先輩から「最初にすぐ話しかけなかったの、よかったと思うよ」と言われました。

あの日から、「見るだけです」と言われたときほど、まず相手の時間を邪魔しないようにしています。

もちろん、ずっと放っておけばいいわけでもありません。迷っている様子が見えたときに、必要なことだけ短く伝える。そのくらいの距離がちょうどいい場合もあるのだと、あのお客様とのやり取りで知りました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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