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【4月に見たい展覧会3選】リトアニアの芸術家チュルリョーニス、ディアスポラをテーマにするリナ・バネルジー、人体と機械が交錯する空山基の軌跡

  • 2026.3.30

「チュルリョーニス展 内なる星図」

《祭壇》(1909)、厚紙にテンペラ。国立M. K. チュルリョーニス美術館(カウナス)所蔵。 M. K. Cˇiurlionis National Museum of Art, Kaunas, Lithuania

画家である前に、作曲家だった。1875年、リトアニアに生まれ、35歳で早世したミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス。ワルシャワ音楽院などで学び、将来を嘱望された音楽家でもある。絵画と音楽のあいだに、今なおほかに似るもののない領域を残した彼。世界的な評価は高いが、その名は決して広く知られているとは言いがたい。

この事実を知ってか知らずしてか、絵の前に立つと、ふと音楽が流れてくる。だが彼は、音楽的な効果を狙って絵を描いたわけではない。作曲家として培った時間の感覚や、模倣と展開、多声的な関係性といった、ソナタやフーガの構造を絵画にそのまま与えようとしたのである。静止した画面に、精神の運動を。宇宙の秩序を。音楽は、チュルリョーニスにとってもっとも自然な思考の形式だったのだ。だからその絵は、風景のようでありながら写実に向かわず、物語を語るようでいて明確な筋を持たない。そこには、神話や民族的な記憶、自然、宇宙といった要素が一つの構造のなかで響き合っている。

《春》(1907)、紙にテンペラ。国立M. K. チュルリョーニス美術館(カウナス)所蔵。 M. K. Cˇiurlionis National Museum of Art, Kaunas, Lithuania
《第6ソナタ(星のソナタ):アレグロ》(1908)、紙にテンペラ。国立M. K. チュルリョーニス美術館(カウナス)所蔵。 M. K. Cˇiurlionis National Museum of Art, Kaunas, Lithuania

近年ヨーロッパでは、彼を抽象絵画以前に「構造」を絵画へ持ち込んだ先駆者として再評価する動きが進む。しかし、近代美術史の一直線上へ容易に回収されることなく、むしろその外側でたゆたっている。詩と音楽と思想を交差させながら、独自の星図を描いた画家──。東京・上野の国立西洋美術館で開催中の「チュルリョーニス展 内なる星図」は、そうした彼の営みを日本で34年ぶりに紹介する大規模な展覧会だ。印象に残るのは、一人の芸術家が目に見えない世界をどのような構造で捉えようとしたのか、その内奥に潜む必然性だろう。理屈よりも先に、不思議な調和に身を委ねてみたい。

~6/14、国立西洋美術館(東京)

リナ・バネルジー「"You made me leave home...」

《Shareena, She chose, lost all her noodle to western explorer》(2023) Courtesy of the artist and Perrotin

1963年、インドに生まれ、現在はニューヨークを拠点に活動するリナ・バネルジー。南アジア系のディアスポラとしての自身のバックグラウンドや移民経験をもとに、アイデンティティ、民族性、文化の交錯といったテーマを多角的に探求してきた。彫刻や絵画、ドローイング、映像、パフォーマンスなど、その表現手法は幅広い。

豊かな質感や色彩をまといながら、地球規模の移動や植民地主義の遺産といった社会的・歴史的な問いを投げかけ続けている。大型の吊り作品は、見る者を圧倒するスケール。ほか、絵画や彫刻作品など、自身の作品群から厳選した計19点が集結する。

~9/13、エスパス ルイ・ヴィトン東京

空山基「SORAYAMA 光・透明・反射 —TOKYO―」

《Untitled》(2025) © Hajime Sorayama, Courtesy of NANZUKA

空山基の過去最大規模となる回顧展。1978年の初期のロボット作品をはじめ、恐竜やユニコーンを描いた最新の絵画、彫刻、映像インスタレーションまでを網羅し、半世紀にわたる創作の軌跡を一望できる。空山がこれまで一貫して追求してきた「光・透明・反射」という表現の核とともに浮かび上がるのは、広告や音楽、プロダクトデザインと交差してきた活動の広がり。金属の体に、女性的な曲線やスターの記憶を重ね合わせながら、アートと大衆文化の境界を横断するその歩みが、圧倒的なスケールで現れる。

~5/31、CREATIVE MUSEUM TOKYO

From Harper’s BAZAAR 2026 May Issue

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