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【中央区】原点は、飾らない。――味の三平で知る“札幌という味”

  • 2026.2.24

1950年代、札幌で生まれた一杯の革命

今どきのラーメンは雄弁だ。濃厚さを競い、盛り付けを競い、話題性までも味の一部として差し出してくる。

だが、札幌・大通の文具や画材専門ビルの一角に店を構える「味の三平」は、驚くほど寡黙である。

のし紙や印章の奥に「のれん」

シンプルで美しいラーメン

カウンターに座り、味噌ラーメンを待つ。ほどなくして差し出される一杯は、派手さとは無縁だ。山のようなトッピングも、過剰な演出もない。ただ、湯気とともに立ち上る確かな香りがある。

炒め野菜の甘み、挽き肉の旨味、味噌の深いコク。表面を覆う油の膜が熱を閉じ込め、札幌の冬でも最後まで温かい。

昼過ぎでも行列だった。
出典:リビング札幌Web

15分並んで入店

その日、私の隣にはやけに整った横顔の男性が座った。多分外国の方だ。

黒いコートを静かに脱ぎ、迷いなく味噌ラーメンを注文する。つられて私も同じものを頼む。そして、本当はシューマイを三つ追加したかった。だが、なぜか「ひとつで」と口にしていた。湯気よりも、自分の見栄のほうが熱かった瞬間である。

出典:リビング札幌Web
この後用事がありビールも自粛。無念。

ああ、シューマイよ

運ばれてきたシューマイは、ふっくらとして実に端正だった。

ひとつを大事に味わう自分に、内心で「三ついけたよね」と突っ込む。

けれど、その控えめさもまた、この店の空気に似合っていた気がする。飾らず、足さず、ちょうどいい。

手作りシューマイ、1個70円。
ツウはソースで食べるのだ。
大根の酢漬けも、さっぱりとして美味

1950年代、この店で生まれた味噌ラーメンは、札幌を象徴する味へと育った。

当時主流だった醤油や塩に代わり、濃厚な味噌を合わせた一杯は、寒冷地に暮らす人々の身体を芯から温めた。流行というより、必要から生まれた味だったのだろう。

しょっぱさとは無縁

麺をすする。強すぎないコシがスープをまとい、野菜の甘みと味噌の厚みが静かに広がる。

華やかではない。だが、揺るがない。味の三平の一杯は、主張よりも積み重ねで語る。

出典:リビング札幌Web
出典:リビング札幌Web
出典:リビング札幌Web

店を出るころには、隣のイケメンのことよりも、最後の一滴まで飲み干したスープの余韻のほうが深く残っていた。……いや、正確に言えば、次は迷わずシューマイを三つ頼もうという決意も、しっかり残っていたのだけれど。

湯気の向こうにあるのは、札幌という街の記憶だ。

そしてその片隅には、少しだけ可笑しくて愛しい、自分の小さな物語も混じっている。

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