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私にとっては〝名もなき〞グリーン。植物との自然な関わりを楽しむ、美術家・maisさんの住まい。

  • 2026.5.3

植物との心地よい日々を楽しむ人々を訪ねた&Premium150号(2026年6月号)「花と緑のある暮らし。」より、美術家・maisさんの花と緑と暮らす家を紹介します。

美術家のmaisさんが暮らす家。空間デザインは自身で。向かいの敷地の緑を借景として取り込めるように、高さ5mの天井まで届く大開口を設けた。
正午近く、中庭の方から光が差し始めると室内の植物がいっせいに葉をそちらへと伸ばす。羽状の葉がふんわり弧を描くように広がるのはネフロレピス。

琵琶湖からの風が抜ける家にグリーンがある必然。

100㎡をゆうに超え、天井の高さは5m。コの字のように立っていることもあって、たくさんの開口部がある。美術家のmaisさんが住む家は、琵琶湖から近く、遠くに比叡山が望める開けたエリアにある。開放的でダイナミックな空間だ。

反して、家のそこかしこで育つ植物は、いい意味でほとんど主張をしてこない。数は少なくないし、大ぶりなものもあるのに、なぜ? 窓から入り込んだ風を受け、はにかむように揺れているだけだ。

「表現が適切かわかりませんが、地味めな種類が多いからかもしれません。植物のセレクトショップに出かけなくても、〝そのへん〞の店や道ばたで出合えるようなものばかりで」
 
タマシダやベンジャミン、モンステラやピレアなど、どれについて尋ねても「ホームセンターで売れ残りを救済したんだったかなぁ……」と判然としない。実は植物の種名も「調べないとわからない」と話すものがあった。でもそれは出合った瞬間、「我が家で一緒に暮らそうよ」とつい手を伸ばしてしまった〝直感〞のほうがよっぽど大切だから。それが「何」で「どこ」で手に入れたかは、maisさんには些事なのだ。

「風がね」と口にする。「この家は窓が多いから、琵琶湖の方からの風が部屋に流れ込んでは、うねるように抜けていくんです。そんな家には植物があるのが自然でしょう」

そうして家主の手招きでやって来た、maisさんにとっての〝名もなき〞グリーン。偶然に鳥に運ばれた種がたまたま落ちた土地で芽を出すように、この家で淡々と育っている。
 
食べ終えたアボカドの種から育てた鉢ももちろんある。「パーティでもらったブーケの中の一葉や、折れた葉や枝を水に挿しておいたら根が生えた」というのはフィロデンドロンやアイビーなど。シダ系は子株がポロッと外れては鉢の数が増えていっただけ。植物育ては自然、偶然の繰り返し。気負いは、ない。

「同じ地面の上でそれぞれに生活をしていると考えているんです。私はマメではないから、世話を焼きまくることもできない。それに向こう(植物)も『自分自身の力で大きくなるから、構いすぎないで』って思っていそう(笑)。それでもそこにいてくれないと困る存在なんですよね。だって彼らには派手さはなくても、生きようとする静かなパッションがある。それを少し分けてもらうの。お返しに、彼らが我が家でご機嫌に第二章を送れるように、見つめたり、触れたりは忘れません」

庭の樫の木がだいぶ伸びていた。

「鳩のつがいが毎年戻ってきて巣を作るんです。彼らを待っていて、つい切れなくなってしまいました」
 
植物との関わりは自然のままに。

自宅に隣接する小屋はアトリエ。「とんがり屋根で絡まるツタに埋もれて……と脳内にあったアイデアを形に」。初夏を迎えると扉の脇のジャスミンが満開に。
アトリエの中。コンパクトなスペースでは、ハンギンググリーンがメイン。1 階のやや暗い室内でも、シダ類はへこたれず、青々としている。
旅先から持ち帰った思い出の品が飾られたコーナー。主役はそちら。合間に置かれたグリーンは、大ぶりの葉も小さな葉も野の花のように楚々とたたずむ。
出典 andpremium.jp
mais美術家

日本の奥深い伝えを残すため、世に漂う音を源に花や神々、吉祥文様を描き進化させ、社寺の天井画や襖・屏風絵、空間デザインも手がける。

photo : Yoshiko Watanabe edit & text : Marika Nakashima

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