1. トップ
  2. エピソード
  3. 「俺の奢りな!」と店で言った俺が、帰りの電車で送った「いつもの送金アプリでいいから」

「俺の奢りな!」と店で言った俺が、帰りの電車で送った「いつもの送金アプリでいいから」

  • 2026.10.2
ハウコレ

送金アプリの通知のあと、いつもなら続くはずの彼女のスタンプが、その日は届きませんでした。店員さんの前で見栄を張った俺が、本当にかっこつけたかった相手は誰だったのか。

店員さんの前で言った「俺の奢りな!」

久しぶりに予約した店で、彼女は前菜の皿を撮っては、俺に画面を向けてきました。伝票が運ばれてきたとき、店員さんは2人の間に立ったままでした。

「俺の奢りな!」

思ったより大きな声が出ていました。彼女が「え、いいの?ありがとう」と笑い、店員さんが「ありがとうございます」と頭を下げます。カードを渡しながら、店を出るまでこの顔でいようと決めていました。8600円。レシートは財布の一番奥に押し込みました。

電車の中で送った2通

駅まで腕を組んで歩き、改札で手を振って別れました。座席で残高を見て、給料日までの日数を数え直します。

「やっぱりレストラン代払ってもらっていい?」

「いつもの送金アプリでいいから」

送ってから、車窓に映る自分の顔を眺めていました。彼女は身内みたいなものだから、後から精算しても変わらないはずでした。

返ってきた「わかった」と、届かなかったスタンプ

既読はすぐにつきました。返信までは、いつもより間が空きます。

「わかった」

その少しあとに、送金アプリの通知。4300円、メモ欄には「レストラン代」とだけ。

「送ったよ」

「ありがと!助かる」

俺はいつものスタンプを続けて送りました。彼女のスタンプは、その日は届きませんでした。

翌日、「昨日楽しかった。次いつ空いてる?」と送りました。既読がついてから返信が来るまで、この2年で一番長い間が空きました。

「ちょっと予定確認する」

それだけでした。

そして...

チャットを上にさかのぼって、自分の2通を読み返しました。「いつもの」と打ったのは俺です。ただ、その前に店員さんの前で、俺だけが違うふりをしていました。あの店員さんは、俺の顔をもう覚えていないでしょう。4300円を誰が払ったのかを覚えているのは、彼女だけです。

財布の奥からレシートを出して、机の上に広げました。店の名前と数字を見ながら、彼女に送る文面を、今度は残高を見ずに考えています。

(20代男性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ