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展覧会『加守田章二とIM MEN』が見せた、陶芸とファッションの心踊る美

  • 2026.4.30
© ISSEY MIYAKE INC.

ファッションと陶芸のこのような出合いを誰が予想できただろう。イッセイ ミヤケ「アイム メン」の2026年春夏コレクション「DANCING TEXTURE」は、日本の陶芸家・加守田章二(1933~1983年)にインスピレーションを得て誕生した。その服と、着想源となった加守田の作品を見せる展覧会『加守田章二とIM MEN』が京都国立近代美術館で6月21日まで開催。焼き物から服へ、クリエイションの跳躍はどのように行われたのか。会場で「アイム メン」のデザイナー、河原遷、板倉裕樹、小林信隆に話を聞いた。

© ISSEY MIYAKE INC.

加守田章二は1933年生まれ。京都市立美術大学で富本憲吉に学び、茨城県益子、後に岩手県遠野に拠点を構え作陶した。灰釉(かいゆう)、須恵器(すえき)風、彩陶、曲線彫文、象嵌と、さまざまな表現を行き来し、緊張感のあるフォルムと大地を感じる肌、独自のリズムを伴った文様によって大きな世界を内包するような焼き物をつくり出した。

この加守田の焼き物から衣服を発想したのが「DANCING TEXTURE」というコレクション。タイトルは、加守田の作品の動的なテクスチャーと、加えて「アイム メン」が服づくりに際して没頭する感じが踊る感覚と似ていて、その意味も込めたのだという。

<写真>加守田章二『壺』(1978年)京都国立近代美術館蔵。焼き締めの素地に線刻文と上絵で文様を付けている。

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ストライプの壺を見て着たいと思った

河原:最初に加守田章二を、と言い出したのは私です。このストライプの『壺』(1978年)を服にして着たいと思ったんですね。1970年代、80年代に、三宅一生がクラフトのようにしてつくった生地のシャツがあるんですが、近い感じがあって。自分が着たところも想像しました。


板倉と小林は、河原に話を聞き、図録で見てすぐに面白そうだと感じた。どうやって服にするか、さまざまなアイデアが湧いたという。今回の展覧会の会場でもある京都国立近代美術館をはじめ、加守田の作品を所蔵するところへ足を運び、丹念に作品を見て、彼らは改めて大きな衝撃を受ける。色柄、質感、造形をどう落とし込んでいくか、どんな服をつくるか、探求が始まった。展覧会では衣服と加守田の作品とが呼応するように配され、見比べることができる。

<写真>手前は、加守田章二『壺』(1978年)京都国立近代美術館蔵。これを見て河原は着たいと思ったという。奥に見えるのがこの『壺』に着想を得た“CURVINESS SHIRT”。

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例えば赤茶色にうろこの文様が連なる1971年の彩陶の作品。加守田は白泥を塗って焼いた白い器に、白く表出させたい文様部分を墨で描き、その周りを赤い絵具で塗布、火を通すと墨部分が素地として残り、白い描線が現れるようにしてつくった。

「アイム メン」の“UROKOMON”は複雑なプロセスを必要とした。ポリエステルのチュールに特殊なプリントを施し、上に綿のジャージーを貼る。さらにプリントした後、柄の輪郭部分のみジャージーを溶かしてチュールを見せ、白い文様を出している。「DANCING TEXTURE」ではこのようにして、陶器の質感や色柄を表現するテキスタイルを、モチーフとした作品一つ一つに合わせていくつもの技法を駆使しつくり上げた。

<写真>“UROKOMON”の展示風景。左は加守田章二『彩陶長方皿』(1971年)京都国立近代美術館蔵。右が“UROKOMON”。

© ISSEY MIYAKE INC.

加守田は形においてもオリジナリティを発揮した。すっと立つもの、歩き出しそうなもの、きりりとしたもの。それらは文様と一体となって強い存在感を放っている。

「アイム メン」のコレクションにおいても、テキスタイルと衣服の形は切り離されず常に一つのものとして考えられてきた。三宅一生の思想である「一枚の布」を体に着ることをベースに置く服づくりと、土づくりに始まり装飾とフォルムとを一緒につくり上げる加守田のやり方には共通するところがある。

<写真>加守田章二『彩色壺』(1975年)京都国立近代美術館蔵。

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加守田の陶器と「アイム メン」の服が並び見えたもの

両者の作品を見ていると、加守田の豊かな創造性から出発し、「アイム メン」において、新たな創造性が花開いたことに気付く。3人は次のように語った。

河原:展示してみたら、加守田さんの作品と「アイム メン」を一緒に置くということの意味が想像以上でした。初めは加守田さんの陶芸の美しさを、今の時代において新鮮な切り口だと考え、それを見てもらえる機会をつくれたらと。実際に会場で見ると、加守田さんの作品と服の二つによって生まれてくる空気が確かにあると強く感じました。

小林:
会場で、加守田さんの作品と「アイム メン」の服を見て、あのテクニックを使うのもいいかな、別のやり方でもっと近づけられたかな、など、いろいろな思いが浮かんできました。コレクションを発表した時はベストであると感じていましたが、制作しながら学んだことも多かったんです。

板倉:
加守田さんの作品は見れば見るほど非常につくり込まれているとわかります、深さがある。それらと対峙させているので、テーマとして加守田さんの作品をただなぞったのか、私たちがどれだけ考えてつくり込んだかが試される展示でもあります。

加守田はこんな言葉を残している。
「自分の外に無限の宇宙を見る様に、自分の中にも無限の宇宙がある」*

加守田の作品が携えるダイナミックな宇宙が誘発した、「アイム メン」の躍動感あふれる宇宙。二つの宇宙が対話する瞬間瞬間がこの展覧会を満たし、見る側の心をも踊らせる。

<写真>『加守田章二とIM MEN』展会場風景。

『加守田章二とIM MEN』

会期:2026年3月28日〜6月21日
会場:京都国立近代美術館 1階ロビー 京都府京都市左京区岡崎円勝寺町26-1
時間: 10:00~18:00(金曜は20:00まで、いずれも入館は閉館30分前まで)
休:月曜 ※5月4日は開館
入場料 :コレクション・ギャラリーのチケット(一般¥430)で観覧可


■IM MENデザインチームと京都国立近代美術館研究員によるギャラリーツアーを下記日時で開催。
5月9日(土)14:00
5月17日(日)14:00
各回30~40分程度
予約不要(開始5分前までに展覧会会場にお集まりください)
※解説は日本語のみ




関連展示
KURA展「ELEMENTS」

―「DANCING TEXTURE」のコレクションより“ELEMENTS”にフォーカスした展示

会期:2026年4月1日〜5月28日
会場:ISSEY MIYAKE KYOTO | KURA 京都府京都市中京区柳馬場通三条下ル槌屋町89
時間: 11:00~20:00
休:会期中無休
入場料 :無料




*参考文献:『20世紀陶芸界の鬼才 加守田章二展』図録 朝日新聞社(2005年)

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