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バリのデザインが熱い! 東南アジアの才能が集う「Jia CURATED」の完全リポート

  • 2026.9.10
Priska Joanne

2026年8月13日〜17日、バリ島で東南アジアを代表するデザインイベント「Jia CURATED(ジア・キュレイテッド)」が開催された。サヌール地区の開放的なビーチフロントを舞台に、会場にはインドネシア国内外から250以上のブランドや世界的クリエイターが集結。 現地で強く実感したのは、地域固有の素材が持つポテンシャルと、それを自由に拡張するローカルクリエイターの鋭敏な感性だ。

さらに、国境を越えたコラボレーションがデザインを通して心地よい化学反応を生み、新たな価値へと結実していく様にも深く惹きつけられた。「Jia CURATED」は2022年、ローカルデザイナーやブランドの魅力を伝える小規模な「Jia CURATED Kiosks」としてスタート。2025年の大幅な規模拡大を経て、「Jia CURATED」へとリブランディングし、現在の形となった。

Priska Joanne

発起人はバリを拠点とする照明ブランド「オン・チェン・クアン」のデザイナーでもあるブディマン・オンと、共同設立者のルディ・ウィナタ、そしてファッション業界でのバックグラウンドを持ちインテリアショップ「Jia Collective」のディレクターを務めるヤン・ヤン・ハルトノの3人だ。

彼らが「Jia CURATED」を立ち上げた背景には、単なる商業的な製品見本市の枠を超え、クラフトやデザインに携わるクリエイターが対等な関係で集い、互いに刺激し合える場をつくりたいという強い思いがある。ブディマン・オンが重視するのも、出展者同士が支え合い、ともに成長していくコミュニティのあり方だ。その根底にあるのが、インドネシアに古くから根付く「Gotong Royong(ゴトン・ロヨン)」という相互扶助の精神。収穫期などに村の人々が力を合わせ、互いに助け合ってきた文化であり、「Jia CURATED」の理念にもその精神が息づいている。

<写真>「Jia CURATED」の創立メンバー。左から、ヤン・ヤン・ハルトノ、「オン・チェン・クアン」のデザイナーでもあるブディマン・オンと共同設立者のルディ・ウィナタ。

Indra Wiras

イベントのもう一つの核となっているのが「自然環境との共生」という視点だ。2026年のテーマである「Nature Weave(自然と編み出す調和)」が示す通り、開催地であるバリ島のごみ問題や環境課題と向き合い、デザインを単に人が使うためのモノではなく、周囲の自然や風景と調和する存在として捉え直している。会場づくりにおいても自然との境界をできるだけ設けず、地域の素材を取り入れるほか、会期後に解体・再利用できる設計を出展者に求めるなど、環境への負荷を抑えながら、新たな表現の可能性を探っていた。

<写真>「メソッド」のワークショップブース。中心においてあるのが、廃木材を使った椅子。

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竹から廃材まで。バリで見つけた素材を生かす新しいデザイン

たとえば日本から参加した「method inc.(メソッド)」は、オランダのデザイナーのサンダー・ワッシンクと共に、持ち運び可能な接続パーツを使った椅子づくりのワークショップを開催。チークウッドなどの古材をアップサイクルする企業「Kaltimber」から販売に適さない端材の提供を受け、会場で出た廃木材と組み合わせて椅子を制作した。接続パーツさえあれば、場所や素材を問わず椅子を生み出せるという発想もユニークで、多くの参加者でにぎわった。

<写真>椅子を組み立てる作業中のワークショップ参加者。緑のシャツを着ているのが、デザイナーのサンダー・ワシンク。

Indra Wiras

<写真>バリ島を拠点に、河川から回収した廃棄プラスチックゴミを原料として高品質な家具や生活用品を生み出す「スンガイ・デザイン」。

Indra Wiras

<写真>椅子などの家具からホテルの備品まで、廃棄プラスチックを新たなプロダクトへと生まれ変わらせるブランドも数多く出展。リゾート施設「Desa Potato Head(デサ・ポテトヘッド)」や「Sungai Design(スンガイ・デザイン)」のブースでは、デザインが持つ社会的なインパクトと美しいプロダクトの可能性を強く印象付けていた。



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感性を刺激するデザインがひしめく会場から、日本でも注目を集めるクリエイターのブースをピックアップ。まず目を引いたのは、エントランス付近に構えられた「クシュクシュ」だ。「ランブット」スツールは、バリの職人とフランス人デザイナーのピエール・シャリエによるコラボレーション作品。イインドネシア語で「髪」を意味する名の通り、黒いイジュク(ヤシ繊維)とサイザル・ゲバン繊維を職人が丁寧に結び、ブラシで整えることで伝統的な茅葺き屋根を思わせる独特の風合いに仕上げている。このユーモラスなデザインは、2026年4月に東京で開催された企画展「Road to Jia CURATED – Tokyo Edition」でも大きな話題を呼んだ。

写真の「Dress Me Up! The Balinese Way」と題された椅子は、人や建物、神聖なものを儀式のために着飾るバリの伝統文化からインスピレーションを得て制作。気分やシーンに合わせてテキスタイルを纏わせ、椅子の装いを変えることができる。

<写真>「クシュクシュ」のブース。左が「ランブット」スツール、中央が「Dress Me Up! The Balinese Way」と名付けられた椅子。

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<写真>まるで雲が浮いているかのような、「オン・チェン・クアン」の「ALURコレクション」より。白いジッパー製の新作アウトドア照明、“JANUR”。

Priska Joanne

「オン・チェン・クアン」の屋外向け照明コレクションは、人の手によるデザインと自然界との境界線をなくすというイベントテーマを体現した作品だ。あえて事前に図面を描かず、職人と手作業でモックアップを作りながら完璧なバランスを探る独創的な制作手法を採用。ジッパーなどの素材を用いながら、インドネシアの伝統工芸を現代デザインへと見事に昇華させている。

工業的なジッパーを使っているにもかかわらず驚くほど有機的で、自然の風景に馴染む姿には目を見張るものがあった。「照明シェードは取り外しが簡単でウォッシャブルなので、屋外照明でも常に美しく保てるんです」とブディマンが語る通り、機能性への配慮も徹底されている。周りが暗くなると幻想的な光を放ち、訪れた来場者たちの目を楽しませていた。

<写真>夜はガラリと変わり、幻想的な雰囲気に。

Indra Wiras

個人的に楽しみにしていたのが、「IBUKU(イブク)」のブースだ。「IBUKU」はバリ島を拠点とする建築・デザインスタジオ。創立者兼ディレクターのエロラ・ハーディを中心に、竹という自然素材の美しさと強さを最大限に引き出し、サステナブルな建築を生み出してきた。その活動は世界的にも高く評価されている。

<写真>素材としての竹の可能性を感じさせる「IBUKU」のブース。天井のヘチマの照明は、今回コラボレーションしたリリン・ヤックスリーによるもの。

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会場にはウブドにあるリゾートホテル「バンブー・インダ」を思わせる空間が広がり、「これが竹なのか」と思わず驚くほど美しく洗練された家具が並ぶ。翌日にはIBUKUの工房や、彼らが手掛けた「グリーンビレッジ」を見学。建築から家具まで、竹という素材が秘める可能性の大きさを改めて実感した。

また今回の展示では、伝統工芸と現代デザインを融合させて持続可能な素材を探求するプラットフォーム「KITABISA」とのコラボレーションも実現。アーティストのリリン・ヤックスリーが手掛けたヘチマなどを用いた柔らかな光の照明は、空間に温かみと親しみやすさを演出していた。

<写真>外から見るとプリミティブな雰囲気。

Indra Wiras

竹をはじめとする自然素材を、洗練されたモダンなプロダクトへと昇華させるクリエイターはほかにもいる。「アルビンT」は、竹はもちろん、ラタンや木材といったインドネシアの伝統素材を使い、職人の技をかけ合わせ、現代的でミニマルなフォルムへと落とし込む手法を得意とするプロダクトデザインブランドだ。今回の展示では、空間プロデュース会社「Somewhere Concepts」と一緒に、人と場所、文化、そして生活環境のかかわりを探求する没入型インスタレーション「Where We Once Gathered(かつて私たちが集った場所)」を展開。素材が持つ素朴な質感と削ぎ落とされたモダンなシルエットが同居する空間は、単なる家具の展示にとどまらず、私たちがコミュニティや自然とどう向き合ってきたかを静かに問いかけてくる。

<写真> 竹やラタンなど、素材のポテンシャルを感じさせる家具が並ぶ「アルビンT」の展示。

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ファッション業界やイベント制作の過程で生まれる布の端切れや廃棄バナーを回収し、デザインプロダクトへとアップサイクルしているのが、インドネシア・ジャカルタを拠点とするサステナブル・テキスタイル・スタジオ「Threadapeutic(スレッダピューティック)」だ。創業者でアーティストのハナ・スリヤが今回手掛けたのは、「Wall of Windows」というパーテーションのような作品。ウェディングドレスやイブニングドレス、伝統衣装のクバヤに使われるレースの端切れを組み合わせ、窓辺に舞い落ちた繊細な葉を思わせる表情を生み出している。

<写真>ウェディングドレスの廃材などを使い、葉のモチーフに仕立てた作品。

Indra Wiras

<写真> インドネシアを拠点とする環境配慮型サステナブル素材・合成繊維メーカー「VIRO」のブース。ラタンや竹、茅葺きなどの自然素材のような質感・外観を持つ、耐候性・耐UV性・防水性に優れた高耐久の合成繊維を開発している。

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アジアを代表する25組の建築家、その模型がビーチに集結

企画展のなかでも印象的だったのは、「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」のデザインエディター・シャーメイン・チャンによる「ARCHITECTURE IN SCALE(建築のスケール)」展。「Jia CURATED」の今年のテーマ「Nature Weave」を切り口に、インドネシアをはじめとするアジア各地の25の建築事務所による模型を一堂に展示。さらに、実際にプロジェクトを手掛けた建築家やデザイナーと直接対話できる、貴重な機会となっていた。

<写真> 「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」のデザインエディター・シャーメイン・チャンがキューレーションも担当。

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前述の「IBUKU」のエロラ・ハーディをはじめ、世界的に活躍するランドスケープデザイナー兼建築家のビル・ベンズリー、インドネシアの現代建築界を牽引するアンドラ・マティン、トロピカルモダニズムを代表するアレクシス・ドルニエなど、著名な建築家からアジアの新進気鋭の建築家、建築スタジオまでが参加。彼らの模型がビーチ沿いに点在する光景も、この展示ならではの見どころだ。

<写真>現在、バリで建設中のミュージアムについての説明をする建築家のアンドラ・マティン。

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日本からは、隈研吾建築都市設計事務所による台湾の廟「Tao」と、東京とロンドンを拠点に活動する「PAN- PROJECTS」による長野のトレーラー型ホテル「Earthboat」が選出された。アジアを代表する多彩な建築家たちの模型を通じ、自然や工芸と建築がいかに結びつき、新たな空間を生み出しているのかを体感できる貴重な機会だった。

<写真>「パン・プロジェクト」の建築家・高田一正(左)と八木祐理子(右)。長野のトレーラー型のホテル「Earthboat」の模型の前で。

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世界とアジアのクリエイターが語るデザインと社会のこれから

メインステージで行われた「360° Design Dialogues」は、アジアに拠点を置く世界的なクリエイティブマガジン 『Design Anthology』 がキュレーションとモデレーションを担当しているトークセッションプログラム。ロンドンを拠点に活動するプロダクトデザイナー、べザン・ローラ・ウッドや、オーストラリア建築界の巨匠ピーター・スタッチベリーなど、第一線でグローバルに活躍する人物を招聘。また、フィオナ・リンチなどの、東南アジアをはじめとするアジア各地のクリエイターや工芸家にも焦点を当てている。

「Textile Innovation(繊維イノベーション)」 など、地域のごみ問題やサーキュラーエコノミーに直結する素材の再定義を議論する議論するセッションも展開。「デザインはいかに環境や地域社会が抱える課題と向き合い、自然や伝統と調和できるのか」という「Jia CURATED」の思想を、対話を通して掘り下げる重要なプログラムとなっていた。

<写真>メインステージで行われたプログラム「360°Design Dialogues」。オーストラリアのインテリアデザイナー、フィオナ・リンチのトーク。

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ビーチに設置されたステージは夕暮れとともに潮が引き、干潮へと移り変わるランドスケープの美しさが印象的だった。そのすぐ脇では地元の子どもたちが水遊びを楽しみ、日常の風景が自然に溶け込んでいるのも、この場所ならではの魅力だ。

<写真>メインステージでは、日没頃からDJやライブパフォーマンスが行われた。

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食、音楽、アートまで。日が暮れても続くデザインの熱気

そして展示と並んで印象的だったのが、会場内に並ぶフード&ドリンク屋台の質の高さだ。バリ島内から人気と実力を兼ね備えたスタイリッシュな名店を厳選したとあって、モダンインドネシア料理をはじめ、広東風の焼き物ごはん、中華風バオのバーガー、素材にこだわったジェラートや焼き菓子、さらには伝統的なインドネシアのスイーツまで、どれも驚きのおいしさだった。バリの最新フードシーンを一度に体感できるのも、このイベントの隠れた魅力だ。さらに陽が落ちると、会場の雰囲気は一変。心地よい風に包まれながら、音楽やダンス、アートのパフォーマンスが繰り広げられ、バリならではの開放的で幻想的な「祭り」の熱気がイベントをどこまでも盛り上げていた。

<写真>会場内ではバリの人気店の料理が食べられる。現代風中華バオの専門店「Bao Bar Bali」のバオバーガーとさつまいもやとうもろこしの揚げ物。スパイスが効いて美味。

Indra Wiras

デザインの革新性やサステナブルな思想、そしてライブパフォーマンスや食に至るまで、会場に満ちていたのは現代のバリ島をはじめとする東南アジアが放つ圧倒的な「デザインの熱量」そのもの。ローカルの伝統とグローバルな感性が交差するこの場所は、間違いなくいま最も現地で体感すべきデザインの祭典と言える。これから彼らがどんな未来を描いていくのか、目が離せない。

<写真>ピンクソルトのブロックでできているバリのフレグランスブランド「Oaken Lab」のブース。

Jia Curated 2026

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