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「ニセコ蒸溜所」で10年という時間が育てる未来のジャパニーズウイスキー

  • 2026.9.8
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北海道・ニセコの豊かな自然のなかに佇む「ニセコ蒸溜所」。日本酒「八海山」で知られる八海醸造グループがこの地で取り組んでいるのは、ニセコという土地の個性を映したウイスキー造りです。ファーストリリースで目指すのは10年熟成。その完成を待つ一方で、ニセコに自生する植物を取り入れたジン「ohoro GIN(オホロ ジン)」はすでに国内外で高い評価を獲得しています。酒造りだけでなく、建築や工芸までを通して日本のものづくりを発信する「ニセコ蒸溜所」とは?

「ニセコ蒸溜所」が実現する、ニセコの自然を生かしたウイスキー造り

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ニセコ町は北海道でも有数の豪雪地帯。冬には3メートル以上の雪が積もることもあり、その豊富な雪解け水は大地へと浸透し、ニセコアンヌプリから流れる良質な伏流水となります。硬度の低い、やわらかで口当たりのよい水に恵まれていることも、この土地の大きな特徴です。

2021年10月にグランドオープンした「ニセコ蒸溜所」が目指しているのは、そんな環境を生かした、上品で繊細、そしてバランスの取れたジャパニーズウイスキーです。運営するのは、新潟県南魚沼市を拠点とする八海醸造グループ。「八海山」といえば日本酒のイメージが強いですが、グループではこれまでビールや焼酎、梅酒、甘酒など、幅広い飲料を手がけてきました。その醸造技術と経験を背景にウイスキー造りへと領域を広げ、ニセコに新たな拠点を構えました。

「八海山」をニセコへ導いた“ご縁”

新潟を拠点とする八海醸造が、なぜ北海道・ニセコを選んだのでしょうか。その背景には、この土地との“ご縁”がありました。

八海醸造の経営陣が、かつて新潟のスキーリゾートが大きく変化していく一方で、世界的なリゾートとして成長を続けるニセコに関心をもち、たびたびこの地を訪れるようになったことが始まりだったといいます。

交流を重ねるなかでニセコ町との繋がりが生まれ、地域から新たな事業をという声がかかったことをきっかけに、豊富で良質な水を生かしたウイスキー造りをスタートさせたそうです。

酒を造るためだけに選ばれた土地というより、人と土地との繋がりの先に生まれた蒸溜所。そのストーリーもまた、「ニセコ蒸溜所」を語る上で欠かせない側面です。

ウイスキーが眠る間に生まれた「ohoro GIN」

左から「ohoro GIN Limited Edition ラベンダー(オホロジン リミテッドエディション ラベンダー)」 700ml ¥5,500、「ohoro GIN Standard(オホロジン スタンダード)」700ml ¥4,950、「ohoro GIN Limited Edition ニホンハッカ(オホロジン リミテッドエディション ニホンハッカ)」 700ml ¥5,500 Hearst Owned

現在、ニセコ蒸溜所を代表する存在となっているのが「ohoro GIN」です。「ohoro」はアイヌ語で「続く」という意味。ニセコで生まれたジンが多くの方に親しまれ、未来永劫続くように、と願いが込められているそうです。

スタンダードタイプには、ジュニパーベリーをはじめとする13種類のボタニカルを使用。コリアンダーやカモミール、複数のルート系ボタニカルのほか、柚子、レモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツなどの柑橘類、さらにニセコ産のヤチヤナギやニホンハッカといった地域ならではの素材も取り入れています。

蒸留にはドイツ・アーノルドホルスタイン社製のハイブリッド型蒸留器を使用。ボタニカルをベーススピリッツに浸漬し、さらに蒸留の過程で柑橘類などの香りを重ねることで、クリアで軽やかな香味を引き出しています。

スタンダードのほか、ニホンハッカやラベンダーを用いた商品も限定で展開しています。ラベンダーにはニセコ町で栽培されたものも使うなど、ジンを通して土地の個性を感じられるよう意識しているそうです。

2024年には「World Gin Awards」のクラシックジン部門で「ohoro GIN standard」が世界最高賞を受賞。ウイスキーの完成を待つ時間のなかで生まれたジンが、ひと足先に「ニセコ蒸溜所」の名を世界へと広げる存在に。

木の発酵槽で育てる、複雑な香味

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ウイスキー造りは、大麦麦芽を粉砕するところから始まります。現在はスコットランド産の大麦麦芽を中心に使用し、主にピートを焚かないノンピートタイプを採用しています。時にはピートで燻した麦芽を使った原酒造りにも取り組んでいるそうです。

粉砕した麦芽に温かな仕込み水を加えて糖分を抽出し、麦汁を造った後、発酵へと進みます。ここで特徴的なのが、ステンレスではなく木製の発酵槽を使用していることです。木の表面に存在する目に見えない微生物と酵母が作用することで、ウイスキーにより複雑な香味をもたらすことを期待しているといいます。使用されているのはカナダ産の米松で、日本国内で味噌や醤油などの発酵槽を手がける職人によって製作されたものです。

西洋から伝わったウイスキー造りに、日本が長く培ってきた発酵文化の知見を重ねる。その工程にも、この蒸溜所ならではのものづくりへの姿勢が表れています。

「造れる」ではなく、10年待つという豊かな選択

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発酵を終えたもろみは、形状の異なる2基のポットスチルで2度蒸留され、原酒へと姿を変えていきます。その後に待っているのが、ウイスキー造りにおいて最も長い「熟成」という時間です。

ニセコ蒸溜所では、すでにジャパニーズウイスキーとして必要な熟成期間を満たしている原酒もあります。それでも、すぐには発売しません。目指しているのは、10年熟成。取材時点では2031年頃のファーストリリースを予定していますが、熟成の状態によっては、さらに時間をかける可能性もあるといいます。

発売時期を先に決めるのではなく、酒そのものの完成度を見極めながら待つ。効率やスピードとは対極にある10年という時間をあえて選ぶところに、八海醸造グループが培ってきたものづくりへの哲学が感じられます。

数種類の樽から探る、まだ見ぬ味わい

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原酒が眠る貯蔵庫には、空調設備や断熱材を設けていません。ニセコの自然な気温変化のなかで、ウイスキーはゆっくりと熟成を重ねています。使用している樽は、アメリカンオークやミズナラなどの新樽 、シェリー樽、ワイン樽など、多様な樽を使い分けています。

樽が変われば、原酒に加わる香りや味わいも変化します。さまざまな個性をもつ原酒を育てておくことで、将来ブレンドする際の可能性を広げているのです。ニセコ周辺に生育するミズナラを用いた樽も取り入れながら、この土地らしい表現を模索しているそうです。

興味深いのは、ウイスキーの名称さえ、まだ決まっていないということ。あらかじめ完成形を固定するのではなく、熟成の過程を見つめながら、その酒に最もふさわしい姿を探していく。「ニセコ蒸溜所」のウイスキーは、まさに現在進行形で育っているのです。

建築と工芸にも流れる、同じものづくりの思想

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ショップ&バー、製造エリア、そしてウイスキーの貯蔵庫から構成されている「ニセコ蒸溜所」の魅力は、酒造りだけにとどまりません。鹿島建設が手掛けた建築は、木をふんだんに使用しながら周囲の自然へ静かに溶け込むよう設計されています。

館内のバーカウンターや什器には北海道産の木材を取り入れ、大きなテーブルや椅子は旭川で製作。蒸溜所全体を通して、北海道の風土やものづくりとの繋がりが意識されています。

ショップに並ぶのも、酒だけではありません。世界各地からセレクトしたウイスキーや北海道の食品、日本酒のほか、新潟・燕三条を中心に、日本各地から選ばれた工芸品を紹介。包丁やチタン製のカップなど、日本の高い技術を感じさせる品々が揃います。

蒸溜所で、なぜ工芸品を紹介するのでしょうか。そこには、ウイスキーと工芸に共通する「時間が価値を育てる」という考え方があります。長い熟成を経ることで味わいを深めるウイスキーと、長く使い続けることで美しさや価値を増していく工芸品。世界中から人々が集まるニセコという場所だからこそ、日本が育んできた技術や美意識を伝える場にしたい。その視点から見ると、ニセコ蒸溜所は単なる酒の製造施設ではなく、日本のものづくりを発信する場所でもあることが分かります。

市場に出せる時期が来たから発売するのではなく、自分たちが納得できるところまで待つ。10年という時間そのものをものづくりの一部として捉える姿勢は、いまの時代だからこそ、より印象的に映ります。

2031年頃、ニセコの自然のなかで10年の時間を重ねた原酒が、どのような一本となって姿を現すのでしょうか。完成したウイスキーだけでなく、そこへ至るまでの時間と物語にも注目したい蒸溜所です。

【蒸溜所見学ツアー】
入場料/[4~11月]¥1,500、[12~3月]¥2,000(ともに税込)
※3歳以上は同料金
予約/ 公式サイトから要事前予約・要事前決済。原則として参加前日まで予約可能で、約1カ月先まで受け付け可能。1名から参加でき、1回最大8名まで。
※酒類の提供は20歳以上
※写真撮影は可能、動画撮影は不可
※英語での案内も可能(状況により対応できない場合も)

【ショップ&バー】
入場料/無料 ※予約不要
営業時間 10:00~17:00、12~3月は~18:00。
定休日 無休
※積雪や吹雪などにより、営業時間が変更する可能性あり

問い合わせ先
「ニセコ蒸溜所」
所在地/北海道虻田郡ニセコ町ニセコ 478-15
TEL/0136-55-7477
URL/niseko-distillery.com/ja

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