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【2026年6月に見たい展覧会3選】風間サチコ、ピカソ×ポール・スミス、コシノヒロコ

  • 2026.5.26

「風間サチコ展:方丈ルームの1000里眼」弘前れんが倉庫美術館

《ありがとう、我が愛する白鳥よ!》(2026)、油彩、作家蔵。 ©SACHIKO KAZAMA COURTESY OF THE ARTIST AND MUJIN-TO PRODUCTION. PHOTO: KEI MIYAJIMA

その光景は確かに見覚えがあるはずなのに、やはりどこか現実とは噛み合わない。国家や資本主義、科学技術といった近代の構造が、神話や文学、個人的な記憶や想像とからみ合い、ひとつの画面の中で増殖していく。情報は過剰で、視線は定まらず、それでもなお描かれているのが「いま」であることだけは奇妙な確かさをもって迫ってくる。風間サチコはこれまで震災やオリンピックといった同時代の出来事を起点に、歴史と現在を撹乱するような木版画を制作してきた。

《第一次幻惑大戦》(2017)、木版(油性インク/和紙、パネル)、横浜美術館蔵。飛行船や兵器、電卓、高層ビル、波などのモチーフが交錯し、社会規範と自己の葛藤を戦争として描いた作品。 ©sachiko kazama. PHOTO: KEI MIYAJIMA

黒一色で刷られた画面は劇画を思わせる強い線とコントラストを持ち、日本の視覚文化の系譜を引き受けながら展開される。そのイメージは記録のように見えながら、現実の奥に潜む構造や感情を寓話として引きずり出し、緻密に彫り込まれた画面は、迷い込み彷徨うための奥行きのある空間へと変わっていく。

その壮大な視線の出発点へと誘われるのが、6月5日から弘前れんが倉庫美術館で始まる「方丈ルームの1000里眼」だ。四畳半の部屋という極小の空間からいかにして遠くを見通すのか。外界から切り離されたその場所は思考を閉じるどころか、過去・現在・未来へと拡張していくための場となり、内にこもることが逆説的に世界へと開かれていく。

《白鳥の聲が聞こえる》(2026)、油彩、作家蔵。 ©SACHIKO KAZAMA COURTESY OF THE ARTIST AND MUJIN-TO PRODUCTION. PHOTO: KEI MIYAJIMA

これまでの木版画とは異なる表情を見せる新作の油彩画では、白鳥というモチーフが繰り返し現れる。文学や神話、土地の記憶と結びついたイメージは合理性の外側にある幻想を呼び起こすようだ。理性では捉えきれないもの。それは風間の作品に通底してきたもうひとつの現実でもある。

彼女の画面には、制度や歴史に覆われた現実の裂け目がある。その裂け目から、別様の世界が立ち上がる瞬間を私たちは目撃することになるだろう。そして、見ていたはずの現実はどこにあるのか、と足元が揺らぐとき、すでに風間の視線のなかにいるのだ。

6/5~11/15、弘前れんが倉庫美術館(青森・弘前)

「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」国立新美術館

パリ国立ピカソ美術館展示風景、2023年。 © Vinciane Lebrun/Voyez-Vous, courtesy of the Musée National Picasso-Paris. © 2026-Succession Pablo Picasso-BCF (JAPAN)

20世紀美術の巨匠ピカソの作品群を前に見えてくるのは、鮮やかな「読み替え」だ。パリ国立ピカソ美術館の所蔵品約80点が、ポール・スミスがセクションごとに異なるコンセプトで考案した、色彩と楽しい驚きに満ちた空間で新たなリズムを刻み始める。ピカソの「青の時代」の孤独からキュビスムの解体、自由を極めた晩年へ。没後50周年を機にパリで熱狂を呼んだ特別展をもとにした本展は、遊び心というフィルターを通してピカソの軌跡を現在へとつなぐ。国内では国立新美術館のみで開かれる特別な邂逅。視点を変えることで世界は無限に更新されるのだと、驚きとともに教えてくれるはず。

6/10~9/21、国立新美術館 企画展示室2E(東京・六本木)

「(UN)KNOWN HIROKO KOSHINO ー新説/真説 コシノヒロコー」

WORK#1078《幸せの青い鳥》(2013)、布、和紙、アクリル絵の具、木炭、パステル / 木製パネル、388×220㎝。株式会社ボンマックス(東京都中央区)所蔵。金色の山々の間を自由に飛翔する鳥たちの姿を通して、コシノの制作の原点である日本文化の伝統と美意識を体現した代表的な作品。 Hearst Owned

コシノヒロコという名前がまとう既存のイメージを解き放ち、その輪郭を鮮やかに描き直す。60年以上にわたり日本のファッション界を牽引し続けてきた彼女の創作を未知・既知が表裏一体となった「(UN)KNOWN」という視点で捉え直す会場には、厳選されたコレクション作品約200点と絵画約130点が、同時代の芸術や社会と響き合うように並び、多角的な表現に出合う。また、フランス人アーティスト、マティルド・ドゥニーズがコシノの過去のコレクション素材を用いたコラボ作品を発表、KIGIとのヴィジュアル制作など世代や領域を超えた協働が新たな対話を生み出していく。絶えず自己更新を続ける表現者の「新説と真説」が胸に迫る。

~7/26、東京都現代美術館 企画展示室B2F

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