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カイ・フランクのコレクターの住まいへ。希少コレクションと暮らす、ガラスのある美しい日常

  • 2026.5.3
Chikako Harada

フィンランドのヘルシンキから東に約1時間の場所にある、古都ポルボー。築230年以上の歴史ある建造物で暮らすタウノ・タルナは、フィンランドデザイン界の要職を担ってきた有識者であり、美術品のコレクターとしても知られる。タルナが所有する、希少なカイ・フランクのコレクションを見せてもらった。

Chikako Harada

かつてはフィンランドのプラスチックメーカー、サルビス社でデザイナーとして活躍し、フィンランド政府から賞を受賞するなど多くの功績を残しているタウノ・タルナ。フィンランド産業工芸学校(現アアルト大学)でカイ・フランクに師事。後年は友人として家族ぐるみでの交流を持ち、生涯最後の作品シリーズでも協働した。現在はカイ・フランクにまつわる執筆や展覧会の企画にも関与し、語る上で欠かすことのできない存在だ。

日本に関心を持っていたカイ・フランクの影響を受け、タルナ自身も日本をたびたび訪れている。日本文化やデザインの知識も深く、2008年には岩手の南部鉄器のデザインも手掛けている。

<写真>柔らかな光に包まれた食卓。カイ・フランクやオイバ・トイッカ、日本の南部鉄器の急須などが自然に調和している。

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偶然見つけた家は唯一無二のコレクター空間へ

タルナが今の自宅を手に入れたの40年ほど前。ポルボーの町で家を探し歩いていた際、瀟洒ながら独特のたたずまいにふっと惹かれ、外観を見ただけで購入を決めたという。購入が済み、いざ内見してみると素晴らしいセンスの暖炉や壁紙などが設えられた空間だった。それから長い年月の間、手入れを惜しまず大切にして暮らし続けている。

<写真>部屋の一角につるされているのは、カイ・フランクの「シャンデリア」。1954年の作品で、キャンドルホルダーが付いている。

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インテリアや調度品は、重厚でクラシックなデザインのものから現代アートまで、国籍も文化的な背景もそれぞれ。タルナの審美眼によって構成された空間は温かく、博物館の中にいるような幻想的な感覚を覚えるほどだ。

<写真>幾何学的なフォルムを追求したカイ・フランクのデザインの美しさが際立つグラスは、左から「2718」 「2744-12」「2766」「2744-9」。右はカラフェ「1609」。

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室内では河井寬次郎や濱田庄司らの作品や市井の暮らしで使われてきた民藝品がさりげなく使われている。石本藤雄、ビルゲル・カイピアイネンやオイバ・トイッカといったフィンランドで活躍するデザイナーの作品をはじめ、中東、アジア、ヨーロッパとさまざまな国のものを巧みに共存させた空間の中で、やはりひときわ光るのはカイ・フランクの作品。敬愛するカイ・フランクの作品は、今でも日々の暮らしの傍らに在り続け、特別な存在だ。

<写真>何げない日常のシーンの傍らにたたずむボウル。季節に応じて配置を替えるなど飽きることのない楽しみがあるとタルナ。カイ・フランクの作品は普段使いしてこそ、価値がわかると話す。

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長い月日をかけてコレクションし、作品と向き合ってきたタルナは、カイ・フランクという人物とその作品についてこう語る。

「芸術性の高いアートピースを多く生んだ素晴らしさとは別に、量産されたプロダクト製品にこそ彼の真価があると思います。毎日の暮らしでカイの作品を使い続けていると、いかにカイが実際に使う人へ思いを寄せてデザインをしていたかということに、改めて気付かされます。みなさんにもぜひ、飾るだけではなく、日々の中でたくさん使っていただけたら嬉しいですね」

<写真> 築230年にも及ぶ自宅のリビング。1980年に購入してから40年以上もの間、手を入れ慈しみながら過ごしてきた。

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タウノ・タルナが所蔵する希少なカイ・フランク作品

スワン(アートピース)
カイ・フランクは自然界の生き物をモチーフとすることが多かったが、これは繊細なフィリグリー模様が施された、高さ約20㎝のもの。大型サイズのスワンは普段ほとんど目にかかることができない、希少な作品。

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フィリグリーピッチャー(アートピース)
フィリグリーと呼ばれる、らせん状の細い柄が特徴。工場から色ガラスのサンプルを持ち帰り、ガラスの配色を何度も試しながら製作。コバルトと赤を基調に光が美しく透過する。

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キルタ
カイ・フランクの代表作。アラビアで製造され、1953年から1974年の約20年間で累計2500万枚ものセールスを記録したと言われる。現在はイッタラのティーマとして販売。カトラリーはハックマンのもの。

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ゴブレット(アートピース)
厚みと気泡を特徴とするサルガッソシリーズをはじめ、多くのゴブレットを発表しているが、カラーガラスの層が美しいこのゴブレットはまれなタイプ。1960年代の作品と推測される。

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KF486 ゴブレット
1968年から71年にかけて製作されたゴブレット。カップ部分は型を使い、マウスブローで製作。ステムは型を使わずにつくられている。色や柄、さまざまな種類があったが、今や入手困難なアイテム。

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ベース(アートピース)
気泡の中にさらに色が加わった、独創性の高い作品。このような一点ものをつくる際は工房でカイ・フランク本人も立ち会い、ブロワー職人たちと話し合いながら一点一点の完成を見守っていた。

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ベース(アートピース)
平面上で接する数色のガラスを用いた新しい技法を確立した頃の作品。「ガラスでできることの全てをカイ・フランクがやり尽くした」とフィンランドのガラス職人が語るほど、豊かな表現を生んだ。

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ベース(アートピース)
生涯を通じて幾何学的形態を探究したカイ・フランクだが一点もので四角い形のものは意外と少ない。型に2層のガラスを使い気泡の露出の加減で豊かな表情を出した。1960年代後半の作品と推定。

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ボウル(アートピース)
清涼感あふれるブルーとモアレのような柄が見事なボウルは夏によく似合う。色こそがデザインに必要な唯一の装飾と言い、ガラス素材を介してあらゆる表現手法を実践した探究心が感じられる。

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KF224 ウッドコック/アートキーウィ/バード(アートピース)
ガラスの鳥と言えばオイバ・トイッカだが、カイ・フランクも1950年代から芸術的なガラスの鳥を製作した。手前の右2点がアートキーウィ、奥がKF224 ウッドコック。左は1970年代の作品。

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ボウル(アートピース)
タルナの所要するコレクション第1号はストライプが美しいボウル。デザイナーだったタルナの作品がヒットし、特別なボーナスが出た際にカイ・フランクに電話し、本人が選んでくれた思い出の品。

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