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「すんませーん、部屋で弾いてるだけっすよ」深夜1時のギターをやめない隣人。だが、大家さんが見せた契約書で表情が変わった

  • 2026.10.2

壁一枚むこうのアンプ

一人で暮らすマンションの部屋は、隣と壁一枚でつながっている。

隣に住んでいるのは大学生くらいの若い男性だ。

その夜、明かりを消して布団に入ったとたん、壁の向こうからアンプにつないだギターの音が響いてきた。

枕元の時計は深夜1時を指していて、ほかの部屋は静まりかえっている。

そのうち終わるだろうと思ったが、30分たっても同じフレーズが繰り返されていた。

翌朝は早くから仕事がある。私は廊下に出て、隣のドアをノックした。

ドアが開き、ギターを肩にかけたままの学生が顔を出した。

「夜分にすみません。音がこっちまで響いていて、眠れないんです」

「すんませーん、でも、部屋で弾いてるだけっすよ」

悪びれた様子はなく、学生は不思議そうにこちらを見ている。

自分の部屋の中のことだから、隣には関係がないと思っているらしかった。

「もう夜中ですよ。壁を抜けて、こっちは丸聞こえなんです」

「えー、そんなに聞こえます?もうちょっとで終わるんで」

学生は笑ってドアを閉めた。部屋に戻っても音はそのまま続き、私は時計を眺めながら朝を待った。

大家さんが開いた契約書

翌日の夕方、私は同じ建物に住む大家さんを訪ねた。

70代くらいの穏やかな男性で、話を聞き終えると棚から厚いファイルを取り出した。

「今夜また鳴ったら、呼んでください。一緒に行きましょう」

夜が更けて壁の向こうで弦が鳴りはじめ、私は1階へ下りた。

大家さんはファイルを抱えて階段を上がり、私と並んで隣のドアの前に立った。

ノックに出てきた学生は、前の晩と同じようにギターを肩にかけて笑っていた。

「あ、大家さん。どうしたんすか」

大家さんは廊下の明かりの下で入居のときの契約書を開き、1行を指でなぞって学生に見せた。

「ここに、楽器の演奏は夜8時までと書いてある。あなたが自分で名前を書いた契約書だよ。守れないなら、次の更新はできない」

学生の笑顔が消えた。ネックを握っていた手が下がり、目は紙の上の自分の署名で止まった。

「…更新、できないんすか」

「守ってくれれば、もちろんできる」

学生は青い顔で廊下に立つ私たちを見回し、ギターを体の後ろへ回した。

「すみませんでした。そんなに響いてるなんて、思ってなくて」

「分かってもらえれば、それで十分です」

その夜から、契約書にある時刻を過ぎるとギターの音はしなくなった。

数日後の夕方、廊下で会った学生は、私に小さく会釈して、足早に部屋へ入っていった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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