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【クマ予報2026】札幌で出没リスクが高いのはどこ?理由は?専門家らの分析まとめ④

  • 2026.5.8

専門家らへの取材に基づき、札幌のクマ出没情報を予想する「クマ予報2026」第4回です。

札幌では2025年、クマの出没情報が363件で、記録開始以降、過去最多の件数となりました。
ことし2026年も、また大量出没が起こるのでしょうか。どこに気を付けるべきなのでしょうか。

Sitakke

Sitakkeの連載「クマさん、ここまでよ」では、札幌市と、市の委託を受けて現場調査をしている専門家らに取材をし、気を付けるべき場所とポイントをまとめた「クマ予報2026」をお届けします。

「どこが危険なの?!」とすぐに知りたいかと思いますが、「クマ予報」は間違った見方をすると、逆効果になります。

「雨が降るという予報だったから、傘を持って行って助かった…」
天気予報はそのように暮らしを守るために活用することができますが、クマ予報も「予防」のためにあります。

これからお伝えする内容をみなさんが正しく受け止めて、暮らしと命を守るためにお使いいただけるように、シリーズで一歩ずつお伝えしていきます。

第1回は、「何を根拠に予想しているのか」をご説明すべく、札幌市がクマの出没情報に日々どう対応しているのかの裏側をご紹介しました。
第2回は、2026年のクマ予報のベースとして、「2025年の大量出没がなぜ起きたのか」をひも解きました。

第3回ではまず「ここ数年、注意度が高まっているエリア」、そこから「雨」のち「くもり」つまり「去年と比較してクマが出づらい」エリアの予報をお伝えしました。

今回は「雨」、つまり「2026年、特に気を付けるべき」エリアの予報をお届けします。

※クマ予報の見方

クマ予報は、以下の注意事項に沿ってご覧ください。

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①クマ対策に100%はありません

札幌市と専門家の取材に基づいており、第1回で解説したように根拠のある予報です。
ただ、クマ対策に100%はありません。行政が対策を尽くしても、ごみのマナーが守られないエリアがある場合など、そのときの状況によってリスクは変動します。

「降水確率50%だから、折りたたみ傘を持っていこう」=「降らなければそれでよかった」「降っても備えがあってよかった」、くらいの気持ちで参考にしてください。

②出没確率が高いエリアも、怯える必要はありません

「近所に人を積極的に襲うクマがいる、こわくて出歩けない」「このエリアには今年は近づかないようにしよう」という状況までのクマは、現在市内では確認されていません。危険なクマが出てきた際にも、現状すぐに札幌市で対策がとられています。
「あの地域は危険!」と強く警戒したり避けたりする必要はありません。

安心して暮らすために、気を付けてほしいところをお伝えするための予報です。
怯えすぎずに、正しく知って、正しく対策をしましょう。

③出没確率は、人の行動次第で変わります

ここで紹介するのは、2026年4月現在の情報に基づいた長期予報です。時期によっては、出没確率が下がったり上がったりすることもあります。

自分の住むエリアの数字だけを見て一喜一憂すると逆効果になります。

出没確率が高いエリアも、正しく対策をすれば、リスクは下げられます。
出没確率が低いエリアも、対策の気を抜けば、リスクは上がります。

予報の理由や、市が取り組んでいる対策、住民もできる対策までしっかり紹介しますので、ぜひ落ち着いて、ゆっくりご覧ください。

クマ予報マップの前提

まずクマ予報マップの前提のおさらいです。
札幌市と、市が調査業務を委託しているNPO法人EnVision環境保全事務所の専門家に、出没確率を聞いて作成しました。

(※用語説明:「出没」=目撃とは区別して、足跡などの痕跡も含めています)
(※山奥は塗りつぶしを省略しています)

(※細かい住所単位ではなく、札幌市全体を俯瞰して見た状態で、おおよそで塗りつぶしています。自宅にギリギリかかっていないから大丈夫…ではなく、クマは移動しますので、移動範囲も含めて大まかにとらえてください)

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2025年秋時点のクマ予報マップ。桃色のエリアが出没確率30~40%。クママークのエリアは50~70%

こちらは去年2025年秋時点のクマ予報マップです。
桃色の範囲は、2025年・2026年に限らず、ここ数年一貫して注意度が高まっているエリアです。
クママークを置いたのは、そのうち2025年秋に特に出没確率が高まっていたエリアです。

この5か所のうち①~③のエリアでは2025年のうちに対策が進んだことを前回の記事でお伝えしましたが、今回は2026年に特に気を付けたいエリアについて解説していきます。

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2026年4月時点でのクマ予報マップ。桃色のエリアが出没確率30~40%。クママークのエリアは50%

主に「④豊平区羊ヶ丘」「⑤三角山~藻岩山周辺」に注目します。
ただ、この地域だけが特に注意が必要ということではありません。

実際には南区など、ほかにも確率の高いエリアはあるのですが、この2カ所のポイント解説をするのは、「東京で雪が降る」ときの天気予報と同じような理由です。

札幌でのクマの出没エリアは、ここ20年ほどで大きく広がっています。

こちらは2007年の札幌市内のクマ出没マップです。

Sitakke

続いて、2012年の出没マップはこちら。

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そして、こちらが2025年の出没マップです。

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この傾向から、「これまでクマが出たことはない」と思っている地域のみなさんも、じぶんごとにしてクマ対策を考えなければいけない、ということが示唆されます。

天気予報では、札幌市民は慣れた雪でも、関東の慣れていない地域にとっては少しの量で転倒などの危険が高まるため、注意喚起のポイント解説をします。

クマについても、長年クマが暮らしていることを意識して対策をしながら生活している地域では、ある程度対策がうまくいっていることが確認されているので、今回は、ここ数年で出没が増えた一方で、まだ人がクマ対策に慣れていないエリアについて注目します。

札幌市がどんな対策をしているのか、住民は何に気を付けるべきなのかも解説していきます。ピックアップするエリア以外にお住まいの方も、出没確率はゼロではありませんので、ぜひご覧ください。

なぜこの2カ所なのか

第1回・第2回の記事で解説したとおり、キーワードは「DNA」と「定着しているメス」です。

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札幌市内の山林でのヘアトラップ調査。自動カメラで撮影(画像提供:札幌市)

札幌市では出没現場の調査や、山の中に設置した「ヘアトラップ」(木に体をこすりつけるクマの習性を利用して、クマの毛を採取するもの)を通して、クマのDNAを収集しています。

そのデータ分析から、三角山~藻岩山周辺と豊平区羊ヶ丘周辺に、定着しているメス/親子のクマがいることがわかっています。

ただ、EnVision環境保全事務所の中村秀次さんは、「すごく恐ろしいクマがいる、ということではない」といいます。
「基本的に、『クマ=危険』ではありません。出会ったら必ず急に襲ってくるような動物ではありません。豊平区で私たちが気にしているクマも、人に出会って向かってきたりする様子は今のところ確認されていません」

その上で、「怖いのは、『人を襲うとエサが手に入る』『人里に行くとエサが手に入る』とクマが学習してしまうことです。山際で生ゴミを放置したり、食べものの入ったカバンを置き去りにしたりすることは避けてほしいです」と話します。

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札幌市豊平区羊ヶ丘・2025年11月。クマの足跡(札幌市提供)

豊平区羊ヶ丘周辺では、2025年にクマの出没情報が複数寄せられていますが、時間帯が夕方や朝方であったり、道路ではなく水路を利用して移動していたりと、まだ人目を避けている様子が感じられます。作物を育てている畑もありますが、電気柵など対策をしていることもあり、被害は確認されていません。

ただ、「気にしている」理由は、人の生活エリアに近づきすぎていることです。
人が働く事務所の近くや、バス停の近くなどで目撃されていて、国道36号線に近づいてきています。それが単発ではなく、継続的に出没情報が寄せられているため、「定着されるのは見過ごせない」と気にかけています。

このエリアは、10年ほど前までは定着しているメスのクマはまったくいなかったといいます。ただ、山から緑がつながっていて、ときどきオスのクマが移動で使っているルートであることはわかっていました。分布が拡大するにつれ、そうした場所にも定着するメスがでてきてしまっています。

⑤三角山~藻岩山周辺

これまでの記事で解説しましたが、札幌市ではメスのクマの対策に着目しています。地道なデータの蓄積によって、どのエリアに対策すべきクマがいるかを割り出しています。

その結果、複数のメスのクマが定着していることがわかっていて、かつ人が観光などで利用する頻度の高い、三角山から藻岩山の周辺を「ヒグマ対策重点エリア」と位置づけました。

この地域では、2007年ごろはほとんどクマの出没情報がなく、出没確率は10%ほどだったものの、近年は30~40%に高まってきています。

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2025年11月・札幌市中央区の円山動物園に設置されたカメラで撮影(札幌市提供)

このエリアでは、2025年10~11月にも、出没情報が相次ぎました。
円山動物園の園内や、北海道神宮の駐車場での目撃もありました。

10月には住宅地に出没したクマ1頭を、11月には円山動物園内に設置した箱わなで1頭を捕獲しています。

出没を繰り返していたクマが捕獲されると、通常、そのエリアでの出没はいったんは落ち着きますが、これまでの調査で、三角山~藻岩山周辺には、まだ少なくとも3頭のメスがいることがわかっています。
こちらも人に向かってくるような問題行動は見られていませんが、住宅地に繰り返し出没することのないよう、引き続き注意が求められます。

札幌市はどんな対策をしているのか

2025年の傾向からリスクを洗い出した札幌市は、3月末までの間に、春に向けて対策を進めてきました。

藻岩山周辺と、豊平区羊ヶ丘に近い白旗山周辺とでは、「春期管理捕獲事業」を行いました。住宅地へのクマの出没を防ぐことと、ハンターの育成を目的に、北海道庁が進めている事業です。

積極的にクマを駆除したかつての「春グマ駆除」とは違い、むやみに駆除をしているわけではありません。札幌市では現場調査などに基づいて、対策が必要なクマがいる場所を絞り込み、そこの人の利用頻度も考慮して場所を決めています。

すべてのクマを捕獲することは目的にしていないため、人の利用が少ない山の奥には、人と距離をとって暮らしているクマがいることも、調査で把握しています。
その上で、出没エリアが広がりすぎているため、その拡大をくいとめ、クマの生息エリアを奥山へ押し戻そうとする考え方です。

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札幌市中央区・2026年3月

捕獲以外の対策もしています。たとえば、「ヒグマ対策重点エリア」内に位置する、札幌市中央区の円山西町には、クマ対策用のごみ箱を設置しました。
クマは器用で単純な扉は開けることができますが、このごみ箱は、取っ手に指を入れて押してから引っ張る、という人の手でないと難しい動作が必要です。

藻岩山周辺ではクルミの伐採を行いました。クルミはクマの好物で、クマを引き寄せたり、定着させたりする原因になり得ます。自然環境も大切なのですべては伐採しませんが、住宅地への出没リスクなどから優先すべき場所を考えたといいます。

白旗山と藻岩山を中心に、登山者への注意喚起もしたいと話していました。

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清尾さん(札幌市中央区円山西町でのヒグマ勉強会・2026年1月)

札幌市環境共生担当課係長の清尾崇さんは、1月に開かれたヒグマ勉強会で、こう話していました。
「出没エリアが広がっている中で、捕獲も必要なことだとは思います。ただクマが捕獲されて『よかったね』で終わると、また次のクマが出て来る。必要な捕獲はしながらも、また次のクマが入ってこないための対策をする、それを並行してやっていかないとクマ問題の解決にはつながらないと思っています」

この勉強会が開かれたのも、ごみ箱を設置した円山西町です。町内会が自ら学び、話し合う機会を継続的に作っていて、ごみ箱についても設置場所の検討や住民への周知などに主体的に関わってきました。
自治体の対策はもちろん必要ですが、住民も参加していくことで、より「クマに強い地域づくり」が進められます。

住民は何に気を付けたらいいのか

出没確率の高いエリアでは何に気を付けたらいいのか、聞きました。

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【住宅地では】
・ごみ出しのルールは守りましょう(朝に出す、ポイ捨てをしないなど)
・畑や家庭菜園では電気柵などでクマの侵入を防ぎましょう
・出没情報をこまめにチェックしましょう

【登山では】
・音を出し続け、人がいることを知らせましょう(クマ鈴など)
・単独行動をせず、複数人で行動しましょう

出没確率40~50%でも特別なことはなく、基本的な対策を、日常的に続けることが大切です。
今回ご紹介した以外のエリアも出没確率がゼロではありませんので、どこに住んでいても、どの山に行くにしても、共通で使えるポイントです。

HBCウェザーセンターの近藤肇気象予報士に、住民はクマ予報をどうとらえたらいいのか、天気予報になぞらえて聞いてみました。
防災士でもある近藤さんは、「クマ予報の考え方はハザードマップに近いかもしれませんね。土砂災害警戒区域は住宅地にもあって、マップ上で黄色で塗られているところがあるのですが、住民の皆さんはいつも警戒しているわけではないですよね。土砂災害に関しては、基本的には大雨や地震のときだけ警戒すればいいのです」と話します。

ハザードマップもクマ予報も、常に怯えたり、近寄らないようにしたりする必要はありませんが、リスクがあると知っておくこと、そしていざというときにどうしたらいいかを考えておくことが重要、という点で、共通点がありそうです。

クマ予報は変えられる

一方、天気予報と違うのは、クマ予報は、人の行動次第で変えられるという点です。

今回のクマ予報は、2025年までの傾向をもとにしていますが、札幌市は今年に入って、冬の間も対策を続け、リスクを下げようとしてきました。

住民や登山者一人ひとりの行動によっても、リスクを上げてしまう場合もあれば、意識して下げることもできます。

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前回の記事でお伝えした、2025年に不安な日々を過ごし、問題個体が捕獲された地域の方は、予報通りリスクが下がったままの一年を過ごせるように、怯えすぎず、かつまた次のクマが定着しないように対策を続けましょう。

この記事でお伝えした、今気になるクマがいる地域の方は、リスクを下げられるように、基本の対策を徹底しましょう。

札幌では例年は夏、2025年は秋にクマ出没のピークを迎えてきました。
ことしはクマが出てから慌てるのではなく、予報をもとに、春から対策を意識していきましょう。

この1年をみなさんが事故なく、安心して暮らせるように願って、「クマ予報2026」をお届けしました。

取材協力:札幌市環境共生担当課・坂田一人さん、清尾崇さん、NPO法人EnVision環境保全事務所・早稲田宏一さん、中村秀次さん

天気表現の監修協力:HBCウェザーセンター・近藤肇気象予報士

連載「クマさん、ここまでよ」
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文:Sitakke編集部IKU
ドキュメンタリー映画『劇場版 クマと民主主義』監督。2018年にHBCに入社し、報道記者として取材した島牧村をきっかけに、人にできるクマ対策はたくさんの選択肢があることを知る。「Sitakke」や「クマここ」の運営、放送やイベントなどを通じて取材・発信に取り組んでいる。

※掲載の内容は取材時(2026年3~4月)の情報に基づきます。

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