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「え? それって、私に帰れってこと?」混み始めた店内で、客に席をお願いした私が言葉を失った瞬間

  • 2026.9.1
「え? それって、私に帰れってこと?」混み始めた店内で、客に席をお願いした私が言葉を失った瞬間

言い方を探しているうちに、列が伸びていった

若いころ、小さなお店で雇われ店長をしていました。

カウンターのあるこぢんまりとした店で、席数も多くありません。

当時の私は、混雑すると「席を回さなくては」「待っているお客様を早く案内しなくては」と、そればかり考えていました。

ある日、一人の女性のお客様が来店されました。飲み物を一杯注文すると、席で静かに本を読み始めました。

しばらくしてグラスが空いたので、私はそばへ行きました。

「すみません。何か追加でお持ちしましょうか?」

女性は本から顔を上げました。

「ああ……いえ、今は大丈夫です」

「かしこまりました」

私はいったん離れました。

ところが、そのころから店が急に混み始めました。入口を見ると、外で席が空くのを待っている人がいます。

どうしよう。

女性に声をかけるべきか迷いました。入店時に利用時間を案内していたわけではありません。

それでも、外の列を見るたびに焦りが募りました。

何度も言葉を考えた末、私はもう一度女性の席へ向かいました。

「あの……申し訳ありません」

女性が顔を上げます。

「はい?」

「いま少し混み合ってきまして…もし、もうお飲み物がお済みでしたら、お席をお譲りいただくことはできますか」

言い終わった瞬間、女性の表情が変わりました。

「え?それって、私に帰れってこと?」

「いえ、そういうつもりでは……」

「でも、そういうことでしょう?」

女性は本を閉じました。

「まだ読んでたのに。もういいわ。こんなふうに言われるなら、もう来ないから」

私は完全に言葉に詰まりました。

「申し訳ありません……」

それしか言えませんでした。

女性は本をバッグにしまうと、そのまま店を出ていきました。

ドアが閉まったあとも、しばらく胸がざわざわしていました。待っているお客様のことばかり考えていましたが、女性からすれば、何の説明もなかったのに突然席を空けてほしいと言われたのです。

カウンターに座っていた常連のお客様が、帰り際に小さな声で言いました。

「難しいね、こういうのは」

私は思わず苦笑いしました。

「……はい。言い方、まずかったですよね」

「まあ、混んでたからね。でも、最初から分かってたら違ったかもね」

その言葉が、妙に残りました。

その場でお願いする前に、できることがあった

それから店で相談し、混雑時の席の利用について、入口に小さな案内を置くことにしました。

「混雑時は、長時間のお席のご利用をご遠慮いただく場合がございます」

それだけの短い案内です。

先に知らせておけば、店側も突然お願いする形になりません。お客様にも事情を分かったうえで利用してもらえます。

何か月かたったころ、あの女性が再び店に来ました。

顔を見た瞬間、私は少し緊張しました。

女性は入口の案内をちらりと見てから、店内を見回しました。

「今日は空いてるわね」

「はい。どうぞ、お好きなお席へ」

女性は端の席に座り、以前と同じように飲み物を頼んで本を開きました。

あの日のことについて、お互い何も言いませんでした。

それでも、また来てくださったことが私は少しうれしかったです。

今は自分の店を持っていますが、混雑時のお願いはできるだけ事前に分かる形で伝えるようにしています。

あのとき必要だったのは、もっと上手な言い方だけではなかったのだと思います。

お客様にお願いする前に、店側ができる準備もある。そのことを、若かった私はあの日初めて知りました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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