1. トップ
  2. レシピ
  3. 在バチカン日本国大使館のシェフが教える パスタをゆでる時に入れるとおいしくなる「あるもの」とは?

在バチカン日本国大使館のシェフが教える パスタをゆでる時に入れるとおいしくなる「あるもの」とは?

  • 2026.7.17

大きめの鍋にたっぷりの湯をわかし、塩を入れ、沸騰したらパスタを一気に放つ…。

これがいわゆる一般的なパスタのゆで方ですが、ゆでる時に「あるもの」を加えると、本場イタリアのパスタさながらの味に仕上がるのだとか。そのあるものとは…ズバリ、小麦粉!

そんな新しいパスタのゆで方を提案する在バチカン日本国大使館シェフ・髙橋紘幸さんに、調理のコツをうかがいました。

※本記事は高橋紘幸著の書籍『世界をもてなす大使館シェフが教える 心をゆさぶるパスタ&洋食』から一部抜粋・編集しました。

きっかけはレシピ本の撮影

そもそもなぜパスタをゆでる時に、小麦粉を加えてみようと思ったのでしょうか。

「きっかけは、レシピ本(『世界をもてなす大使館シェフが教える 心をゆさぶるパスタ&洋食』KADOKAWA)の制作にありました。本に掲載する料理の撮影のために日本に一時帰国し、キッチンスタジオでパスタを作ったのですが、なぜかイタリアで作るのとどこか違う。ペペロンチーノは作り慣れているから、余裕、余裕!と思っていたのに、予定どおりの味にならなくて…焦りました(汗)」

作り方は同じなのに、いつものような味にならない。

とくに、パスタは小麦の風味がほとんどしない。

その違いはどこにあるのか?

この時の日本滞在期間は1週間。滞在中に自信を持てる回答を得られなかったシェフは、その理由をどうしても探りたくて、日本のパスタを買い込んでイタリアに戻ったのだとか。そこから、実験の日々が続きます。そして行きついたのは、ゆでる水の硬度の違い。

「イタリアは硬水ですが、日本は軟水です。ざっくり言うと、硬水(イタリア)にはマグネシウムやカルシウムが多く含まれていますが、軟水(日本)にはほとんど含まれません。この違いがパスタの風味に影響したのだと思います。軟水にはパスタに含まれる小麦粉が溶け出しやすく、味が抜けた感じ、小麦粉の風味がなくなってしまうんです」

レシピ本撮影中の1コマ。パスタを作っているときは平静を装いながらも、じつは焦っていたという髙橋シェフ (C)高橋紘幸、難波雄史/KADOKAWA
レシピ本撮影中の1コマ。パスタを作っているときは平静を装いながらも、じつは焦っていたという髙橋シェフ (C)高橋紘幸、難波雄史/KADOKAWA

軟水の日本では、パスタをおいしくゆでられない!?

原因はわかったけど、となると軟水の日本にいる限り、パスタをおいしくゆでることができないのでは…?

「私は日本のイタリアンやフレンチのレストランでキャリアを積みました。パスタの味の違いはイタリアに赴任して初めてわかったのですが、パスタ&洋食のレシピ本を出す以上、本場の味を再現できる方法を紹介しないわけにはいきません!」

そう問題解決に挑んだシェフが今回提案するのが、冒頭でもお伝えした小麦粉です。軟水に溶け出した小麦粉の風味を補うがごとくスプーン1杯の小麦粉を加えてゆでてみたところ、結果…大成功!

「イタリアでおいしいとされるパスタは、口に入れ、噛んだ瞬間に小麦の風味が広がります。もちろん、ソースの味わいもおいしさを左右しますが、それ以上に小麦の味がしっかりあること、麺自体がおいしいことを重要視するんですね。ここが、日本ではあまり注目されないポイントかもしれません」

写真奥の鍋ではパスタをゆでており、一方には小麦粉が入っている(シェフ撮影) (C)高橋紘幸/KADOKAWA
写真奥の鍋ではパスタをゆでており、一方には小麦粉が入っている(シェフ撮影) (C)高橋紘幸/KADOKAWA

軟水のミネラルウォーターと日本製のパスタを用意し、塩の量や火加減などの条件は同じにして味を比べてみました。写真奥の鍋ではパスタをゆでており、一方には小麦粉が入っています。

どちらがおいしかったか?結果はお伝えした通り(シェフ撮影) (C)高橋紘幸/KADOKAWA
どちらがおいしかったか?結果はお伝えした通り(シェフ撮影) (C)高橋紘幸/KADOKAWA

フライパンにオイルを熱し、ゆで汁を加えて乳化させたソースに、小麦粉あり、なしでゆでたパスタをそれぞれ投入。どちらがおいしかったか? 結果はお伝えした通り!

■おいしいゆで方の新ルール1を整理すると…

・パスタ180g(2人分)に対し、水2L、塩20g。そこに小麦粉を小さじ1杯入れる

熱により小麦粉が糊化して固まることがあるので、沸かす前に入れる。小麦粉がダマになっている場合はふるってからどうぞ。

熱により小麦粉が糊化して固まることがあるので、沸かす前に入れる (C)高橋紘幸、難波雄史/KADOKAWA
熱により小麦粉が糊化して固まることがあるので、沸かす前に入れる (C)高橋紘幸、難波雄史/KADOKAWA

・湯をボコボコ沸かさずに、ゆらゆらする状態でゆでる

小麦粉の濃度とお湯の量の、意外な関係性

でも、ここでちょっと疑問が浮かびます。お湯の中の小麦粉の濃度を上げるためなら、小麦粉を入れるのではなく、少ない湯の量でゆでればいいのでは?

「じつはここからがミソなんです。たしかに小麦の濃度を上げるという意味では正解です。ただ、そもそもなぜパスタをたっぷりの湯でゆでるかというと、くっついたり折れたりするのを防ぎ、ゆらゆらと対流する湯で泳がせながら、均一にゆでるためなんですよね。

少ないお湯ならたしかに小麦の濃度は上がりますが、今度は麺に均一に火を入れることがむずかしくなります」

ゆで加減にムラがあると、おいしくなくなるのはわかるけれど、いったいどのようなデメリットがあるのでしょうか?

「食感が悪くなるのももちろんですが、均一にゆでられていないと、ソースと合わせた時にゆできれていない部分がどんどん水分を吸うんです。この場合の水分とは、野菜などからでた水分のほかに、ソース作りの際に加えるゆで汁などを意味します。結果としてソースのバランスが崩れて油分が多くなるので、油っこい仕上がりになるんです。なのでお湯の量は減らさず、小麦粉を足すというのがベストです」

■おいしいゆで方の新ルール2を整理すると…

・たっぷりのお湯にパスタ(麺)を一気に入れて、ほぐす

湯がボコボコと沸いたら、麺を一気に入れて、軽くほぐすのみ。うまみが流れ出やすくなってしまうのでパスタは絶対に折らないこと。

湯がボコボコと沸いたら、麺を一気に入れて、軽くほぐすのみ (C)高橋紘幸、難波雄史/KADOKAWA
湯がボコボコと沸いたら、麺を一気に入れて、軽くほぐすのみ (C)高橋紘幸、難波雄史/KADOKAWA

・麺はなるべく触らない。湯で麺を“動かす”

パスタを投入して一度麺をほぐしたら、そこからは触らない。これは必要以上に麺表面の凹凸からうまみ(小麦の成分)が溶け出てしまったり、麺がちぎれたりするのを防ぐため。火加減は湯の表面がゆらゆらする程度。湯の中で麺が動くように、途中、数回に分けて軽く混ぜる。

パスタを投入して一度麺をほぐしたら、そこからは触らない (C)高橋紘幸、難波雄史/KADOKAWA
パスタを投入して一度麺をほぐしたら、そこからは触らない (C)高橋紘幸、難波雄史/KADOKAWA

「小麦粉を入れてゆでた時と、そうでない時の味の違いは、正直に言うとパスタのソースが勝つもの、たとえばアラビアータやトマトクリーム、カルボナーラやクリームパスタなどだとわかりにくいかもしれません。でも、オイルベースのパスタなら、きっと違いがわかるはず。口に入れる瞬間にふわっと小麦の香りがしますから。ぜひ試してほしいです」

オイルベースのパスタ (C)高橋紘幸、難波雄史/KADOKAWA
オイルベースのパスタ (C)高橋紘幸、難波雄史/KADOKAWA

文=波野海、写真=難波雄史

髙橋紘幸さん (C)高橋紘幸、難波雄史/KADOKAWA
髙橋紘幸さん (C)高橋紘幸、難波雄史/KADOKAWA

【著者プロフィール】

髙橋紘幸

岩手県出身。1996年調理師学校を卒業。以来、フレンチやイタリアンを中心に高級店から人気店まで、国内の有名レストランで経験を重ねる。2006年からは料理長として数店舗で腕を振るった後、2023年よりイタリアへ赴任。在バチカン日本国大使館シェフを務める。2024年に開設したインスタグラムでは、「一度覚えれば一生使える」をテーマにさまざまなレシピを発信、いつもの料理が格上げされた!とたちまち話題に。さらに、2025年にはnoteを開設し、「理屈がわかる深掘りレシピ」をテーマに、さまざまな料理のテクニックを解説している。

著=高橋紘幸/『世界をもてなす大使館シェフが教える 心をゆさぶるパスタ&洋食』

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ