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注目度急上昇中のベルリン・ファッションウィークを現地レポート!

  • 2026.2.19
Andreas Hofrichter, Boris Marberg, James Cochrane, Finnegan Koichi Godenschweger, Sebastian Reuter

2026-27年秋冬ベルリン・ファッションウィークが、2026年1月30日から2月3日にかけて開催。若手デザイナーの発掘やサステナビリティに力を入れ、その唯一無二の存在感で、今、世界から注目を集めている。

今季のランウェイショーでは、柳川荒士さんがデザインを手がける「ジョン ローレンス サリバン」が日本勢として初参加。デザイナー同士の距離感も近く、どこかアットホームな雰囲気のショー会場やショールーム。また、多様なルーツを持つデザイナーたちのパワーは圧巻!

そんな今注目のベルリン・ファッションウィークを主催するドイツ・ファッション協会のCEO スコット・リピンスキーさんへのインタビューと合わせて、マイナス10℃を下回る極寒のベルリン各地を熱気に包んだ4日間の様子をお届け!

海外からの視線が熱い、その理由は?

ベルリンに集まる世界中のバイヤーやプレスが増加中! 彼らが注目しているのは、新進気鋭の若手デザイナーたち。彼らの強烈なアイデンティティを表現したエッジィなデザインに加え、サステナビリティを念頭に置いたものづくりの姿勢が当たり前に浸透している点が注目ポイント。

その才能を加速させているのが、卓越したクリエイティビティとサステナビリティを備えた若手デザイナーを支援するプログラム「ベルリン・コンテンポラリー」。ベルリン州経済・エネルギー・公共企業局のバックアップを受け、厳格な審査を勝ち抜いた19ブランドには、それぞれ2万5000ユーロ(約463万円)の賞金が授与。ファッションウィーク中に各コレクションが発表された。

Ben Mönks, Finegan Koichi Godenschweger, Ines Bahr

サイドイベントにも、サステナビリティ要素を発見。例えば、世界最大級の越境ECプラットフォーム「イーベイ」とドイツ・ファッション協会のタッグによるトークイベントシリーズでは、業界の変革とサステナビリティがメインテーマとなった。他にも、ベルリンにある絵画館ゲメールデガレリーでの特別展が同時開催されるなど、アートとモードが交差するベルリンらしい豊富なプログラムが並んだ。

「今季のコレクションからは、より一層強い“フリーダム・インクルージョン・ダイバーシティ”のムードが感じられるはずです」と、スコット・リピンスキーさん。「私たちが社会で教え込まれる“規範”を脱ぎ捨て、あらゆる個性を受け入れること。ファッションを通して、そうしたムードを醸成したいです」(スコット・リピンスキーさん)

多様なデザイナーが輝くプラットフォームに

ベテラン勢が安定感を見せるなか、ベルリンの熱源となっているのは間違いなくローカルの次世代デザイナーたちだ。デザインやメッセージ性の幅も広く、また独自の世界観で熱狂的なファンコミュニティを醸成している。

「学生や学校を卒業したばかりのデザイナー支援から、すでにショーを数回経験し、小売店を持つような次世代ブランド向けの支援、そして成熟したブランド向けの国際化の支援まで。デザイナーのフェーズに合わせて、多角的なサポートを行っています」(スコット・リピンスキーさん)

「『ファッション×クラフト』プログラムでは、『イーベイ』と英チャールズ国王のチャリティ財団である『キングス・ファウンデーション』が連携し、若手デザイナー5名を支援しました。彼らは1年間、イギリスやドイツの天然染色やレース編みに加え、木工などの異分野の技法も習得します。それらの経験をもとに制作された作品はゲメールデガレリーで展示されています。ファッションの新たな可能性を提示する取り組みです」(スコット・リピンスキーさん)

若手デザイナー5名による計24点の作品の素材には、企業の廃棄在庫が再活用。伝統的な職人技と現代の循環型経済を融合させる試みでもある。これらの作品は、世界的な名画を収蔵するゲメールデガレリーで展示中(Fashion x Craft: Echoes of Tomorrow“, Exhibition View, Gemäldegalerie 2025, Collection: V-Collective) Anasteisha Danger

今、求められるファッションシーンを目指して

ベルリン・ファッションウィークで熱狂するのは、ファンコミュニティだけではない。国内外のメディアやバイヤー、欧州各国のファッション協会も参加し、対等にコミュニケーションを取り合う姿があちこちに。

ファッションウィークの初日には、ドイツ・ファッション協会主催のディナーが開催され、ショーやプレゼンを行うデザイナーたちが登場し、交流。シーズンをまたいで複数回参加してきた各国のゲストたちが、旧友と再会するようにデザイナーと会話する場面も。ランウェイショー後には拍手喝采や歓声はもちろん、バックステージまでねぎらいの言葉をかけに走る仲間のデザイナーたちの姿から、ファッションを共通言語とした温かいコミュニティの存在が垣間見える。

それは、特定の権威や国籍といった境界線に縛られることなく、多様なバックグラウンドを持つ才能を受け入れるという、現代のファッションシーンにふさわしい時代性が色濃く反映されているかのよう。

「デザイナーは競争相手ではなく、ともに成長し合う同志であると考えています。同じ価値観を共有するデザイナーであれば、ベルリン拠点ではなくても私たちは歓迎します。これまでも政治的・社会的な背景を考慮して、ウクライナやアフリカなどの特定の地域のデザイナーからはじめ、現在はより広く、価値観を共有する国際的なデザイナーを迎え入れています。こうした国境を超え、理念でつながったエコシステムの形成が、お互いの創造力を高め合うことにもつながっています。そして、それが私たちのコミュニティを強固なものにしているのです」(スコット・リピンスキーさん)

ウクライナのデザイナーが表現したかったこと

2022年2月24日(現地時間)のロシアによるウクライナ侵攻から、まもなく4年。日々のニュースで現地の動向に触れる機会が少なくなった今、遠く離れた日本で彼らの日常に思いをはせることは、以前よりも難しくなっているのかもしれない。

そんななか、ベルリン・ファッションウィークで力強いメッセージを放ったのが、ウクライナを拠点とするブランド「パリンジェンズ(PLNGNS)」だ。廃棄されたスニーカーのみで構成され、すべて手作業で作られる「ICONIC」ラインと、在庫生地や生産余剰品を組み合わせた「SIGNATURE」ラインの2つで構成された本コレクション。

一見するとエッジィなアップサイクル・コレクションだが、雪をかぶったようなメイクを含め、そこに表現されたのは、母国で続く人道危機だ。モデルがランウェイを走る演出では、消費の速さ(ファストファッション)も風刺している。

「ファッションは“アティチュード(態度)”を表明するツールです。ショーやコレクション、時には政治的ステートメントを通じて価値観が表現すること――それは私たちがもっとも歓迎すべきことなのです」(スコット・リピンスキーさん)

日本人デザイナーが今季から参加!

日本勢として初の参加を果たしたのが「ジョン ローレンス サリバン」。今季は、デザイナー柳川荒士さん自身の“プロボクサーとしてのバックグラウンド”と、北欧ブラックメタルの“禁欲的なアティテュード”が融合したコンセプトでコレクションを発表。ベルリン・ファッションウィーク初挑戦の感想を柳川さんご本人にお伺いした。

「本来、衣服は纏うことで自分に自信を持たせたり、自分を引き立てたりするものであるべきです。そう信じて挑んだベルリン・ファッションウィークでは、初めて交流する異国のデザイナーや異なる感性を持つデザイナーと同じテーブルを囲む機会にも恵まれました。パリやロンドンとは違う、オープンでポジティブな若いエネルギーに触れたことは、私にとって非常に刺激的な体験となりました。

デザインをする上で、“本質的なものづくり”を忠実に行うことを大事にしてきました。『この服でないとダメだ』と思えるような、買い換えが利かないデザイン――それが結果的に服を長く、大切に着てもらうことにつながります。今回のコレクションでは、バージン素材かリサイクル素材かといった選択も、耐久性や修理可能性の観点からチームでとことん議論しました。

今後のことはまだ決まっていませんが、また挑戦したい気持ちはあります。今までのようにサステナビリティに向けた工夫をしつつ、自分の信念に沿った表現は可能だと思っています」(柳川荒士さん)

ベルリンが目指すサステナビリティとは?

ベルリン・ファッションウィークの全体を通じて感じられたのは、サステナビリティがもはや特別な主張ではなく、デザインの前提としてごく自然に組み込まれているという空気感だ。デッドストックやリサイクルを前提とした素材の採用、化石燃料由来の素材に頼らない天然素材へのこだわりといった原料調達のフェーズから、古着を解体し新たな命を吹き込むアップサイクル、さらにはハンドメイドや完全受注生産のスロークチュールまで。そのアプローチは多角的で、クリエイティビティとサステナビリティの両立を目指すのが当たり前かのよう。

「シア アルニカ(Sia Arnika)」の2026-27年秋冬コレクションの一部には、既存の衣服を再利用したり変形させたルックも。また、厚みのあるフェザーのようなディテールには、デッドストックのシフォンを使用 Ines Bahr, James Cochrane

CEOのリピンスキーさんは、現在トライアル運用しているコペンハーゲン・ファッションウィークのサステナビリティ基準(※環境、人権、多様性、ショー運営など、ブランドがクリアすべき19項目の要件)を、来シーズンから必須化すると言う。実験的に、そして柔軟に試行錯誤を繰り返しながら、ベルリンらしい持続可能なファッションのエコシステム構築を着実に進めている。

「アンネ ベーネッカー(Anne Bernecker)」の日本の鶴にインスピレーションを得た最新のコレクションは、ゲメールデガレリー『Gallery Looks』の一環で展示。デザイナーのベーネッカーが「ヴェルサーチェ」でシニアディレクターを務めたあと、自身のブランドをロンドンで2015年にスタート。ヴィンテージウェアやデッドストック素材を使用して、仕立て直したり、上質な手刺しゅうの装飾を施したりと、服を再創造、再生するスロークチュールを実践 Anne Bernecker

「私は東京が好きです。街のきれいな様子や暮らし方から、環境や周囲とのバランスを取りたいという、住民たちの自然な欲求を感じたからです。ファッションにおけるサステナビリティも同じ。自然環境や生産者、消費者などの関わるすべてのアクターとのバランスを重視し、調和を目指すことにあると思います。

コペンハーゲン・ファッションウィークのサステナビリティ基準は素晴らしい取り組みであると同時に、若いブランドにとって、簡単に乗り越えられるものでもありません。私たちはブランドに“再構築”という挑戦を強いています。ですが、私たちはデザイナーを1人にはせず、ワークショップなどを通じて基準をクリアできるよう伴走しています。今では、デザイナーから『自分たちにもできる』、『やってみてよかった。多くのことを学べた』というポジティブな反応まで得ています。

今後、さらにベルリン・ファッションウィークの国際的なプレゼンスを高めるために、選出されたデザイナーたちを派遣し、海外のマーケットを調査・開拓したり、パリにショールームを開いたりする試みもはじめています。次の目標は、新しいドイツのデザインを世界に広く発信していくことです」(スコット・リピンスキーさん)

PROFILE
Patrycia Lukas

スコット・リピンスキー

2017年よりドイツ・ファッション協会のCEOを務め、理事会へのアドバイザリー業務や、ベルリンを拠点とする運営チームの指揮を執る。2022年からは欧州ファッションアライアンスの理事長を兼任。マンハイムでの経営学を修得後、アクセンチュアやドイツの主要ファッションブランドでの実務を経て現職に至る。



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