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「夕方は地獄でした」約7,000万円で4LDKを建てるも…インスタの流行に乗ってみた30代夫婦の後悔【一級建築士は見た】

  • 2026.6.11
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「インスタで見た開放的なLDKに憧れて、リビングの南面と西面に大きな窓を入れたんです。5月で早くも、夕方は地獄でした」

そう話すのは、都内近郊に注文住宅(延床35坪・4LDK)を約7,000万円で建てたZさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。設計士には「明るくて開放感のあるリビングが欲しい」と伝え、南面に幅3.6mの大型サッシ、西面にも幅2.7mの掃き出し窓を配置しました。

ところが入居後初めて迎えた5月、午後から夕方にかけてリビングは予想以上の暑さに。エアコンを強く効かせないと快適にならず、設定温度を下げても西日が差し込む間はなかなか涼しくならない状態に陥ったのです。「最新のエアコンや床暖房にこだわって設備にお金をかけたのに、肝心の窓のことを考えていなかった」と振り返ります。

「明るい家」の落とし穴は西面の窓にある

住宅の採光と日射の影響は、窓の方位によって大きく異なります。

南面の窓は、太陽が高い位置にあるため、夏は庇や軒の出があれば直射日光が室内まで届きにくくなります。冬は太陽が低くなるので逆に日射を取り込めて、暖房負荷を減らす効果があります。

問題は西面の窓です。西日は太陽が低い位置から横方向に差し込むため、庇や軒では遮りきれません。午後から日没にかけて長時間にわたり室内を直射し、家具や床を温め続けます。一度温まった建物は夜になっても熱を持ち続けるため、就寝時間まで室温が高止まりするのです。

冷房を入れていない日中の不在時などは、5月の晴天でも西日の影響で室温が30℃を超えることがあり、本格的な真夏には締め切った室内が40℃近くまで上がるケースもあります。帰宅後にエアコンをつけても、熱を持った壁や床が冷えるまでは時間がかかり、その分だけ冷房の効きが悪くなり、電気代もかさみやすくなります。

SNSで流行の「大開口リビング」のリアル

近年、SNSや住宅雑誌では大開口の窓を備えた開放的なリビングが人気です。眺望や採光、家族の集まる空間の演出として魅力的に映ります。

しかし、開放感を優先するあまり、窓の方位・サイズ・遮熱性能のバランスを欠くと、住み心地に大きな影響が出ます。とくに以下の点が見落とされがちです。

・西面・東面の大きな窓は、夏の日射負荷が大きい
・サッシのガラス性能(単板・複層・Low-E複層・トリプル)で熱の伝わりが大きく違う
・庇や軒の出がないと、季節を問わず直射が室内まで届く
・カーテンや内側のブラインドだけでは、外からの熱を遮りきれない

2025年4月から、すべての新築住宅に省エネ基準への適合が義務化されています。基準を満たしていれば最低限の断熱性能は確保されますが、それ以上の快適性は窓・庇・植栽・空調計画など個別の設計で決まるのです。

Zさん夫婦はどう対応したのか

西日の暑さに直面したZさん夫婦は、西面の窓の外側に「外付けロールスクリーン」を設置することにしました(約15万円)。

外付けロールスクリーンは、室内側のカーテンと違い、窓の外側で日射を遮るのが特徴です。ガラスや室内が熱を持つ前に遮熱できるため、室内側のカーテンよりはるかに高い暑さ対策効果があります。建築では「室内に入る前に熱を遮る」のが基本だからです。

設置後は、夕方の室温上昇が体感で大きく抑えられ、以前ほどエアコンを強く効かせなくても快適に過ごせるようになったといいます。「最初から窓の方位と遮熱性能を意識した設計にしていれば、後付け工事の費用は不要だった」とZさんは振り返ります。

設計段階で「日射と方位」を意識する

注文住宅を計画する際は、間取りや設備だけでなく、窓の方位と日射のコントロールも合わせて考えることが大切です。

・南面の窓は庇や軒の出で夏の直射を抑え、冬の日射を取り込む
・西面・東面に大きな窓を配置するなら、Low-E複層ガラスや外付けシェードを組み合わせる
・周辺建物や植栽による日射の遮蔽も計画段階で確認する

設備にお金をかけても、窓の配置と性能が悪ければ快適性は得られません。空調機器でカバーするのは電気代がかかるうえに、光熱費は住んでいる限り発生し続けます。

「大開口リビング」が合う敷地もある

ここまで西面の大開口の問題を中心に紹介してきましたが、大開口リビングが暮らしにフィットする敷地条件もあります。

西側に高い建物や山があって西日が遮られる敷地、西面が眺望に開けていて夏でも風が抜ける土地、Low-E複層ガラスや外付けシェードを最初から計画している家であれば、大開口リビングの魅力を十分に享受できます。

「SNSで見た憧れの間取り」をそのまま採用するのではなく、自分の敷地の方位・周辺環境・気候特性に合わせて設計すること。それが、5月から夏にかけて「家がいちばん落ち着く場所」になる住まいづくりの第一歩です。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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