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【アカデミー賞2026】今さら聞けない。『ワンバト』のポール・トーマス・アンダーソン監督って何者?

  • 2026.2.19
Matt Winkelmeyer / Getty Images

『ワン・バトル・アフター・アナザー』のポール・トーマス・アンダーソン監督は、これまでにアカデミー賞11回ノミネートされただけでなく、世界三大映画祭の全てで監督賞を受賞した実力派。現代アメリカ映画を語るうえで欠かせない存在のひとりだ。通称『ワンバト』と呼ばれる最新作も批評家から絶賛され、2026年アカデミー賞の作品賞など主要賞候補として注目を集めている。ここではポール・トーマス・アンダーソン監督の華麗なる歩みを振り返る。

若くして監督を志し、大学は“わずか2日”で中退

1997年、20代の頃のポートレイト。 Donald Maclellan / Getty Images

ポール・トーマス・アンダーソンは1970年6月26日、ロサンゼルス生まれ。父はラジオやテレビで活躍した著名パーソナリティ、アーニー・アンダーソン。ショービジネスに囲まれて育った彼は、幼い頃から演出に強い関心を抱いていたという。2021年のインタビューでは、「母は、僕が26歳や27歳で監督を始めたわけじゃないと言う。4、5歳のころから始めていた、とね。みんなを集めてショーを仕切っていたらしい」と振り返っている。

ニューヨーク大学に進学するも、在籍はわずか2日間。短編映画制作に専念するため中退した。その後1993年、フィリップ・ベイカー・ホール主演の短編『Cigarettes & Coffee』を発表。これがキャリアの礎となった。

転機となったのは1990年代後半から2000年代初頭にかけて。長編デビュー作『ハードエイト』(短編をもとに製作)、『ブギーナイツ』、そして『マグノリア』で一躍注目を浴びる。大胆さと複雑さ、そして感情のうねりを重視する独自のスタイルを確立した。

2002年『パンチドランク・ラブ』の頃に撮られたポートレイト。 J. Vespa / Getty Images

アカデミー賞11回ノミネートの実績

その後も『パンチドランク・ラブ』(2002)、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)、『ザ・マスター』(2012)、『ファントム・スレッド』(2017)、『リコリス・ピザ』(2021)など話題作を次々に発表。批評家や映画人から厚い支持を受け、アカデミー賞の常連候補に。さらにレディオヘッドやマイケル・ペンらのMVも手がけるなど、その活動の幅を広げてきた。

これまでにアカデミー賞11回ノミネートという輝かしい実績を誇り、『リコリス・ピザ』では作品賞・監督賞・脚本賞の3部門でオスカーにノミネート。BAFTA賞やゴールデングローブ賞でも高い評価を受けてきた。世界三大映画祭においては、『パンチドランク・ラブ』でカンヌ、 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』でベルリン、『ザ・マスター』でベネチアの監督賞を獲得している。

マヤ・ルドルフとの出合いは?

Taylor Hill / Getty Images

パートナーは俳優マヤ・ルドルフ。ふたりは、20年以上にわたり交際を続けるハリウッド屈指の“静かなビッグカップル”として知られる。出会いは2000年代初頭。ルドルフがレギュラー出演していた『サタデーナイトライブ(SNL)』のアフターパーティーだった。2024年のインタビューでルドルフは、「彼はスケッチで私を見て、“あの子と結婚する”と言ったらしい。でも私はその場にいなかったから、本当かどうかは分からない。ただ優しく言ってくれただけかも」と笑いながら明かしている。

ほどなくして交際をスタートさせたふたりは、現在パール、ルシール、ジャック、ミニーという4人の子どもを育てている。ルドルフは彼を「夫」と呼び、ふたりの間には4人の子どもがいるが、法的な結婚はしていない。ルドルフは「“夫”と呼ぶのは、その意味がみんなに伝わるから。彼は子どもの父親で、一緒に暮らしているパートナー。私たちはどこにも行かない」と語っている。

プライベートを大切にする大物カップル

Hollywood To You/Star Max / Getty Images

共に著名人でありながら、互いについて多くを語らないのもこのカップルの特徴だ。プライベートを大切にし、レッドカーペットに揃って登場する機会はほとんどなく、SNSでも互いについて公に語ることもほぼない。それでも時折、仕事を通じて絆の一端が垣間見える。アンダーソンは『インヒアレント・ヴァイス』や『リコリス・ピザ』にルドルフをキャスティング。2015年、ルドルフはテレビ番組で「一緒に仕事に行き、役になりきるのは本当に楽しかった。彼の仕事ぶりを見るのは喜び。ポールは素晴らしい監督」と語っている。

またアンダーソンは、体調を崩した際にルドルフが看病してくれた経験が『ファントム・スレッド』の着想になったと明かしている。「病気になると最初は不機嫌になるし、認めたくない。でも本当に寝込むと、助けが必要になり、無防備になる。インフルエンザで寝込んでいたとき、妻(マヤ)が優しく見つめてくれて、“このまま1、2週間こうしていたいと思っているのでは?”と感じた」と振り返った。

2018年のNBCによるオンラインQ&Aでアンダーソン監督は、「ルドルフにどれくらい笑わせられているか?」と問われ、「毎日」と即答。華やかな世界の裏で、静かに、しかし確かに続くふたりのパートナーシップは、ハリウッドでも稀有な存在と言えるだろう。アカデミー賞のなりゆきにも期待したい。


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