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「電車の中で何してるの?」空いている電車で突然始まった懸垂。思わぬ姿に唖然とした

  • 2026.9.12
「電車の中で何してるの?」空いている電車で突然始まった懸垂。思わぬ姿に唖然とした

正面に立った男性が、金属のバーに手を伸ばした

八年ほど前の、平日の昼でした。

私鉄の各駅停車は空いていて、私は窓際の席に座り、流れていく景色をぼんやり眺めていました。

隣の車両との扉が開き、六十代くらいの男性が入ってきました。運動にでも出かけるような服装で、足どりも軽やかです。

空席はいくらでもあるのに、男性は座らず、なぜか私の正面あたりで立ち止まりました。

そして突然、つり革を吊るしている上の金属のバーへ両手を伸ばしたのです。

揺れたときにつかまるのだろうと思った次の瞬間、男性の両足が床から離れました。

一回、二回、三回。

あごがバーの高さまで上がり、ゆっくり下がっていきます。反動をつける様子もなく、動きは驚くほど滑らかでした。

私は見てはいけないような気がしながらも、思わず回数を数えていました。

車体が揺れると体が少し流れます。それでも男性は腕や手首でバランスを取り、そのまま続けています。どう見ても、初めてやっている人の動きではありませんでした。

「……よし」

ちょうど十回で床に降りると、男性は小さくそうつぶやきました。

終わったのかと思ったのですが、今度は少し離れた場所へ移動し、別のバーに手をかけました。

そして、また同じように体を持ち上げ始めたのです。

さすがに周囲も見ているだろうと思い、そっと視線を動かしました。

ところが、斜め向かいの女性は買い物袋を膝に置いたまま窓の外を見ています。扉の近くにいた男性も、文庫本から顔を上げません。

気づいていないのか、気づいていて関わらないようにしているのかは分かりません。

私は声をかける勇気もなく、ただ男性が下りるのを待っていました。

二度目を終えると、男性は近くを通るときに小さく「失礼」と言い、そのまま隣の車両へ向かいました。

扉が閉まって姿が見えなくなってから、私はようやく息を吐きました。

夕方、娘に話すと返ってきた言葉

その日の夕方、台所で娘に出来事を話しました。

「今日ね、電車の中ですごい人を見たの」

「何があったの?」

「つり革の上のバーにつかまって、体を持ち上げてたの。十回も」

娘の手が止まりました。

「え、電車の中で?」

「そう。しかも場所を変えて、もう一回やってた」

娘はしばらく想像するように黙っていました。

「誰か注意しなかったの?」

「誰も何も言わなかった。私も言えなかったけどね」

「まあ…急にそんなこと始めたら、私も声かけにくいかも」

娘は苦笑いしながら、また皿を拭き始めました。

私も危ないのではと思いましたが、何を言えばいいのか分からず、結局その場では見ていることしかできませんでした。

八年たった今でも、ときどき電車のつり革を見上げると思い出します。

あの男性は、次の車両でも同じことを続けていたのでしょうか。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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