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アムステルダム国立美術館に併設、アートと食が交差するレストラン「ライクス」

  • 2026.4.24
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連載第13回で紹介するのが、2014年にオープンしたオランダのアムステルダム国立美術館内にある「RIJKS(ライクス)」です。アムステルダム出身で、オランダの食文化を洗練された形で表現するヨリス・バイデンダイクシェフのもと、店は2016年からミシュラン一つ星に輝き、バイデンダイクシェフは昨年ゴ・エ・ミヨの「今年のシェフ」に選ばれるなど注目を集めています。2023年には大規模なリノベーションを実施し、新しく生まれ変わったお店をご紹介します。

「サステナブルは身近なもの」農園育ちのシェフが紡ぐ、オランダの豊かな味覚

ヨリス・バイデンダイクシェフ Photo:Chantal Arnts

歴史を振り返ると「東インド会社」でも知られるオランダは、鎖国下の日本で唯一の西洋の貿易先となるなど、交易で17世紀に栄華を極めました。植民地があったことから、特に深い関係を持つのがインドネシアと南米のスリナムで、「オランダ料理にはこれらの国からのスパイスが多く使われていて、私のインスピレーションの源です。さらにRIJKSにはインドネシア系とスリナム系のシェフが働いていて、彼らの文化を取り入れながら、今の時代のオランダ料理を作っています」とバイデンダイクシェフ。

Photo:Chantal Arnts

オランダは世界第二位の輸出量を誇る農業大国でもあり、バイデンダイクシェフも、幼い頃両親が農場を営んでいたことから、食材を命として捉え、サステナブルな考えが身についています。例えば、オランダは世界最大級のヤギのミルクの生産地で、毎年15万頭の仔ヤギが生まれるものの、ミルクを出さないことから処分されてしまう雄のヤギ肉の料理を生み出したり、外来種で増えすぎてしまったザリガニを使った料理を作り、数を調整しようと試みるなど、料理を通してより良い未来を生み出していこうと考えているそうです。

オランダ人デザイナーによる温もりと洗練が調和するインテリア

Photo:NinaSlagmolen

レストラン名「ライクス」は、1885年に建設された歴史を誇る、アムステルダム国立美術館の愛称でもあります。同美術館のフィリップス棟にあるライクスレストランは、2023年、「現代のファインダイニング」をイメージし、オランダのデザイン会社「スタジオ・リンス」による改装で生まれ変わりました。ミニマルでありながら、オランダ人デザイナーによる家具などで、より温かでくつろげるインテリアに変更されています。

Photo:Chantal Arnts

隣接する美術館は、バイデンダイクシェフにとってはインスピレーションの源。収蔵するレンブラントの「夜警」やフェルメールの「牛乳を注ぐ女」などの名作でも知られます。中でもフェルメールは、宗教画や貴族の肖像画ではなく、オランダ庶民の日常を緻密な筆致で描き、静謐と光の画家としても知られています。

アートから着想を得たオランダの風土を映す美食

Photo:Sophia van den Hoek

オランダの日常の美しさを表現した巨匠と同様に、バイデンダイクシェフは、高級料理といえばフランス料理、と捉えられてきたオランダで、オランダらしい味を表現する美食を提供しようと考えています。例えば、写真の「大地のフルーツ」という料理には、オランダの農園からの野菜に、日本の発酵の技術を使った甘酒ソースという、オランダの歴史的背景を反映した味わいを添えて提供しています。

■Author's eye

Photo:Kyoko Nakayama

運河が多く「北のベネツィア」という別名も持つアムステルダム。運河に浮かべた船で、伝統的なスモークうなぎの生産を行う男性とバイデンダイクシェフが語り合います。

農業大国のオランダですが、今問題となっているのが、小規模生産者の後継ぎ問題。政府のシステム自体が大規模農業中心になっていることが理由だとバイデンダイクシェフは「ローフード(Low Food)」というプロジェクトを設立。他のシェフたちや専門家、学生たちが共同で、小規模生産者への支援や食品ロス削減や、新しい調理法や技術の開発を行うほか、オランダ政府関係者もこのプロジェクトのメンバーに加え、具体的な政府への提言にもつなげています。

■RIJKS

Museumstraat 2, 1071 ZB Amsterdam, Netherlands

【Profile】仲山今日子- KYOKO NAKAYAMA-

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ニュースキャスターとして日本のテレビ局で15年以上勤務した後、シンガポールのテレビ局に転職。並行してシンガポール国営ラジオ局で、DJとして食とアートの番組を担当。『THE BUSINESS TIMES』『TATLER』『日本経済新聞』など、国内外の新聞、雑誌で執筆を行う。『WORLD RESTAURANT AWARDS』では、シンガポール代表の審査員を務める。その他、実名・匿名で国内外の多くのレストランの審査を行う。リシェスにて「至福の食体験」連載中。

※この記事は2026年4月24日時点のものです。

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