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俺が「転職繰り返すやつ」と言ったあの日、給湯室には彼女がいたらしい

  • 2026.5.4
ハウコレ

転職4回の新人が配属されてきたとき、期待はしていませんでした。どうせ続かない。そう決めつけていた俺が彼女の本当の経歴を知ったのは、3ヶ月も経ってからのことです。

前任者の影

以前の部署にも、転職を繰り返してきた社員がいました。「経験が豊富で頼もしい」と思っていたのに、大事なプロジェクトの途中で「次が決まったので」と辞めていった。あの穴埋めに走り回った期間が、まだ記憶に焼きついていました。

だから給湯室での雑談の中で彼女の経歴を知ったとき、同僚に「転職繰り返すやつに仕事は任せられない」と口にしました。重要な案件は振らず、当たり障りのない業務だけを任せる。それが俺なりのリスク管理でした。

想定外の一手

それが揺らいだのは、異業種との共同企画が暗礁に乗り上げたときでした。社内の誰もが手を挙げない中、彼女が「以前の職場で近い業界を担当していたので、対応できるかもしれません」と申し出てきたのです。

半信半疑で任せてみると、先方との会話が驚くほどかみ合いました。製造業の現場用語にも広告業界の慣習にも詳しい。ひとつの会社に長くいても身につかない幅広さを、彼女は持っていたのです。「助かった」と伝えたとき、彼女は小さく頷いただけでした。

読み返した履歴書

気になって、改めて彼女の経歴を確認しました。1社目は入社2年目に会社が倒産。2社目は上司のハラスメントが原因で退職。3社目は業績悪化による部門の廃止。そして前職は家族の介護のため。

どの退職にも、彼女自身の落ち度はありませんでした。

同じタイミングで同僚から、あの日の給湯室で話した内容が彼女に聞かれていたと知らされました。俺が放ったあの一言を、聞かれていたのです。

そして...

翌日、「少し時間いいか」と声をかけました。あの発言について、ちゃんと詫びたかったのです。けれど彼女は「大丈夫です」と穏やかに言ったきり、それ以上の会話にはなりませんでした。

怒っているのとも違う、ただ壁がある。その壁を作ったのは俺です。帰りの電車の中で、ひとつだけ考えていました。俺が彼女にとっての「5社目の退職理由」にならないだろうか。それだけは避けたい。でもそのために何をすればいいのか、まだ答えは出ていません。

ただ、明日からは彼女が今出している成果を見ようと、それだけは決めました。 

(30代男性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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