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1億6000万年前の「最もずんぐりしたイカの新種」を発見

  • 2026.10.12
1億6000万年前の「最もずんぐりしたイカの新種」を発見
1億6000万年前の「最もずんぐりしたイカの新種」を発見 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

イカと聞くと、多くの人はスーパーの鮮魚コーナーに並ぶ、すらりと細長い胴体を思い浮かべるでしょう。

そんなイカやタコには「ベレムナイト」と呼ばれる絶滅した親戚がいて、ふつうは細長い弾丸のような化石を残します。

アメリカ・ワイオミング州ではこの化石があまりに多く見つかるため、化石を集める人たちから「イカのおしり」とあだ名されているほどです。

ところが、その見慣れた化石の中に、ひと目で「浮いている」と分かる変わり者がたった2つだけまぎれていました。

この奇妙な化石の持ち主は、いったい何者だったのでしょうか。

その正体に迫った研究を、ニュージーランドのヴィクトリア大学ウェリントンなどの研究チームが、古生物学の専門誌に発表しました。

研究の詳細は、ニュージーランドのヴィクトリア大学ウェリントンらにより、2026年9月1日付で学術誌『Papers in Palaeontology』に掲載されました。

目次

  • 「イカのおしり」にまぎれた、ひときわ太い化石
  • ずんぐりイカの「意外な正体」とは?

「イカのおしり」にまぎれた、ひときわ太い化石

「イカのおしり」にまぎれた、ひときわ太い化石
「イカのおしり」にまぎれた、ひときわ太い化石 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

ベレムナイトは、今のイカと同じように腕をもつイカやタコの仲間で、体の中に硬い芯のような部分をもっていました。

「ロストルム(鞘)」と呼ばれるこの部分が、私たちが目にするベレムナイトの化石の正体です。

ワイオミングで見つかるロストルムは、ふつう長さ5〜10センチ、太さ1〜2センチほどしかありません。

化石が眠っていた地層には、かつてアメリカ西部の一部をおおっていた内陸の海の跡が残されています。

最初の変わり者は1990年代の終わりに、ワイオミング恐竜センターの創設者ブルクハルト・ポール博士が見つけたものでした。

しかしこの化石は研究されないまま、何年も博物館の引き出しで眠り続けます。

化石収集家のクリフ・リンスターさんが同じ州でもう1つを見つけ、2019年にセンターへ寄贈したことで、ようやく2つを見比べられるようになりました。

2つの化石は、長さこそ約10センチと普通なのに、太さが約6センチもある樽のような形をしていました。

これは、これまで知られているどのベレムナイトよりも太いロストルムです。

記事で紹介されていた画像はこちら(画像1、画像2)

腕まで含めると、生きていたころの体長はおよそ60センチあったと考えられています。

研究チームはこれを新しい属の新しい種とし、属には「ワイオミングのイカ」を意味する「ワイオテウティス」という名前をつけました。種の学名は「ワイオテウティス・リンステロルム(Wyoteuthis linsterorum)」です。

そして研究チームは、この太い化石の「中身」に、正体を解く手がかりを探しました。

ずんぐりイカの「意外な正体」とは?

ずんぐりイカの「意外な正体」とは?
ずんぐりイカの「意外な正体」とは? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

研究チームはCTスキャン(化石を切らずに内部を見られる方法)を使い、化石を傷つけずに中を調べました。

さらに、ロストルムの形や内部のくぼみの位置と角度、先端の溝や細かな筋といった特徴を一つひとつ確かめていきました。

その結果、この化石は「メガテウティス科」というベレムナイトの一族に属することが分かりました。

メガテウティス科は、ジュラ紀の中ごろまで栄えた一族です。

ところが「バトニアン」(ジュラ紀の中ごろの一時期)と呼ばれる時代にほとんど姿を消し、それより新しい地層からは、ごくまれにしか見つかっていませんでした。

今回の化石は約1億6000万年前のもので、この一族が消えたと思われていた時代から数百万年もあとに生きていたことになります。

つまりワイオテウティスは、仲間がほとんどいなくなった後もひっそり生き延びていた「生き残り」の枝だったのです。

研究チームは、その祖先が、北アメリカからすでに報告されていた「ブレビベルス」という仲間だった可能性が高いと考えています。

この発見は、北東太平洋に、これまで知られていなかったメガテウティス科の「避難場所」があったことを示しています。

実は同じ地域からは、見た目の似たロストルムが以前にも報告されていましたが、それらはこの地域でよく見つかる「シリンドロテウティス科」という別の一族のものでした。

この時代のアメリカ北西部で知られていたベレムナイトの一族は、これまでそのシリンドロテウティス科だけだったのです。

では、なぜこれほど太い体つきになったのでしょうか。

研究者は一つの可能性として、体が大きいことで、同じ海にいた小型のベレムナイト「パキテウティス」を狩るのに有利だったのではないかと考えています。

今のイカも、ほかのイカやタコの仲間、ときには同じ種の仲間まで襲うことがあるからです。

ただし、なぜこれほど太いロストルムが進化したのかは、まだ確かめられていません。

ワイオミングでは何百万本ものベレムナイトの化石が見つかっているのに、この種はたった2つしか見つかっていません。

その珍しさは、当時の環境に合わせて限られた暮らし方に特化していたせいかもしれない、という見方もあります。

見慣れた「イカのおしり」の山の中には、消えたはずの一族の生き残りが、たった2本だけ静かにまぎれていたのです。

スマートなイカばかりが海の人気者というわけではなかったのかもしれません。

参考文献

This 160-Million-Year-Old “Squid” Fossil Is Unlike Anything Scientists Have Seen (SciTechDaily)
https://scitechdaily.com/this-160-million-year-old-squid-fossil-is-unlike-anything-scientists-have-seen/

元論文

‘The big chunky belemnite’: a new relict megateuthidid from the Oxfordian (Late Jurassic) of Wyoming, USA , and its place in the evolutionary history of the group
https://doi.org/10.1002/spp2.70123

ライター

山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。 好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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