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森山未來が考える、アートで「兆し」を掴むということ。 MYAF 2026「REFLUX たちのぼる兆し」へ

  • 2026.9.16
TAKU TSUTSUI[TRON]

10月9日(金)から12日(月・祝)まで、東京・天王洲運河一帯で開催される「MEET YOUR ART FESTIVAL2026」。ELLEも毎年参加しているこのアートフェスティバルも、今年で5周年。国内外のアーティストによるアートフェアやライブ、マーケット、トークセッションなど多彩なプログラムが企画されている。なかでも注目は、森山未來がアーティスティック・ディレクターを務めるアートエキシビション「REFLUX たちのぼる兆し」だ。開催を前に、ここに込めた思いを聞いた。

5年目のMYAFで、より深く企画の内側へ

昨年のフェスティバル風景。150名以上のアーティストが参加し、4日間で延べ5万人以上が来場。会場は熱気に包まれた。 Hearst Owned

森山さんが「MEET YOUR ART」と関わるようになったのは、2020年12月。YouTube番組「MEET YOUR ART」のMCとして参加したのが始まりだった。その後、オフラインでスタートしたこのフェスティバルにも継続して携わり、昨年からはアートエキシビションの構成やタイトル、コンセプトにも関わるようになった。そして5周年となる今年も昨年に続き、 アーティスティック・ディレクターを務める。

昨年のアートエキシビション「Ahead of the Rediscovery Stream」の一幕。Chim↑Pom from Smappa!Group × 小室哲哉《SUN》では、和田彩花、MOND、奈歩、高村月、三浦琉那、山田ホアニータ、ちびもえこら7組が連日パフォーマンスを実施し、大いに盛り上がった。 Hearst Owned

「今回は、コンセプトやタイトルを決め、アーティストを選定するところから取り組みました。前回とは関わり方が大きく変わりましたね」。運営にはキュレーターやオーガナイザー、アーティストなど多くの人々が関わっている。ここで改めて感じたのが、ひとつの展覧会を作り上げる難しさだった。「アーティストの皆さんとのコミュニケーションには、非常に多くのエネルギーを注ぎ込んでいます。グループ展なので、それぞれ明確な世界観をもった作家の皆さんが、ひとつの空間に入ることになりますよね。それぞれにやりたいことがしっかりあるので、それを受けながら、一つのコンセプトのもとに配置しなくてはいけない。一貫性も必要だし、大胆さも必要。ただポンポンと並べるだけではテーマの意味がありませんから」

「流転に任せていていいのか」という疑問から生まれた“REFLUX”

その中心に置かれた言葉が、「REFLUX たちのぼる兆し」だった。「いつの時代もさまざまな問題は起きているけれど、2026年の今も人間が引き起こす問題は絶えることなく、むしろ悪化している。この状況下で僕らは今何を考えるべきなのだろうか? と思いを馳せました」。そこでふと浮かんだのが、“flux=流転”という言葉。「万物は絶えず変化する、ということ。仏教的な表現にはなりますが、これ自体はもちろん真理だと思うんです。ただ一方で、今の“流転”に任せていていいのかなみたいな感覚があって」。気候変動、分断や戦争、経済や宗教に端を発するさまざまな問題。人間が生み出してきた技術やシステムは、私たちがこの地球で生き延びることを可能にしてきたけれど、今や自家中毒的に陥っているのではないか。そんな問題意識を抱いていたという。「そこで“flux”に、“再び”や“戻る”というニュアンスを持つ“re”が付帯する“reflux”はどうか、と思ったんです。REFLUXという単語自体は、医学用語だと“逆流”だったり、自然現象では引き潮だったり、また化学では“還流”といって一度気化したものをまた液体に戻すようなことを意味します。それぞれの印象の強さは異なりますが、大きく言えば、何かを元の場所へ引き戻していく、引き寄せていくという印象がある。この言葉をエキシビションのコンセプトとして掲げたら、アーティストの皆さんがどう反応してくれるだろう、というところから立ち上げていきました」

アートエキシビション「REFLUX たちのぼる兆し」は、日々加速し続ける時代のなかで現れる揺り戻しや反応、複数の流れの交差に着目。気鋭のアーティストやパフォーマーたちが参加する Hearst Owned

「旬」がわからない時代に、自分で知覚するということ

このREFLUXに、「たちのぼる兆し」という言葉が続く。「これは、REFLUXに対する僕らなりの大いなる意訳です」。…ちょっと謎解きのような意訳だ。ここで森山さんは、食べ物の旬の話を始めた。「魚にしても果物にしても、昔から“旬”と言われる時期があるけれど、今、本当の旬ってわからないじゃないですか。8月の終わりならこれが食べられる、といったことを、僕たちは知識としては知っているけれど、2026年のこの気候の状況では、その時期はもはや旬ではなくなっているかもしれない」

先人の知恵や過去の経験が築いてきた “常識”と、目の前で起きている現実がずれていく。ならば「今、何が食べられるのか」を、もう一度見極めていく必要がある。温暖化だけでなく、豪雨や水害が頻発し、これまであたりまえに食べてきた作物が採れなくなれば、何を代わりに選ぶのか。新たなエコシステムそのものを考える必要も出てくるだろう。「これからの時代を生き抜くためには、僕たちの “知覚する能力”みたいなものを、もう一度喚起させなきゃいけないんじゃないのか、ということでもあるんです」

変化そのものを止めることはできない。けれど、その流れのなかで「どの瞬間、どの事象を取り留めようとするのか」は、一人一人が決めること。「問題意識はみんなそれぞれ違うと思います。でも何かを自分で掴むためには、そこにたちのぼる “予兆”や“兆し”みたいなものをキャッチしていかなきゃいけないと思うんです。情報が氾濫して、いろいろなものがコントロールされていくなかで、自分に立ち返ることをもっと意識していこうよ、と。この空間、このエキシビションのアーティストたちの表現や思想、世界観に触れて、こうした感覚を掴んでほしい。それが僕の願望です」

空間と、パフォーマーと、鑑賞者とが作用し合う

そのコンセプトは、アーティストの選定にも反映されている。「先にコンセプトを決めて、そこからどんなアーティストの方に参加していただきたいか、僕と、キュレーターの吉田山さん、渡邊賢太郎さんとともに候補を出し合いました。平面作品や立体作品などさまざまな表現方法があり、それらもいずれも素晴らしいと思いますが、今回は、鑑賞する方それぞれの身体や五感としっかりインタラクションが取れる作品であってほしいという思いを、前提としてもっていました」。作品を見るだけにとどまらず、音を聴き、光や空気を感じ、パフォーマーやほかの鑑賞者の存在も加わって作品自体が変化していく、没入型プログラムだ。「ただ、知覚的にはしっかりインタラクションが起こるけれども、それをどう感知するかは、個人の感受性に委ねられています。そういう意味で、鑑賞者を巻き込むダイナミズムをもちながら、一人ひとりに訴えかけるようなアプローチのできるアーティストの方を選定した、と言えると思います」

今回のアートエキシビションに出展するうちの一組、コンタクトゴンゾは、2006年に大阪で結成されたパフォーマンス・コレクティブ。身体同士が激しく衝突する独自のパフォーマンスが見ものだ。 《the Storm》@The Museum of Art, KOCHI

変わり続ける世界のなかで、自分の身体は何を感じるのか。正解を探すのではなく、まずはそこに「たちのぼる兆し」を、自分自身の感覚で掴んでみたい。

森山未來:1984年、兵庫県生まれ。5歳から様々なジャンルのダンスを学び、15歳で本格的に舞台デビュー。2013年に文化庁文化交流使として、イスラエルに1年間滞在、Inbal Pinto&Avshalom Pollak Dance Companyを拠点にヨーロッパ諸国にて活動。「関係値から立ち上がる身体的表現」を求めて、領域横断的に国内外で活動を展開している。俳優として、これまでに映画賞を多数受賞。東京2020オリンピック開会式にてオープニングソロパフォーマンスを担当。2022年より神戸市にてArtist in Residence KOBE(AiRK)を設立し、運営に携わる。ポスト舞踏派。

Photo : TAKU TSUTSUI[TRON] Hair&Make-up : KOHJI KASAI [UpperCrust] Stylist : Mayumi Sugiyama Text : YURICO YOSHINO

ニット ¥69,300 スカート ¥44,000 パンツ ¥66,000 全て BED j.w. FORD instagram:@bed_j.w._ford 問い合わせ先:BIRTHLY CO.,LTD.(バースリー) 03-6432-9313

「MEET YOUR ART FESTIVAL2026」

10月9日(金)~10月12日(月・祝) 東京・天王洲運河一帯(寺田倉庫ほか)

140-0002 東京都品川区東品川2丁目1-11

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