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時代や背景の異なる椅子が共存する、住まいの風景。〈DAMDAM〉ファウンダーの家の椅子

  • 2026.4.28
フィリップ・テリアンさん自宅のリビング

異文化を横断する、偶然と直感で集められた椅子

「国や年代を揃えることには、あまり興味がないんです。いろいろ交ぜることで、むしろ場が落ち着くこともある。中でも椅子は、空間を決定づける大切な存在です」そう語るのは、スキンケアブランド〈DAMDAM〉のファウンダーでPR会社の代表も務めるフィリップ・テリアンさん。

1981年に来日した当初は海外のデザインやファッションを日本に紹介する仕事を中心としていた。現在では世界的なデザイナーとして知られるフィリップ・スタルクもテリアンさんが日本に紹介した一人だ。

〈DAMDAM〉創業者のフィリップ・テリアン 自宅 リビング
左のスツールはアフリカ、右は日本のもの。東京の自宅にも椅子は多い。背景はミックスさせつつ、特に惹かれるのはミッドセンチュリーや北欧、ニューエイジのデザイン。

「最初に関わった仕事は、浅草のアサヒビール本社ビルに隣接する建物上の金色のオブジェ。当時は協業していたこともあって、スタルクの椅子もたくさん所有していました。スペースの都合で手放してしまいましたが、今ではもう入手困難なものばかりで、少し後悔しています(笑)。周囲にデザイナーやアーティストが多かったこともあって、彼らの作品を手に入れる機会も自然と増え、次第に椅子にも興味を持つようになりました。家にあるのは、国内外のショップや旅先で蚤(のみ)の市を巡り、少しずつ集めてきたものばかりです」

〈DAMDAM〉創業者のフィリップ・テリアン 自宅 キッチン
キッチンにあるのは、パリの蚤(のみ)の市で見つけたラタンのスツール。「おそらく1960〜70年代のもの。座面が高くて線の細い、こんなラタンのハイスツールが、昔のフランスのバーやカフェのカウンターにはよくありました」

現在、東京と神奈川県の三浦の2拠点で暮らすテリアンさん。週末を過ごすセカンドハウスは、三浦半島の岬の先、太平洋と富士山を望む崖の上に立つ。戦後来日したアメリカ人写真家ホレイス・ブリストルが設計した平屋の木造住宅を、構造を残したまま現在の和洋折衷の住まいへと改修した。

「日本の平屋には、どこかカリフォルニアのミッドセンチュリー建築にも通じる雰囲気がある気がして。いろいろな国のものを交ぜて置いても自然に馴染むし、相性が良いと感じています」

ノル社の《バタフライチェア》
日当たりの良い寝室にある《バタフライチェア》は、リラックスするための椅子。「1930年代のアルゼンチンの建築家3人が作ったデザインで、その後、各メーカーが作っていますが、これはアメリカの〈ノル〉社のもの」
〈DAMDAM〉創業者のフィリップ・テリアン 自宅 本棚
2拠点の一つ、東京の自宅の一角。赤いスチールパイプの椅子は、フランスの学校などの公共施設向けに作られたスクールチェア。パリの蚤の市で手に入れたヴィンテージ。

この家の空気感を調和させているのが点在する椅子の存在だ。リビングにどっしりと構えるのは、60年代、デンマークの〈ホルステブロ・モーベルファブリク〉社が作ったヴィンテージチェア。引っ越しのタイミングで迎え入れた。その隣には、フランス人デザイナー、ピエール・ポランによる〈リーン・ロゼ〉の《ロゼパンプキン》。彫刻的なフォルムでありながら過度な主張をせず、自然に馴染んでいる。ダイニングにはヤコブセンの《セブンチェア》を配置。

「耐久性が高く、どの場所に置いても成立する。流行に左右されず、時間が経っても古びない。本当に優秀な椅子だと思います」

一方、片隅にはアフリカのマラウイ共和国の伝統工芸であるマラウイチェアも。繊細な手仕事が感じられ、特に気に入っているという。キッチンに置かれたヴィンテージのラタンのスツールは、パリの蚤の市で購入したもの。

アルネ・ヤコブセンの《セブンチェア》、アフリカのマラウイチェア
《セブンチェア》はダイニングで使用。ゲストとの時間を支える、最も実用的な椅子。左奥にあるのはアフリカのマラウイチェア。
フィリップ・テリアンさん自宅のリビング
フィリップ・テリアンさんのセカンドハウスは三浦半島の岬の先端、太平洋を望む崖上に立つ築75年以上の平屋。明るいリビングにはラウンジチェア、ソファ、スツールなど、国や時代を超えた家具やオブジェが交ざり合う。

また、この家に元から残されていた椅子は、今ではオブジェとして扱う。近年、特に惹かれているのがスツール。好きが高じて、〈DAMDAM〉オリジナルとして、家具製作会社〈ティンバークルー〉と無垢材のスツールを製作した。

「日本のコンパクトな住空間によく合うと思ったんです。必要な時にさっと使えて、使わなければ隅に収められる。玄関、リビング、寝室と場所を固定せず、用途も限定しない。その自由さがいい」

異なる文化、時代、背景、用途を持つ椅子たちが気持ちよく共存する空間。それぞれが交ざり合いながら、そこに決まり事はない。

〈DAMDAM〉創業者のフィリップ・テリアン 自宅 玄関
〈ティンバークルー〉と製作した削り出しのスツールは、使える材から形を考えた一点もの。木の種類、色や節もさまざまで個性豊か。
カンチレバーチェア
右は昔の家主が置いていった椅子。今ではオブジェとして使用。左は東京・駒場の店で買ったヴィンテージのカンチレバーチェア。

「大切なのは、どんなに時間を経ても魅力が薄れないこと」

旅や仕事の過程で、偶然と直感によって集められた椅子たちは、それぞれ異なる拠点となり、住まいの風景を形作っている。

profile

〈DAMDAM〉創業者のフィリップ・テリアン

フィリップ・テリアン(〈DAMDAM〉ファウンダー)

1956年生まれ。81年に来日後、ヨーロッパのデザイナーや商品を日本に紹介し、ビジネスコンサルティング業務を行う。2003年にPR会社TFCを設立。17年、ジゼル・ゴーとともにナチュラルスキンケアブランド〈DAMDAM〉を設立。

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