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札幌で「クマが出づらい場所」を専門家らが分析 大量出没を繰り返さないために【クマ予報2026③】

  • 2026.5.8

専門家らへの取材に基づき、札幌のクマ出没情報を予想する「クマ予報2026」第3回です。

札幌では2025年、クマの出没情報が363件で、記録開始以降、過去最多の件数となりました。
ことし2026年も、また大量出没が起こるのでしょうか。どこに気を付けるべきなのでしょうか。

Sitakke

Sitakkeの連載「クマさん、ここまでよ」では、札幌市と、市の委託を受けて現場調査をしている専門家らに取材をし、気を付けるべき場所とポイントをまとめた「クマ予報2026」をお届けします。

「どこが危険なの?!」とすぐに知りたいかと思いますが、「クマ予報」は間違った見方をすると、逆効果になります。

「雨が降るという予報だったから、傘を持って行って助かった…」
天気予報はそのように暮らしを守るために活用することができますが、クマ予報も「予防」のためにあります。

これからお伝えする内容をみなさんが正しく受け止めて、暮らしと命を守るためにお使いいただけるように、シリーズで一歩ずつお伝えしていきます。

Sitakke
札幌市中央区・2025年10月。自動撮影カメラに映ったクマ(札幌市提供)

第1回は、「何を根拠に予想しているのか」をご説明すべく、札幌市がクマの出没情報に日々どう対応しているのかの裏側をご紹介しました。
第2回は、2026年のクマ予報のベースとして、「2025年の大量出没がなぜ起きたのか」をひも解きました。

今回から、いよいよ2026年の予報に入っていきます。
・ここ数年、注意度が高まっているエリア
・そこから「雨」のち「くもり」つまり「去年と比較してクマが出づらい」エリアの予報
・最後に「雨」つまり「2026年特に気を付けるべき」エリアの予報
という順番でお伝えします。

※クマ予報の見方

クマ予報は、以下の注意事項に沿ってご覧ください。

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①クマ対策に100%はありません

札幌市と専門家の取材に基づいており、第1回で解説したように根拠のある予報です。
ただ、クマ対策に100%はありません。行政が対策を尽くしても、ごみのマナーが守られないエリアがある場合など、そのときの状況によってリスクは変動します。

「降水確率50%だから、折りたたみ傘を持っていこう」=「降らなければそれでよかった」「降っても備えがあってよかった」くらいの気持ちで、備えの参考にしてください。

②出没確率が高いエリアも、怯える必要はありません

「近所に人を積極的に襲うクマがいる、こわくて出歩けない」「このエリアには今年は近づかないようにしよう」という状況までのクマは、現在市内では確認されていません。危険なクマが出てきた際にも、現状すぐに札幌市で対策がとられています。
「あの地域は危険!」と強く警戒したり避けたりする必要はありません。

安心して暮らすために、気を付けてほしいところをお伝えするための予報です。
怯えすぎずに、正しく知って、正しく対策をしましょう。

③出没確率は、時期や人の行動次第で変わります

ここで紹介するのは、2026年4月現在の情報に基づいた長期予報です。時期によっては、出没確率が下がったり上がったりすることもあります。

また、自分の住むエリアの数字だけを見て一喜一憂すると逆効果になります。

出没確率が高いエリアも、正しく対策をすれば、リスクは下げられます。
出没確率が低いエリアも、対策の気を抜けば、リスクは上がります。

予報の理由や、市が取り組んでいる対策、住民もできる対策まで紹介しますので、ぜひ落ち着いて、ゆっくりご覧ください。

ここ数年、注意度が高まっているエリア

札幌市と、市が調査業務を委託しているNPO法人EnVision環境保全事務所の専門家に、市内全域のざっくりとしたクマ出没確率を聞きました。

まずは、2026年に限らず、ここ数年、注意度が高まっているエリアについてお伝えします。

Sitakke

札幌市を上空から撮影した画像です。山と住宅地の距離が非常に近いのがわかります。
クマ予報マップは、まず大まかに、山を黄緑、住宅地を白で塗り分けて作成しました。

(※用語説明:「出没」=目撃とは区別して、足跡などの痕跡も含めています)
(※山奥は塗りつぶしを省略しています)

(※細かい住所単位ではなく、札幌市全体を俯瞰して見た状態で、おおよそで塗りつぶしています。自宅にギリギリかかっていないから大丈夫…ではなく、クマは移動しますので、移動範囲も含めて大まかにとらえてください)

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ここ数年のベースとなるクマ予報マップ。桃色のエリアが出没確率30~40%

山と住宅地が接するエリア、桃色で塗りつぶしている範囲が、「出没確率30~40%」という予報です。
それ以外のエリアも、出没確率はゼロではありません。

じわじわと変わってきた、札幌のクマと人の距離

まず「出没確率30~40%」のエリア。
山と接していたら出没リスクが高いのは当たり前…と思うかもしれませんが、少し前まではそうではありませんでした。

それは去年までの実際の出没マップを振り返るとわかります。

こちらは2007年の札幌市内のクマ出没マップです。

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続いて、2012年はこちら。

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そして、こちらが2025年です。

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この20年ほどで、出没エリアが住宅地側へと次第に広がっているのがわかると思います。札幌市では例年、最も出没件数が多いのは南区ですが、中央区や西区、手稲区も状況が変わってきています。

この傾向から、「これまでクマが出たことはない」と思っている地域のみなさんも、じぶんごとにしてクマ対策を考えなければいけない、ということが示唆されます。

次に、白になっている住宅地も、「出没確率0%」ではない理由をご説明します。

白いエリアで人身事故も…

山と直接接していないエリアでも、出没や人身事故が起きてきました。
川や緑地などで、クマの通り道がつながっている場合があります。

Sitakke
札幌市東区の商業施設の敷地内を走るクマ・2021年6月

2021年、札幌市東区の住宅地に1頭のクマが迷い込み、4人が重軽傷を負いました。このクマは川や用水路を伝って住宅地に迷い込んだとみられています。

北区や東区でも、特に川沿いでは、「隣接する石狩市や当別町などで、石狩川周辺での出没情報があった場合には、注意度を高めてほしい」といいます。

厚別区も、南区の真駒内公園や清田区、隣接する北広島市や江別市で出没があった際には、特に注意が必要です。
2019年、札幌市厚別区・江別市・北広島市にまたがる「野幌森林公園」で78年ぶりにクマが出没しましたが、このクマはその前の月に真駒内公園で目撃されたクマとDNAが一致しました。その際、清田区や北広島市大曲を通って野幌森林公園に入ったとみられています。

さらに、秋の山の実なりが悪かった場合は、山が近いエリア、畑や家庭菜園があるエリアを中心にリスクが上がり、それぞれ10~20%ほど確率が高くなるといいます。

もう出没が「まさか」とは言えない時代…ひとごとに思わずに、札幌市民全体でクマ対策を考える必要があります。

さらに第1・2回の記事でお伝えしてきた根拠をあわせると、もう少し具体的なエリアごとのポイントも見えてきます。

「雨」のち「くもり」のエリア

2025年、過去最多の出没件数となった札幌市内では、不安な日々を過ごされた地域の方も多くいると思います。
「今年も同じようになるのだろうか」と気になると思いますので、まずはその地域についてお伝えしていきます。

2025年、特に出没確率が高まっていたエリア

2025年に、特に出没確率が高まっていたエリアに、クママークを置きました。

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2025年秋時点のクマ予報マップ。桃色のエリアが出没確率30~40%。クママークのエリアは50~70%

次の5カ所です。
①手稲区手稲金山・稲穂
②西区西野・平和
③南区藤野
④豊平区羊ヶ丘
⑤三角山~藻岩山周辺

このエリアは、2025年の秋の段階ではベースの30~40%からさらに上がり、出没確率50~70%にまでなっていたといいます。
2026年はどうなるのか、それぞれについて解説していきます。

まず①~③についての予報は、「去年ほど大変にはならないでしょう。少し落ち着きます」。
その理由は、「去年のうちに市が対処をしたから」です。

出没情報が積み重なると、「そんなにたくさんクマが増えているんだ」と感じてしまいますが、実はその大半は同じクマです。
なので、むやみやたらに対策をするのではなく、繰り返し住宅地に現れたり、被害を出したりするクマ、「問題個体」に注目して対処するのが重要です。

①札幌市手稲区手稲金山・稲穂

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2025年10月・札幌市手稲区 自動撮影カメラに映ったクマ(札幌市提供)

手稲区では2025年9~10月にかけて、手稲金山や稲穂で、クマの目撃のほか、フンや爪痕などの出没情報が相次ぎました。

10月15日には手稲金山の高齢者施設の敷地内でクマの痕跡が見つかり、17日には施設利用者に目撃されるなど、繰り返し来ている様子が確認されました。18日にも施設の関係者が隣接する林の中にいるクマを目撃して、警察に通報しました。クマは現場付近に居座り、その後駆除されました。

札幌市は、このクマが稲穂に出没していたクマと同じ個体と見ています。
そのため、去年の秋のような連日の出没のリスクは下がりました。

ただ、どのエリアでも1頭駆除すればリスクがゼロになるわけではなく、次のクマが入ってきたり、定着したりしないようにする対策が必要です。
実際に手稲区では、駆除の後も近くで数件、出没情報が寄せられています。

ですので「晴れ」ではなく「くもり」ですが、2025年秋に60~70%くらいまで高まっていたリスクは、ベースの30%ほどに落ち着いたということです。

②札幌市西区平和・西野

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札幌市西区・2025年9月

西区平和では2025年9月、住宅地にある公園で、人身事故が起きました。
午後8時ごろ、犬の散歩をしていた人が、親子のクマ2頭と遭遇しました。男性が身を守ろうと右腕を前に出したところ、母グマに引っかかれ、とっさに抵抗すると、クマは逃げていったといいます。

この母グマもその後、西区西野で捕獲されています。

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札幌市西区・2025年10月

西野では別の親子グマの出没も10月に相次いでいました。母グマが先に箱罠で捕獲され、その後も子どものクマ2頭が出没を繰り返したとみられています。子ども2頭は、道内初の「緊急銃猟」で捕獲されました。

これまでは、夜間や住宅地での発砲は原則、法律で禁止されていて、緊急度の高い場合に特例的に警察官の命令で発砲できることになっていました。ただ、クマが夜間だけに繰り返し出没する場合など、発砲できずに被害が長期化するケースもありました。

この法律が改正され、条件を満たすと自治体の判断で発砲ができることになったのが「緊急銃猟」です。ただ条件のハードルは高く、撃つ方向が山であるなど、銃の弾が止まる「バックストップ」があることや、人や車の通行を制限することなど、人の安全を確保した上での実施が必要です。
2025年、北海道内で実施された緊急銃猟はこの1件のみでした。

③札幌市南区藤野

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2025年6月・札幌市南区に設置されたカメラで撮影。重なっているが、親子とみられるクマ3頭(札幌市提供)

札幌市南区藤野では、9月末に親子のクマの出没が2日連続で確認されました。

実はこの母親は、札幌市では2017年からDNAを識別していたクマでした。2019年、2023年にも複数回出没が確認されていて、しばらく落ち着いていましたが、2025年6月と9月にまた住宅地に現れるようになりました。

このクマも2025年に捕獲されました。データを蓄積しておくことで、過去の出没と照らし合わせることができるので、このエリアにまだ気を付けるべきクマがいるかどうかを長期的にとらえ、判断することができます。

以上3つのエリアでは、いずれも繰り返し出没して事故のリスクが高まっていた「問題個体」のクマを捕獲しています。
過去数年でも、「問題個体」を捕獲したエリアは、翌年の出没数が大きく減少しています。

そのため、これらのエリアの出没は、2026年は少し落ち着く見込みです。
またリスクが高まることのないよう、日常の対策を継続しましょう。

重要なのは「説明できること」

2025年はこれまでにない「大量出没」でしたが、EnVision環境保全事務所の早稲田宏一さんは、「出没にはある程度の根拠や理由があり、突然わけもわからないことが起きているよ
うな状態ではない」と話します。

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現場調査をする札幌市とハンターら(2025年)

9月の人身事故についても、クマは子どもを連れている母親でした。母グマは子どもを守るために、ばったり出会った人を攻撃することがあります。

ほかのエリアも、2025年になって突然出没が始まったわけではなく、この20年ほどでじわじわと出没情報が広がってきていた場所でした。

札幌市ではEnVision環境保全事務所と一緒に、出没のたびに現場調査をし、そのデータを積み重ねて分析しています。第1回の記事で説明したように、カギになるのはDNAで、クマを個体ごとに分析しています。

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札幌市西区・2025年10月。自動撮影カメラに映ったクマ(札幌市提供)

早稲田さんは、「単に『クマが出没した』ではなく、 どんなクマが、なぜ出没したのか が大事。現場調査をしっかり積み重ねると、原因がわかって、対策につなげることができます」と話します。

札幌市では大量出没の中でも、優先して対策すべき個体を見極め、ハンターや警察らと連携して対処してきました。単に捕獲を増やすのではなく、繰り返し出ているクマの情報を蓄積して、そのクマに対して、捕獲とそれ以外の選択肢も含めて、戦略的に対応しています。

その結果、緊急度が高く、捕獲が必要だと判断したエリアではおおむね「問題個体」の捕獲を終えています。

ただ、まだ「気になっている」クマがいるエリアが残っています。
次回の記事でお伝えします。

取材協力:札幌市環境共生担当課・坂田一人さん、清尾崇さん、NPO法人EnVision環境保全事務所・早稲田宏一さん、中村秀次さん

天気表現の監修協力:HBCウェザーセンター・近藤肇気象予報士

連載「クマさん、ここまでよ」
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文:Sitakke編集部IKU
ドキュメンタリー映画『劇場版 クマと民主主義』監督。2018年にHBCに入社し、報道記者として取材した島牧村をきっかけに、人にできるクマ対策はたくさんの選択肢があることを知る。「Sitakke」や「クマここ」の運営、放送やイベントなどを通じて取材・発信に取り組んでいる。

※掲載の内容は取材時(2026年1~4月)の情報に基づきます。

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